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ポリ袋で調理できる「パッククッキング」災害時に重宝するレシピ6選

ポリ袋で調理できる「パッククッキング」災害時に重宝するレシピ6選

家事のコツ

災害時、ライフラインが途絶えたときでも温かい食事を作れる「パッククッキング」。ポリ袋とコンロがあればできる調理法です。
この記事では、パッククッキングの基本の調理方法やレシピをご紹介します。

調理師・ライター。つくること・食べることが大好きで調理師免許を取得。医療福祉施設での勤務経験あり。おいしいご飯のレシピや暮らしの便利なもの、日ごろの衛生管理について、わかりやすい記事をお届けします。オムライスとモンブランが大好きです!

災害時に役立つ「パッククッキング」とは

「パッククッキング」とは、耐熱性の高いポリ袋に材料を入れ、袋ごと湯せんする調理法のことです。パッククッキングには以下のようなメリットがあります。

  • 洗い物が少なくなる
  • ひとつの鍋で複数の調理ができる
  • 湯せんしたお湯が汚れないので使いまわせる

上記のようにパッククッキングは水をあまり使うことがない(使いまわせる)」「ゴミが少なくてすむ」といったことから、ライフラインが途絶えた災害時に役立つ調理法としても注目されています。また普段から家に常備してある食材が使えるため、保存食を買いそろえておくよりも低コスト。その上、災害時でも普段から食べ慣れた食材を温かい状態で食べられるのもうれしい点です。

密閉状態の袋の中で調理するので栄養素が逃げない、袋を分けて調理すればアレルギー食に対応できるので、知っておけば災害時以外にも役立つ調理法です。

パッククッキングに必要な道具

まずパッククッキングに必要なものからご紹介します。

パッククッキングに必要な道具

パッククッキングをするのに必要なものは、以下の道具です。

  • カセットコンロ
  • お皿orフキンorザル
  • ポリ袋

電気が復旧した場合、鍋は電気ケトルでも代用可能です。ただし電気ケトルは沸騰状態を保てるものを使うようにします。お皿かザル、もしくはフキンは鍋底に敷くために必要です。またそれ以外にも、材料を切るキッチンばさみ、菜箸があると便利です。

用意する道具の中で重要なのがポリ袋。市販されているポリ袋がどれでもパッククッキングに使えるというワケではありません。くわしく説明します。

パッククッキングで使えるポリ袋とは

パッククッキング用のポリ袋は、以下の3つの条件に当てはまるものから選ぶ必要があります。

  • 高密度ポリエチレン製である
  • 食品用と記載がある
  • 湯せん可の記載がある

まず「高密度ポリエチレン」であることは必須の条件です。高密度ポリエチレンの特徴は、耐熱性や耐油性が高いこと。100度以上まで耐えられるので、パッククッキングに適しています。反対に「低密度ポリエチレン」は、耐熱性や耐油性が低いためパッククッキングには向いていません。

市販の商品には「素材:ポリエチレン」としか記載されていない場合が多くあるため、以下画像を参考に種類を見分けてください。

パッククッキングで使用できるポリ袋の見分け方

また、商品を選ぶ際は、高密度ポリエチレンの袋でも「食品用・湯せん可」と記載のあるものがおすすめ。特に「食品用」と記載がない商品は食品衛生法に適合していないので、衛生面を考えて使用は控えましょう。

おすすめはこちらのアイテムです。

<p>湯煎で調理する袋</p>

湯煎で調理する袋

アイテムを見る

しっかり口を閉じられるチャック付きの湯せん用ポリ袋で、中身が漏れ出す心配がありません。肉じゃがやしょうが焼きなど、料理研究家の服部幸應氏が監修したレシピブック付き。

今回紹介するレシピで使っているのは、岩谷マテリアルの「アイラップ」です。

パッククッキングに最適な「岩谷マテリアル アイラップ」

パッククッキングをする前にしっておきたい基本

パッククッキングは、業務用に開発された「真空低温調理」を家庭用にアレンジしたものです。フライパンや鍋で直に加熱しないため、温度管理をしっかりおこなわないと食中毒のリスクが高くなります。食事で命を危険にさらすことがないようしっかり基本をおさえて調理しましょう。理解しておきましょう。

