「おいしいに国境なし!」──を合言葉に、料理の「?」や「!」を探しながらご家庭で役立つ知恵やアイデアを探求中! 料理のイロハを先生に師事して学びながら、ワンランク上のこだわり料理にもアクセル全開で挑戦します! たまには先生が記事に登場することも?
油揚げに酢飯を詰めて作る「いなり寿司」。
お祝いの日など特別な日に食卓に上がると、ついテンションがあがってしまいますよね。
大人から子どもまで、老若男女に愛されるいなり寿司には、実は「関東型」と「関西型」があります。
また、いなり寿司の作り方にはほとんど無限と言ってもいい程バリエーションがあり、さまざまなレシピがあります。柔軟にアレンジしやすい料理ですから、自分や家族の好みの具材を加えて、オリジナルのいなり寿司を作ってみるのもいいかもしれませんね。
今回は、関東型と関西型のいなり寿司の違いと、基本的ないなり寿司の作り方についてご紹介します!
油揚げやいなり寿司の起源は?
いなり寿司の歴史は古く、もっとも古いものでは1800年代の古書(江戸時代後期の百科事典「守貞謾稿」(喜多川守貞著))にその存在が確認されています。天保(1830年~1843年)以前からあったともされてますが、正確な起源については明らかになっていません。
室町時代(1336~1573年)に油揚げが誕生し、江戸時代(1603~1868年)頃に広く広まったとされています。
「初午※に いなり寿司を食べる」という慣習(※2月になって最初の午(うま)の日のこと。または、その日に行われる稲荷(いなり)神社の祭り)も江戸時代には広まっていたという説がありますが、いなり寿司が誕生して間もないころは、中に酢飯を詰めるのではなく、炊いたご飯やおからなどを具材と一緒に詰めていたそうです。古書に記されるはるか以前に、油揚げの起源があるかもしれませんね。
関東型のいなり寿司、関西型のいなり寿司
関西と関東のいなりずしで、まず気になるのは形の違い。
でも実は、他にも色々な違いや特徴があります。
関西型のいなり寿司
関西型のいなり寿司は三角形の形をしています。稲荷神社の使いである「狐」の耳に見立てられることが多く(全国の稲荷神社で、狐が祀られているいるのを見ますよね。油揚げはきつねの好物とされています)、濃い目の味付けで炊いたしいたけやにんじん、ゴマなどを混ぜた五目いなりであることが多いのが特徴です。
中に詰める飯と具材にしっかりとした味つけをするため、油揚げの味つけは薄味でさっぱりしています。
また、京都では、舞子さんの化粧崩れに配慮し、食べやすいサイズに整えた手毬寿司の歴史があります。もしかすると三角形の食べやすいいなり寿司も、関西ならではの慣習や風俗に由来しているのかもしれませんね。
関東型のいなり寿司
関東型のいなり寿司はご覧の通り、俵型をしています。関西型が狐の耳を模しているのに対し、関東型は米俵を模したものといわれています。
いかにも寿司を流行らせた江戸前らしい発想ですが、真意のほどはいかに。
一説では、稲荷神が穀物(農業)の神様であることから、豊作を祈って米俵⇒俵型になったとも言われています。
関東では中に詰めるのは白い酢飯だけで、基本的に具材などを加えません。その分、油揚げに甘辛の濃い目な味つけを施します。
ちなみに、それぞれの地域でのおにぎりの形は逆で、関西のおにぎりは俵型、関東のおにぎりは三角形なんですよ。
いなり寿司の作り方
いなり寿司は、シンプルに表現すると「油揚げに酢飯を詰め込んだだけのもの」です。
でも、実は実際に作るとなると、意外と作業工程が多いんですよね。ほんの少し手間のかかる料理ですが、お祝い事など特別な日は、手作りのいなり寿司でお祝いしたいですね。
「寿司酢」について
寿司酢は、米1合につき、酢20cc、砂糖5g、塩5gを混ぜて作ります。
砂糖や塩を酢に十分溶かすため、できれば前日などに用意したいですね。塩や砂糖の結晶が残っていると、ジャリジャリして口当たりが悪くなります。
炊飯にどうしても間に合わない場合は、これらを混ぜたものを弱火にかけて溶かします。できるだけ熱を加えないよう、塩と砂糖が溶けるギリギリの温度を狙ってくださいね(加熱し過ぎると、酢の酸味や風味が飛んでしまいます)。
< 作り方 >
1.酢飯を作る
酢飯は、炊いたご飯にあらかじめ用意しておいた寿司酢を混ぜて作ります。
炊飯時にはお酒を少々と昆布1片を入れてご飯を炊くといいですよ。
炊いたご飯を寿司桶などにあけて、酢飯を少しずつムラなく全体にかけます(しゃもじ等ですし酢を切るようにして全体に振りかけるとやりやすいです)。
ご飯をつぶさないよう、しゃもじで切るようにして全体を手早く混ぜたら完成です。
これは酢飯の基本的な作り方。関西風の五目いなり用に濃い目の味付けで煮た野菜やゴマなどを混ぜる場合は、この段階で具材をご飯に混ぜてくださいね。
2.油揚げをほぐす
めん棒や菜箸を使って、油揚げを延ばします。やらなければやらなくてもいい工程ですが、こうしておくことで油揚げをきれいに開きやすくなります。
3.油揚げをカットする
油揚げを半分にカットします。関東型はこれでOK。
関西型にするなら、側面に切れ込みを入れておいて三角形に折りたためるようにしておきます。
4.油抜きをする
大きめの鍋に水をたっぷりと張り、油揚げを茹でて油抜きをします。こうすることで適度に油が抜けてクドくなくなりますし、味がしみ込みやすくなります。ただし、あまり油を抜きすぎると味が入り過ぎてしまったり破けやすくなったりするので、1~2分程度に留めてください。
5.味つけをする
油抜きをして絞った油揚げを、出汁を張った鍋に入れて砂糖と一緒に煮ます。砂糖は、三温糖を使うとコクが出ていいですよ。5分ほど煮たら、みりんと醤油を加えて味を整えます。そのまま煮込んで、煮汁が1/3程度になったら火を止め、自然に冷まします。
6.酢飯を詰める
味がしみ込んだ油揚げを軽く絞り、中に酢飯を詰め込みます。角までしっかりと開いてからご飯を入れることで、見た目がきれいになりますよ。酢飯を詰めたら、油揚げの口部分をたたみます。
さいごに
いなり寿司には関東型と関西型がありますが、何もこの通りに作らなければならないわけではありません。油揚げを関東風の味付けで煮て、中身を関西風の五目にすると、味が濃すぎてしつこい風味のいなり寿司になり、油揚げを関西風、中身を関東風にすると味気なくなってしまう可能性がありますが、そこを気をつければ基本は自由です。
お好みで具材を変えてもいいですし、油揚げの味つけを変えてもOK。
甘いのが苦手な方は煮汁や酢飯の砂糖を減らしたり、具材には思い切って西洋野菜を使ってみたり洋風に味つけした具材を使ってみたりしてもおもしろいかもしれませんね。
特別な日には、ぜひお手製のいなり寿司で食卓を盛り上げてください!