キッチン道具の担当者。元司書であることから、モノを買うときは納得するまで調べ尽くす性分。ハウジーではクラスコと一緒に100を超えるキッチン道具の比較や検証を実施。本当に気に入ったキッチン道具の紹介や「困った!」を解決する記事をお届けしていきます。
放っておくと、いつの間にかカチカチに固まったり、容器の中で大きな塊かたまりになっている「塩」。
頑張ればスプーンなどで崩せることがほとんどですが、酷いときには、スプーンが曲がりそうな硬さのときも。
一つまみだけすぐ使いたい時や均一に振りかけたいときに、固まった塩と格闘しないといけないのは困りものですよね。
今回は、そんな「固まった塩」にも効果があると言われている珪藻土グッズについて、気になる安全性や実際の効果などを詳しく解説していきます。
塩が固まる原因や珪藻土グッズ以外の解消法なども併せてご紹介するので、固まった塩にお悩みの方はぜひチェックしてみてくださいね。
塩が固まる主な原因は「湿気」
いきなり結論から言ってしまいますが、塩が固まる原因は「湿気」です。
さらに厳密に言うと、湿度の変化によって塩は固まります。
周りの湿度が高くなると、塩の表面には目に見えないほどの小さい水分が付着します。そのわずかな水分によって、塩の表面が溶け出します。
そして、湿度が低くなってきたときに、今度は表面の水分が乾きます。その結果、塩の表面にはわずかな結晶が現れます。
見えないくらいの結晶がくっつきあって大きな塊に
最初はごく小さな結晶ですが、同じように湿度が高くなったり低くなったりという変化を繰り返すうちに、結晶同士がくっつきあってどんどん大きな結晶になっていきます。
そんなふうにして、最終的に目に見える形で大きな塊となったのが「カチカチに固まった塩」です。
湿気の変化から塩を守るための保存方法とは?
塩を固まらせないためには、湿気の変化から守る必要があります。
とは言っても、湿度の高い日本では置き場所を変えるくらいでは簡単には解決しません。
それに、いくら置き場所として向いていないと言われても、調理の時にサッと手に取れるようコンロ周りに塩を置いておきたいという方も多いはず!
湿気の変化による影響を最小限に抑えるためには、「密閉容器に入れる」という方法が一番。
これは単純なようで、実はとても大事なポイントです。
固まる原因は正反対でも、砂糖と塩の保存方法はほぼ同じ
固まる原因が「乾燥」である砂糖とは全く正反対の塩ですが、正しい保存方法はほとんど同じです。
塩を入れる容器はしっかりと密閉が出来る物=フタがきっちり閉まるものを選びましょう。
使い終わったら、毎回きちんとフタを閉め、湿度を一定に保つようにすることも大切ですよ。
調理に使う砂糖や塩の保存容器は、セットで扱われていることがよくあるので、せっかくなら同じデザインで使い勝手の良いものを見つけられるといいですね。
塩の固まり防止に効果あり?珪藻土の特徴と気になる安全性
ところで、100均などでも見かける珪藻土グッズには、塩の固まり防止に効果があると書いてあるものがあります。
周りでも珪藻土グッズは使っている方が意外と多く、塩に関しても「固まったことないから効果あると思う」という声も聞きました。
一方で、どういう材質の物なのか気になるという声や、安全性への不安、実際に効果があるのか気になるという方もいらっしゃいます。
ここでは、珪藻土グッズの気になる点について、一つずつ見ていきたいと思います。
そもそも珪藻土とは?
バスマットやコースターなどの素材としても人気の「珪藻土」。
珪藻土とは、消息した植物性プランクトン(藻類)が海底や湖底に積み重なり、長い年月をかけて化石化してできた粘土のような泥土の素材です。
1ミクロンにも満たない細かい穴が無数に空いているため、調湿性能や吸水性、断熱性能などに優れているという特徴があります。
意外なところでも使われている珪藻土
珪藻土には、不純物を効率的にろ過できるという特徴もあり「ろ過助剤」として使われています。
それまで難しかった不純物の無い透明な糖蜜(砂糖の原液)の製造に成功し、今のような真っ白な砂糖が作れるようになったのも、実は背景に珪藻土の活躍があったからなんですよ。
珪藻土が塩の固まり防止グッズ素材に使われる理由って?
珪藻土の持つ特徴のうち、「調湿性」は湿度が高いときには湿気を取り込み、逆に湿度が下がると湿気を吐き出すという働きをします。
つまり、湿度をある程度一定に保つことができるため、塩が苦手としている「湿度の変化」が起こりにくいのです。
しかも吸水性があるので、塩の表面に微量の水分が付くことも防いでくれます。
「フタつきの密閉容器に入れていても固まってしまう」という方や「手持ちの容器で何とかしたい」という方にも頼りになるグッズですよね。
アスベストの混入の心配はないの?
