北海道の庭で、野菜と共にハーブ・野草・山菜を育てる菜園家。また、それらの食材の楽しみ方・調理方法をプロとして、Yahoo!などの様々なメディアで発信している。Instagram・ブログ『料理+菜園づくり 食育インストラクターracssの日々の暮らし』で、その様子を公開中。
揚げ物の油を切るための道具「揚げ物バット」。揚げ物のサクッとしたおいしい食感をキープできる油の切り方について、揚げ物バットを使う場合と使わない場合を比較してみました。
揚げ物バットを使うときも使わないときもある、調理師racssが解説します。
【油切り比較】揚げ物バットを使う?使わない? サクッと食感が保たれるのは
お家で揚げ物をするとき、揚げ物バットを使う派?それとも使わない派? 揚げ物バットを使うことで、どれくらい揚げ物のサクッとしたおいしい食感をキープできるのでしょうか。
実際にかき揚げを作って、食べ比べしてみました。
油の切れ具合を4通りで比較
- 【1】揚げ物バットで立てておく
- 【2】揚げ物バットで寝かせておく
- 【3】フライパンなど縁のあるものにペーパーを敷いて立て掛けておく
- 【4】お皿にペーパーを敷いて寝かせておく
ペーパーはパルプ100%のキッチンペーパーを2枚重ねで使用しています。
油から上げてすぐそれぞれの方法で置き、約10分後に皿に盛り付けて食べ比べました。
「見た目や食感がサクッとしているか(蒸気がうまく逃げているか)」
「余分な油が残っていないか(しっかり油が切れているか)」
の2点についてチェックしてみます。
「見た目や食感がサクッとしているか」について比較した結果
見た目の違いや、箸で持ったときの違いはほとんどありません。
食べてみると、【1】【2】【3】には、そこまで大きな差は感じられませんでした。
明らかに違いを感じたのは【4】の「お皿にペーパーを敷いて寝かせておいた場合」。上側はサクッとしていますが、お皿についていた面(下側)の衣がしっとりしてきていました。
また、一緒に食べ比べに参加してくれた人からは、「下側になっていた部分の玉ねぎがベチャッとしていた」という感想がありました。
「余分な油が残っていないか」について比較した結果
次に、お皿に敷いた紙に吸収された油の量を見てみました。
最も少なく見えるのは【1】、比較的多かったのは【4】でした。
今回は、「サクッとした食感のキープ」「余分な油の残量」について比較してみた結果、【1】の「揚げ物バットで立てておく」方法が最もよいという結果になりました。
揚げ物がサクッとする「油切り」のポイントとNG
揚げ物がべちゃっとならずに済む方法について、くわしくみていきましょう。
【油切りポイント1】蒸気をコントロールする
「揚げ物バットを使う方法」「ペーパーを使う方法」のどちらでも、揚げてすぐ食べる場合はほとんど差が感じられません。
特に、かき揚げや天ぷらのように1つずつ油から上げていくものは、鍋から出すときにかなり油切りができています。そのため、その後の置き方で油切れが悪くなるということはさほどないように思います。
それよりも、揚げ物の食感をキープするためには「蒸気」をコントロールすることのほうが重要です。
揚げてから時間が経つほど、蒸気による「しっとり感」が出てきてしまいます。そのため、効率よく蒸気を逃がせる揚げ物バットを使用するほうが、サクッとした食感を保ちやすいでしょう。
その点では、揚げ物を立て掛けておける仕切り網がついた揚げ物バットはとても便利です。
ただし、通気性が良いほど冷めるのも早くなってしまいます。そのためもし熱々を食べたいときには、急ぐ必要があります。
揚げ物バットに立てておく方法は、お弁当用や作り置き用にたくさん揚げ物をする際には最適といえます。
【油切りポイント2】揚げ物の盛り付けに「敷き紙」を使う
揚げ物の下に敷く「敷き紙」。「敷き紙」をひくと、お料理の見栄えをよくするだけでなく、揚げ物が直接接触している面から余分な油と蒸気を吸収できるという実用性も兼ね備えています。
網を使うか使わないかに関わりなく、揚げ物をお皿に盛り付る際にはぜひ敷き紙を使いましょう。
敷き紙にはパルプ製、和紙製などがありますが、なければ白いキッチンペーパーを代用してもよいでしょう。
逆にベチャッとしてしまう「油切り」のNG
「揚げ物バットがなくてもキッチンペーパがあれば十分」と考える方も多いのではないでしょうか。
ただし、揚げ物バットの網の上にペーパーを敷くのはおすすめしません。効果的に蒸気を逃がすことができなくなってしまい、逆に揚げ物がベチャッとしてしまうことにも。ただ、網の下側にペーパーを敷いて油を吸い取らせるのなら、後片付けが楽でいいかもしれないですね。
ちなみにキッチンペーパーだけで代用するという方法はどうでしょうか?
