キッチン道具の担当者。元司書であることから、モノを買うときは納得するまで調べ尽くす性分。ハウジーではクラスコと一緒に100を超えるキッチン道具の比較や検証を実施。本当に気に入ったキッチン道具の紹介や「困った!」を解決する記事をお届けしていきます。
調理に欠かせない道具のひとつ、フライパン。ふと裏側を見たときに真っ黒な焦げつきや頑固な汚れがあって「いつのまに!?」と驚いた経験はありませんか?
今回は、重曹やスチールたわし、話題の洗剤を実際に使って、その効果を検証します。汚れの落とし方やフライパンが焦げつかない使い方を知って長くキレイに使いましょう。
意外と知らない、フライパン裏(外側)が汚れる4つの原因
そこまでひどく焦げつかせた覚えもないし、毎日キレイに洗っているのにのに、知らない間に汚れてしまうフライパン裏。気づいたときには、普通の食器用洗剤とスポンジでは落とせなくなってしまうことも……。その主な原因は4つあります。
【原因1】調理中に飛んだ調味料やたれた料理の汁など
↑の写真のフライパンでは、緑色の側面に汚れが見えます。
これは調理中にはねた料理の汁気や、調理後にお皿へ料理を移すときにたれてしまった汁気が、コンロの火や余熱によって焦げついてしまったもの。
調理中に飛んだ汚れが側面についたり、たれたりした汁気はしっかりと拭き取るようにしましょう。
<フライパンを洗うときは裏側も忘れないようにする>
フライパンの外面に汚れがついたまま加熱してしまうと、料理の汁気の水分が蒸発し、残った成分が焦げついて炭化してしまいます。
炭化して頑固にこびりついた汚れを落とすのは非常に難しいため、調理後は汚れが残らないように内側だけでなく裏面や外側もしっかりと洗ってください。
<きっちりと収納場所にしまうようにする>
また、洗った後のフライパンをコンロ横に放置してしまうのも、新たな汚れがついてしまう原因に。
洗ったフライパンは水気を拭き取り、すぐにコンロ下などにしまいましょうね。
【原因2】油(油ハネによるもの)
炒め物や揚げ物をするときに、油がはねてしまうことがあります。
周りに多少飛び散るくらいならまだいいのですが、すぐ横に別の鍋が置いてあったりすると、フライパンから飛んだ油が跳ね返ってきて外側についてしまうことも……。
油を使っている場合は基本的に高温で調理していることが多いと思うので、なかなかすぐに拭き取るのが難しいです。
せめて調理後にはしっかりと油汚れを落とすように気をつけたいですね。
【原因3】コンロの汚れ
汚れたコンロで調理をすると、熱によってフライパン裏に汚れが焼きついてしまいます。
ガスコンロの五徳や、IHが汚れていないかチェックしてみましょう。
調理後にコンロの汚れを軽く拭き取るだけでも、かなり焦げつきの防止になります。
【原因4】調理をするときの温度が高すぎる
調理開始時などフライパンを予熱する場合は、「中火」で加熱をする必要があります。
特にIHコンロの場合、強火だとガスコンロの強火よりも温度が高くなります。
調理内容に応じてある程度の加減は必要ですが、なるべく中火~弱火の間で火力を調節するようにしましょう。
特に、熱伝導のよいフライパンほど、すぐに温度が高くなりすぎるので、注意が必要です。
【徹底検証】フライパン裏のコゲ落とし比較
今回、編集部スタッフの家にも色々と残念なフライパンがあったので、この機会にコゲ落としの実験をしてみたいと思います。
実験で使用するフライパンについて
以前のステンレス鍋のお手入れの実験では、重曹ペーストやクリームクレンザー、鍋磨き用のクッション研磨剤を使ってコゲを落としました。
今回のフッ素樹脂加工のフライパンの場合、裏面の「はり底」の素材によって、使用できるアイテムが変わります。
フライパンのはり底の素材には大概ステンレスかアルミニウムが使われており、特にIH対応のフッ素樹脂加工のフライパンの場合は、有磁性(磁石がひっつく性質)のステンレスが使われていることが多いです。
下記の実験では、「はり底」がステンレス素材のフライパンを使用していますので、予めご了承ください。
【コゲ落とし比較1】重曹
パッケージにも「コゲ落としに」などの用途が書かれていることも多い、重曹。
重曹には研磨性があり、そのまま粉の状態で使ってしまうとフライパンの表面を傷つけてしまうためペースト状にして使うことが多いです。