ポリ袋の中をできるだけ真空状態にする

パッククッキングで一番重要なコツは、食材が入ったポリ袋の中をできるだけ真空状態にすることです。袋の中に空気がたくさん入っていると、お湯に入れたとき浮力で浮いてしまい、しっかりと加熱ができません。真空状態にすることで、ポリ袋が浮きにくくなり、かつ食材に熱が均一に伝わるようになります。

ポリ袋の中を真空に近づけるためには、水圧を利用して空気を抜くようします。

<真空状態の作り方>

  • 1.ボウルなどに水を張り、食材の入ったポリ袋をゆっくり沈める
  • 2.ポリ袋を軽く押さえ、空気を抜く
  • 3.空気が抜けたら食材に近い方からポリ袋をぐるぐるとねじり、上部で縛る

ポリ袋は、できるだけ上の方で結ぶ

パッククッキングで作るご飯のレシピ

食材を加熱すると中に含まれていた水分が水蒸気となり膨張し、ポリ袋全体が膨らみます。このとき袋を食材ギリギリの位置で縛ってしまうと、膨らむ力に耐えきれず破裂する危険が。また食材自体が膨らむものを調理する場合は、中身があふれることも。できるだけポリ袋の上のほうで結ぶようにしましょう。

ポリ袋に食材を入れすぎない

1つのポリ袋に入れる食材の量は、1~2人分を目安に、ポリ袋の半分以下になるようにしましょう。先ほども説明したように、加熱するとポリ袋が膨らむので、食材を入れすぎていると袋が破れる恐れがあります。

ポリ袋を二重にしない

調理中にポリ袋が破れないか心配心配だからといって、袋を二重にするのはNGです。重なった袋の間に空気の層ができ、熱が伝わりにくくなるためです。熱が伝わりにくくなると食材の中心まで十分に加熱できず、生煮えや細菌増殖の原因になります。調理の際は袋を1枚だけ使用し、できるだけ内部を真空状態にして熱が伝わりやすい状態を保ちましょう。

鍋の底にポリ袋が直接触れないように工夫する

パッククッキングをする前にしっておきたい基本

鍋の底に直接袋が触れないようにするのが、ポリ袋破れを防止する一番の方法です。方法は2つあります。

  • 鍋の底にふきんや皿を置き、袋が直接鍋に触れないようにする
  • 鍋のふちから袋がはみ出さないよう、中央にまとめてひもなどで縛るか沈めておく

お湯は沸騰した状態をキープする

パッククッキングをする前にしっておきたい基本

ガスを節約しようと、お湯が沸騰しない状態で調理しないようにしましょう。お湯が沸騰していない低温度で状態では、食材にしっかり熱がいきわたりません。また、細菌が増殖しやすい40〜50度を長く保ってしまうことになりかねず、食中毒発生のリスクも高くなってしまいます。パッククッキングをおこなう際はお湯が煮立った状態を保って、食材をしっかり加熱するようにしましょう。

【注意点5】油分やアルコール分の多い料理は避ける

パッククッキングでは、油分やアルコール分の多い料理は避けるようにしましょう。理由は、油分が多く含まれていると高温になり、ポリ袋の耐熱温度を超えて溶けてしまう可能性があるためです。またアルコール分が揮発(きはつ)して袋が膨張し、破裂する危険もあります。アルコール分である酒やみりんを使用する際は、少なめにするか煮切ってから使用してください。

パッククッキングで作る白ごはんの炊き方

まずは白ごはんのレシピをご紹介します。腹持ちがよくどんなおかずとも合う白ごはん。レトルトパックもありますが、パッククッキングなら温かい炊き立てのごはんが食べられます。

<1人分の材料>

  • 米……60g
  • 水……90cc(=90g)米の1.5倍の量

上記の分量で、約150gのご飯が炊き上がります。ご飯の量を増やしたい場合、「米の重量×1.5」で水加減してください。加熱ムラをなくすため、ポリ袋は1人分ずつ分けて調理するのがおすすめです。

<作り方>

パッククッキングで作るご飯の基本レシピ

1.米60gと水90ccをポリ袋に入れ、空気を抜きながらポリ袋の先端を結びます。

20〜30分間置いてお米を吸水させてください。吸水させずに調理することもできますが、加熱時間が長くなります。

2.鍋に湯を沸かし、鍋底にふきんか陶器の皿を敷きます。火加減は軽く煮立つくらいをキープしてください。(目安は弱火〜中弱火)