実は大きめの揚げ物バットを使ったほうが、とても効率がよくなる調理があります。
例えば、野菜の油通しをする際や、フライドポテト、唐揚げなど、揚げ網で一気にすくい上げるような揚げ方をする料理の場合です。ガバッと一度に網の上に出して、油切りができるとスピードアップしますね。
また、食材といっしょに揚げ物バットに入ってしまった油は、汚れていない場合には揚げ網で軽くこしてから鍋に戻す、ということができます。キッチンペーパーだとすぐに油を吸ってしまうので、このようなことはできません。
しかし、細かな食材を受けるのにはペーパーが必要な場合がありますし、ペーパーに余分な油をしっかり吸わせたい場合もあるでしょう。揚げ物にキッチンぺーパーを使うかどうかは、用途に合わせて考える方がよさそうです。
揚げ物バットがないときに、代用するアイデア
最後に、揚げ物バットがない場合に、揚げ物バットの代用ができるアイテムも紹介しますね。
フライパンとキッチンペーパーで代用する方法
揚げ物が少量の場合に、私がよく行うのが「鉄製フライパン」を使うという方法。
鉄製フライパンにキッチンペーパーを敷いて、フライパンの縁に揚げ物を立て掛けていきます。
後片付けの際には、残った揚げかすをペーパーごと捨て、フライパンに付いた油はそのまま拭きのばします。
フライパンのメンテナンスにもなり、一石二鳥なんですよ。鉄のフライパンやスキレットを持っている方にはおすすめの方法です。
魚焼きグリルの網で代用する方法
グリル部分を引き出し、網の上に置いていくのもおすすめ。グリル部分をサブテーブルのように使えるので、狭いキッチンで便利なアイデアです。
ただし、わが家ではコンロトップとグリルとの高低差が大きいため、うまく活用できませんでした。この使い方はコンロの形状にもよりますね。
魚焼きグリルのトレイが外せる場合は網とトレイ、または網だけを取り外して、調理台の上に置いて活用してもいいでしょう。
網やざるを使う場合のコツ
耐熱性があるなら、手持ちの網やザルとお皿やボウルなどを組み合わせて揚げ物バットとしての代用ができます。揚げ物網として販売されているものを使うのも手です。
油を切るだけではなく、蒸気を逃がすことがポイントなので、できるだけ脚の高いものを使いましょう。下に敷くキッチンペーパーなどと、できるだけ密着しないようにするのがコツです。
揚げ物をサクッと仕上げるために
揚げ物をおいしく仕上げる「油切り」のポイントについて、実験で比較したり実際にいくつかの方法を試してみました。
家庭での揚げ物をおいしく仕上げるポイントは
- 余分な油を切ること
- 蒸気をうまく逃がすこと
が大事です。そのためには揚げ物バットの活用がベストです。揚げ物率が高いご家庭なら、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか?
使いやすい揚げ物バットを選ぶ際は、こちらの記事「使いやすい「揚げ物バット」はどれ? ステンレス製・ホーロー製・アルミ製を比較」揚げ物を参考にしてください。