また、重曹を水に溶かして加熱すると、より強いアルカリ性を持った「炭酸ソーダ(炭酸塩)」に変化するため、重曹水で煮るという方法も一般的によく紹介されている使い方です。
が、実は使い方によっては逆にフライパンの寿命を縮めてしまうことになるので、十分に気をつけてください。
<重曹水で煮る方法はフッ素樹脂加工のフライパンにはNG>
フライパン裏や外側のコゲを取るために、沸騰した重曹水に浸そうと思うと、かなり大きめの鍋が必要になります。
シンクでつけ置きする方法もありますが、人造大理石のシンクなどの場合は強いアルカリ性の洗剤を使うと、シンクの汚れ防止のコーティング剤がはがれてしまう可能性があるので、おすすめ出来ません。
強アルカリの洗剤がNGなのは、フッ素樹脂でコーティングされているフライパンの内側も同じ。
コーティングがはがれるのを防ぐため、重曹水がフライパンの内側にかからないように十分に気をつける必要があります。
というわけで、ここではリスクの高い重曹水ではなく、重曹ペーストを使用したコゲ落としの方法でやってみました(ただし、重曹水に比べてコゲ落としの効果は弱めです)。
<重曹ぺーストでコゲ落としをする手順>
ペーストの材料は、以前のステンレス鍋のお手入れ記事で解説したものと同じです。
ただし、前回より重度の焦げつきに対応するため、放置時間や手順などは少し異なります。
- 水(大さじ1)
- 重曹(大さじ3)
※上記はあくまで目安です。コゲの範囲にあわせて量を調整してください(比率は1:3)。
1.材料を混ぜ合わせてペースト状にする
2.フライパンの裏側に直接塗り、ラップで覆う
3.約3時間置いておく(落ちない場合は時間を調整してください)
4.キッチン用のスクレイパーやクッション研磨剤でこすり落とす
<重曹ぺーストでコゲ落としをした結果は…>
ステンレス鍋の時は30分としましたが、真っ黒に炭化したフライパン裏をきれいにしようと思うと、全く歯が立ちませんでした。
ふやけているかも微妙な状態で、正直重曹によってはがれたというよりは、スクレイパー(傷がつきにくいシリコン製のキッチンスクレーパーやシリコンヘラがおすすめ)やクッション研磨剤によって物理的に削ったという感覚に近かったです。
ただし、クッション研磨剤を単体で使っただけでははがれなかったので、重曹によって多少落としやすくなったとは言えると思います。
また大きめのフライパンだと範囲が広く、かなりの量の重曹が必要になります。100均などの少量しか入っていないものだと、あっという間に使い切りそうです。他の道具も必要となるとコスパ的にはあまり良くないかもしれないですね。
【コゲ落とし比較1】スチールたわし「ボンスター」
「コゲ落としと言えば昔からこれ!」と実家の母も豪語していた、100均などでも見かけるスチールたわしの一種「ボンスター」。
いくつかシリーズがあったのですが、今回使ったのはソープ入りのタイプです。
<ボンスターでコゲ落としをした結果は…>
少し水を含ませてこすると、ピンクっぽい泡が立つとともに、みるみるコゲが落ちていきます。
気になったのは、こすった箇所がやや黒っぽくなったという点。
また、完全に裏側全面のコゲを落とそうと思うと、まあまあ力と時間を使います。
その2つの点に目をつぶれば、かなり優秀なアイテムと言っていいかもしれません。
【コゲ落とし比較3】コゲ落とし洗剤
こちらは、メディアなどでも取り上げられていた「こげとりぱっとビカ」というコゲ落としの洗剤です。
以前の実験などでもさんざん鍋のコゲを落とす作業で腕を酷使していたので、「塗っておくだけで簡単に焦げつきを落とすことができる」といううたい文句に惹かれて使ってみることにしました。
<コゲ落とし洗剤でコゲ落としをした結果は…>
ちなみに、劇薬ではないのですが強アルカリ性の洗剤なので、うっかり指などにつくと手のタンパク質が分解されるせいか、指先がぬるぬるします。
注意事項にもきちんと記載されていますが、間違っても素手では扱わないようにしましょう。
ゆるいジェル状で流れ落ちないように少しずつ塗り広げ、乾燥しないようにラップで覆います。
わずか5分後くらいにはコゲの一部がはがれたり、液状になっていたのが驚きでした。
写真で比較!一番効果のあったコゲ落としの方法は?