パッククッキングで作るご飯の基本レシピ

3.ポリ袋を鍋に入れ、加熱します。

ポリ袋を入れた後、再び軽く煮立ってきてから20分(米を吸水させていない場合は50分)ゆでてください。

ポリ袋が鍋肌に触れていると溶ける可能性があるので、菜箸などに巻きつけておくのもおすすめです。 

写真は後で紹介する味噌汁、煮物と同時に調理しています。

パッククッキングで作るご飯の基本レシピ

4.ポリ袋を取り出して10分蒸らします。その後、袋を開けて軽くほぐせば完成です。

包丁なし作れる、災害時に役立つパッククッキングのレシピ

ここからはパッククッキングのレシピをご紹介します。使う材料は「常温保存可・包丁不要」の食材に限定して紹介します。ポリ袋の中に食材を入れるだけでよいので、料理が苦手な方もぜひ一度挑戦してみてください。

パッククッキングで作る「お麩とワカメの味噌汁」

ごはんの相棒といえば味噌汁。先ほど紹介した白ごはんと、次に紹介する煮物と3品同時に調理すれば和風献立が完成します。1つの鍋で同時に調理すれば、ガスや時間を節約でき「おかずを用意する間にごはんが冷めてしまった」ということがありません。

<1人分の材料>

  • お麩……お好みの量(目安:3個)
  • 乾燥わかめ……お好みの量(目安:小さじ1/2)
  • 水……150〜200cc
  • みそ……大さじ1(18g)

上記の具以外にも、とろろ昆布やかつお節を入れると、出汁がわりになるのでおすすめです。また海苔、糸寒天、乾燥野菜なども、ボリュームがアップして食べ応えが増します。

<作り方>

パッククッキングで作るお麩とワカメの味噌汁のレシピ

1.材料をすべて袋に入れ、口を結びます。

3.材料を入れたポリ袋を鍋に入れ、加熱します。

3品同時に調理する場合、白ごはんのレシピと同じく、袋を入れた後、再び軽く煮立ってきてから20分ゆでてください。

パッククッキングで作るお麩とワカメの味噌汁のレシピ

4.中身がこぼれないよう、深さのある器の上で袋を開ければ完成です。

パッククッキングで作る「さばと切り干し大根の煮物」

和風献立のおかずとおすすめのレシピです。味が濃いめのさば缶を使うと、調味料を足さずにおいしく作れます。さば缶は醤油味、味噌味などお好みの味付けでOKです。作りやすさを重視して2人分の材料を記載しています。

<2人分の材料>

  • さば缶(味付)……1缶(総内容量 190g)
  • 切干大根……1袋(40〜50g)
  • 水……100cc

さ水煮缶(食塩入り)を使う場合は、しょうゆと砂糖を小さじ1ずつ追加して味を調整してください。水の量は、さば缶(190g)の半分くらいが目安です。

<作り方>

1.切干大根の汚れや乾物臭さが気になる場合は、ボウルにためた水でさっと洗います。スーパーで販売されている切干大根はほとんどきれいな状態なので、気にならならない人はこの手順を飛ばしてください。また長さが気になれば、キッチンばさみなどで食べやすくカットしましょう。

パッククッキングで作るさばと切干大根のレシピ

2.ポリ袋に切干大根を軽くほぐしながら入れ、さば缶の汁だけを注ぎます。

続いて、切干大根の全体に汁に浸るよう、水100ccを足します。

パッククッキングで作るさばと切干大根のレシピ

3.さばの身を一口大程度にほぐして、2の袋に入れます。ヒレなどの尖った部分がついていれば、袋が破れる可能性があるので取り除いてください。

切干大根とさばを軽くなじませたら、袋の口を結びます。

4.ポリ袋を鍋に入れ、加熱します。こちらも3品同時に調理する場合は、白米と同じ時間、加熱してください。

5.袋を開ければ出来上がり。1回の調理で、和風献立が完成しました。

パッククッキングで作る「ツナと塩昆布のパスタ」

昆布の塩加減でおいしく仕上がるパスタです。ツナ缶が水煮の場合はあっさり、油漬けの場合はコクのある仕上がりになります。次に紹介するスープと一緒に作って、2品同時に調理してしまいましょう。