2020年末、一部の珪藻土バスマットなどにアスベスト(石綿)が含まれていたことで回収騒ぎになったことがありました。
そのため、珪藻土グッズというと未だにアスベストの心配をされるということも……。
●アスベストと珪藻土は全く無関係の素材
まるで珪藻土=アスベストのような誤解をされていることもありますが、本来は全く無関係のものです。
では、バスマットなどに含まれていたのはなぜでしょうか?
実は、安価な海外製の珪藻土バスマットの中には、建材の石膏ボードやケイカル板を切り出して製品にしたものが存在します。
過去に問題となったのは、ケイカル板(珪酸カルシウム板)と呼ばれる消石灰、珪藻土、石綿に水を混ぜて練り合わせてボード状にした建材を切削し、「珪藻土バスマット」として売られていた製品です。
●珪藻土グッズを扱う大手メーカーや販売店などの反応について
問題が発覚した際、厚生労働省からは関係業界に一斉点検を求められ、検査の結果、石綿(アスベスト)含有製品と判明したものについては、製造者や販売者による製品回収が行われました。
その後も、珪藻土グッズに関して不安を持つ声はかなり多かったように思います。
ダイソーやセリア、soilやkarariシリーズなどのキッチン系の珪藻土グッズを扱う100均の公式サイトやメーカーサイトでは、アスベストが含まれていない製品を扱っているという声明や外部機関による検査証明書などをきちんと公開されています。
どうしてもご心配な方は、買われる前にご確認くださいね。
100均の珪藻土グッズの表面にみられる白い粉の正体は?
珪藻土についての安全性が確認できたところで、もう一つ気になる点があります。
それは、100均で購入した珪藻土グッズに触れた際などに、たまに手につくことのある「白い粉」。
気になって材質を確認してみると、珪藻土のほかに石膏が素材として使われていることがわかりました。
石膏というと……あの美術の彫刻に使われたり、骨折などの怪我をした時に使われるギブスの素材ですよね。
「なぜ、そんなものが材料に?」
「塩など調味料の中に入れても大丈夫?」
……と色々気になったので、珪藻土グッズに石膏が使われている理由や安全性についても少し調査してみました。
●珪藻土は単体では固まらない
どうして珪藻土100%ではないのかというと、実は珪藻土は単体では固まりにくい性質のため、接着剤のような働きをする他の物質を混ぜ合わせることで、固まらせて加工する必要があるからです。
このとき用いる他の素材やその割合は物によって異なりますが、ダイソーやセリアなど100均などで見かけるアイテムに使われている物の多くはほとんどが珪藻土と石膏で出来ています。
2022年1月現在、店頭で扱われている珪藻土スプーンについては、下記のような割合になっていました。
- セリアの珪藻土スプーン 材質:珪藻土35%、石膏65%
- ダイソーの珪藻土スプーン 材質:珪藻土30%、石膏70%
(※パッケージ裏の表示にて確認)
●石膏の粉は口に入っても大丈夫?
石膏は人体に安全な成分です。
豆腐の凝固剤として数%量が添加材として利用されていたり、ビール醸造水の硬水化剤に使用されたりといった形で、食用にも使われています。
一方で、珪藻土も実はその昔「食べられる土」と呼ばれていたほどの素材。
最近でも珪藻土の主成分であるケイ素の働きが世界的に注目され、サプリメントとして積極的に摂取するという動きが高まっているんですよ。
どちらにしても、口に入っても問題のない安全な素材で出来ているということですね!
●100均の珪藻土グッズの実力を検証
石膏の方が割合が多い100均の珪藻土グッズでも、ちゃんと除湿効果はあるので、塩を固まらせない効果があります。
試しに、100均で購入した珪藻土グッズ(セリアのスプーン)を、固まってしまった塩と一緒に密閉容器に入れて一晩おいてみたところ、朝には塩が解れて使いやすく戻っていました。
ただし、塩の状態がサラサラというよりは少しざらつきのある状態だったので、もっと吸湿力を求める方は、珪藻土の割合が高い大手メーカーのものの方がおすすめかもしれません。
Afterの画像の上の方に水滴がついているのが見えますか? 実験時にうっかり窓辺に置いてしまったため、気温の変化から結露してしまったようです。
でも、こういった周りの環境に左右されることなく、固まっていた塩がほぐせたことは間違いないですね。
●100均グッズのメリットやデメリットは?