裏側が全面的に黒く焦げていたフライパンを使って、それぞれのコゲ落としグッズの効果を比較してみました。
3つそれぞれのエリアを見てみると、一応どれもコゲが取れているのが分かります。
重曹+クッション研磨剤と、ボンスターはそれぞれ30回ずつこすった後の状態です。
もっと時間をかけて丁寧にこすると、細かい部分もキレイには出来ます。
コゲ落としの洗剤をかけた部分については、こすらずにキッチンペーパーでジェルを軽く拭き取っただけの状態です。
こちらも、もう少し丁寧にこするか時間をおけば、更に効果が見込めると思います。
コゲ落とし比較をしてわかったこと
実際やってみて気になったことやわかったことをまとめます。
フライパン裏が変色?効果の強いものほどリスクも大きい
少しだけ気になったのが、とてもきれいに見える「こげとりぱっとビカ」を使用した部分。
美しい光沢を取り戻してはいますが、よく見ると白っぽく変色している箇所があるのがわかります。
丸い凸凹の部分と、はり底の周囲の部分が主に白っぽくなっています。
どうやらコゲが落ちた部分がステンレス素材なのに対し、この白っぽくなった部分はアルミ素材で出来ている部分だったのが原因のようです。
はり底が「ステンレス鋼」でも構造によっては要注意
はり底がステンレス鋼と書かれているフライパンでも、アルミ部分が露出している構造だとこういうことになるので、薬剤を使用する場合にはアルミ部分にはかからないように気をつけるか、変色するのを覚悟して使うことになりそうですね。
ちなみに、以前の記事で全面ステンレス素材の卵焼き器のコゲ落としを行いましたが、この薬剤を使用すると細かい部分まできれいになりました。
なので、ステンレス鍋など変色のおそれがない調理器具には、とてもおすすめできる洗剤と言えます。
コゲ落とし洗剤やアイテムには、それぞれ一長一短がある
自信をもってこれ!というイチ押しではなくて申し訳ないですが。
- 手にもフライパンにも比較的優しく、ゆっくり丁寧に時間をかけてきれいにするなら重曹(+クッション研磨剤)。
- 多少黒ずんだり傷がいく(ちょっとはみ出すと塗装面が削れることがあるので、こちらも丁寧に)かもしれませんが、根気よく磨けば一番安価でキレイになる、ボンスター。
- 多少リスクはあるものの、力いっぱいこすらず楽にコゲを落としたい場合は、コゲ落とし洗剤。
という感じで、お使いのフライパンの種類や手間をかけるかお金をかけるかなど、個人的に重視したい点によっても、おすすめは変わるという結果となりました。
上手なお手入れで長持ちさせよう
頑固なコゲを落とすのはとても根気のいる作業です。私自身も、今回の実験の翌日はひどい筋肉痛になりました。
そんな思いをなるべくしなくて済むように、今後はなるべく正しい使い方やお手入れをしておきたいと思いました。
やむを得ず頑固な汚れやコゲつきで残念な見た目になってしまった場合は、100均などで買えるお手軽なコゲ落としのグッズでもきれいにすることができます。
ただし、フライパン裏の素材(はり底部分の素材)によっては、使えないものよりフライパンの寿命を縮めてしまうものもあるのでご注意くださいね。