<1人分の材料>

  • パスタ……80g
  • 水……160cc
  • ツナ缶……1缶(水煮、油漬けはお好みで)
  • 塩昆布……10g
  • オイル…少々(ツナ缶が水煮の場合)

パスタは標準的な太さである、1.4〜1.6mmのものがおすすめ。早ゆでタイプでもOKです。

<作り方>

パッククッキングで作るパスタのレシピ

1.パスタ80gを半分の長さに折って袋に入れます。

パッククッキングで作るパスタのレシピ

2.袋に水160ccを注ぎます。

3.鍋に湯を沸かし、鍋底にふきんか陶器の皿を敷きます。火加減は軽く煮立つくらいをキープしてください。(目安は中弱火)

パッククッキングで作るパスタのレシピ

4.袋を鍋に入れ、再び軽く煮立ってきたら、パスタのゆで時間の2倍加熱してください。

写真は後で紹介するスープと同時に調理しています。

5.パスタの茹で時間が経過したら、すぐにお湯から引き上げて袋の上から麺を軽くほぐします。

パッククッキングで作るパスタのレシピ

6.袋を開けたらツナ缶と塩昆布を入れ、箸などで和えてください。ゆで汁が多く残っている場合は、スプーンなどで少し減らしてから和えましょう。

パッククッキングで作る洋風献立のレシピ

7.塩加減を確認して、問題なければ完成です。

パッククッキングで作る「豆とコーンのスープ」

心が癒される温かいスープ。具材たっぷりにすれば、食事が喉を通りにくい時もしっかり栄養がとれます。先ほどの「パスタ」と同時に調理にすると効率的。材料は、作りやすい量の2人分で記載しています。

<2人分の材料>

  • 野菜ジュース……320g(160g×2缶)
  • ミックスビーンズ……50g(パウチや缶など)
  • スイートコーン……50g(パウチや缶など)
  • 魚肉ソーセージ……1/2本(40〜50g)
  • 塩……ひとつまみ
  • こしょう……少々

野菜ジュースは、にんじんやトマトがベースの濃厚なジュースを使用してください。魚肉ソーセージはベーコンやウインナーに変えてもおいしく作れます。

<作り方>

パッククッキングで作る豆とコーンのスープのレシピ

1.袋の中にミックスビーンズとコーン、魚肉ソーセージを入れます。

魚肉ソーセージは、キッチンばさみなどで食べやすい大きさにカットしましょう。十字に切れ目を入れて端からカットすると、豆やコーンとなじむ大きさになります。

パッククッキングで作る豆とコーンのスープのレシピ

2.袋の中に野菜ジュース320gと塩ひとつまみ、こしょう少々をいれ、袋の口を結びます。

3.鍋に湯を沸かし、鍋底にふきんか陶器の皿を敷きます。火加減は軽く煮立つくらいをキープしてください。(目安は中弱火)

4.材料入りの袋を鍋に入れます。再び軽く煮立ってきたらパスタと同じ時間加熱します。

パッククッキングで作る洋風献立のレシピ

5.塩加減を確認すれば完成。スープと合わせて洋食献立が出来上がりました。

パッククッキングは災害時の救世主

今回、それぞれのレシピを分けてご紹介しましたが、調理写真にもある通り、パッククッキングは同じ鍋で複数の料理を調理することが可能。主食とおかずを同時に作れるので

  • 「ごはん」「味噌汁」「さばと切り干し大根の煮物」で一汁一菜の和食献立
  • 「ツナと塩昆布のパスタ」「豆とコーンのスープ」でボリュームたっぷりの洋食献立

というように、1食分の献立が簡単に完成します。

災害時にも普段と同じような料理を作って食べられるパッククッキングは、もしもの時の救世主。今回ご紹介したポリ袋選びのポイントやパッククッキングの注意点を押さえれば、失敗する心配はありません。忙しい日のご飯作りにもぴったりなので、「いざという時」の予行練習のような気持ちで、ぜひパッククッキングに挑戦してみてくださいね。

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