白っぽい粉が手につきやすいのもデメリットかもしれませんが、これは使用前にきちんと洗って乾かせば粉については特に気になりません。
万が一口に入っても、人体に悪影響はないのでご安心ください。
他の気になる点と言えば、使い勝手に関してはデザインが少なく、きちんと計量できないということ。
小さじサイズなど様々なサイズ展開のあるkarariなどの人気ブランドと比べると、調理する時に別のスプーンを使う必要があるのが残念でした。
洗剤はNG?!珪藻土アイテムのお手入れと使う時の注意点
珪藻土スプーンは、基本的には水のみで洗うのが正しいお手入れ方法です。
うっかりと石鹸や食器用洗剤で洗ってしまうと、珪藻土の孔がふさがってしまい、調湿効果や吸水効果が落ちてしまうので気をつけましょう。
また、洗ったあとはしっかりと乾燥させることも大事なポイントです。
●レンジでの乾燥ができるものがおすすめ
乾燥のさせ方は、製品によっても異なります。
パッケージに説明がある場合は、基本的にその内容に従ってお手入れしましょうね。
例えば、karariシリーズのスプーンの場合は、表面に塩などが付着しだしたらお手入れのサイン。
電子レンジで一度乾燥させてください。レンジ加熱することで雑菌も消滅し、衛生的に使えますよ。
一方でセリアやダイソーの珪藻土スプーンは、レンジの使用が不可のものがあるので気をつけたいところです。
基本的に、濡らしても水をすぐ吸収してしまうので、表面はサラサラ。自然乾燥だと「本当に乾いているのかな?」「乾かし不足でカビないかな?」という不安はありますね。
●欠けやすく割れやすい!珪藻土グッズは割れ物
珪藻土グッズは落とすと折れたり割れたりするのはもちろん、特に細いスティック状のものやスプーン型の柄の部分はポッキリいきやすいです。
今回の実験でも、持ち運びの際に何度かセリアのスティックタイプが割れてしまいました。
珪藻土グッズは、陶器などと同じように「割れ物」だと思って扱うようにしましょう。
効果が落ちてきたと感じたら
珪藻土グッズは、長く使っているうちにだんだんと除湿効果や吸水効果が落ちていきます。
また、うっかり洗剤で洗ってしまったり汚れた場合などは急激に効果が薄れることも……。
そんな時は、サンドペーパーで表面を軽く削ることで、再び除湿効果が高まります。
電子レンジも効果あり!?塩の固まりをほぐす裏ワザ
容器に塩と珪藻土グッズをいれておくことで、サラサラな状態が保てるということは分かりました。
また、固まってしまった塩に対しても、一晩ほどで元の状態に戻せるくらいの効果があることも実験済みです。
……が、塩を置いておられる周りの環境や、珪藻土グッズの材質の割合によっては戻らない場合もあるかもしれません。
そもそも、効果があっても「一晩も待てない」という方もおられるでしょう。
最後に、固まってしまった塩の戻し方について、珪藻土グッズ以外に試してみた方法をご紹介しておきます。
固まった塩を電子レンジでサラサラにする方法
この方法は、あくまで「固まった塩」に有効な方法です。
砂糖の場合は種類によっても対処方法が違うので、応用は出来ません。お間違いのないようご注意くださいね。
(以前の記事で、「グラニュー糖」については効果を検証済みです)
1.塩を耐熱容器に入れる
耐熱容器に入れた、塩の固まりをレンジに入れます。(深めの容器がおすすめ)
2.レンジで加熱する
レンジで加熱します。
- 500W:約30秒~1分
- 600W:約20秒~40秒
※機種によっても若干異なるので、上手くいかなかった場合は次から調整してください
3.ほぐれない場合は更に加熱
見た目が変わらなくても、軽く触って崩れるようであればOKです。
まだ硬くて崩れそうにない場合は、もう少し様子を見ながら加熱します。
(10秒ずつくらいで様子を見ながら加熱すると失敗しません)
4.粗熱を取る
粗熱を取り、軽く触れて崩します。
珪藻土スプーンで塩をサラサラに
珪藻土スプーンは塩と一緒の容器に入れておくだけで、サラサラを保ってくれる便利なアイテムです。
既に固まってしまった塩にはレンジでチンする方が早いかもしれないですが、今後の対策として取り入れておくといいですね。
ただし、快適に使うためのお手入れや取り扱いについてはちょっと注意が必要。
特に洗剤を使って洗わないようにすることと、割れ物として丁重に扱うということだけでも覚えておきましょう。
最近では、可愛いデザインの物やキッチン以外でも便利に使えるアイテムが色々と増えているので、是非スプーン以外のアイテムもチェックしてみてくださいね♪
参考資料
ダイソー「珪藻土商品についてお客さまへのお知らせ」検索日2022/1/28
セリア「珪藻土商品の安全性に関するお知らせ」検索日2022/1/28
珪藻土karari「Karari珪藻土シリーズ アスベスト含有分析結果について」検索日2022/1/28
soil「珪藻土製品へのアスベスト混入問題について」検索日2022/1/28
独立行政法人 製品評価技術基盤機構 既存化学物質安全点検データ
産業医学レビューVol.15 No.4 2003 (財)産業医学振興財団発行
昭和化学工業「珪藻土の安全性について」
日本珪藻土日用雑貨製造協会「日本珪藻土の特性」
安全センター情報 (490), 24-30, 2021-03 全国労働安全衛生センター連絡会議 他