北海道の庭で、野菜と共にハーブ・野草・山菜を育てる菜園家。また、それらの食材の楽しみ方・調理方法をプロとして、Yahoo!などの様々なメディアで発信している。Instagram・ブログ『料理+菜園づくり 食育インストラクターracssの日々の暮らし』で、その様子を公開中。
和菓子を自宅で手作りするって、ハードルが高いと思っている方は多いですね。実はわたしもそのひとり。
しかし、和菓子作り初心者でも簡単に和菓子を楽しむ方法があるとわかり、作ってみたいと思うようになりました。
今回は「上生菓子1」の代表格でもある「練り切り菓子」作りに挑戦。
この記事では、まず練り切り菓子とはどんなお菓子なのか、練り切り菓子作りに必要なものや注意点などをご紹介します。
『練り切りの生地・あん作り』と『練り切りの成形方法』については別記事にまとめているので、あわせてチェックしてください。
和菓子作りは難しい?
クッキーやケーキなどの洋菓子を家で作るという人は多いでしょう。
一方で、本格的な和菓子を作ったことがある人は少ないのではないでしょうか。
餡(あん)やお餅など、日本人には馴染みの深い材料を使って作る和風のお菓子は、使う材料はとてもシンプル。ですから実は、洋菓子よりも取り組みやすいお菓子なのです。
最近は餡(あん)も市販の美味しいものが売られていますし、和菓子作りの道具もとても充実してきています。
自宅にあるスプーンやクッキー用の抜型などを使って作る方法もあります。
そこで、和菓子作り初心者でも取り組みやすい方法でやってみよう、というテーマで、わたし調理師racssがいろんな和菓子作りにチャレンジ中です。
これまで、白玉団子やわらび餅、水ようかんなど、簡単な和菓子の作り方についてご紹介してきました。
今回挑戦する練り切りは、見た目も作り方もこれまでの和菓子よりワンランクアップのお菓子です。
まずは、この練り切りがどんなお菓子なのか知っておきましょう。
練り切り菓子の歴史と特徴
茶席で添えられる上品な和菓子「練り切り菓子」。
美しい色と季節を表現した、日本を代表する和菓子です。
練り切り菓子は「上生菓子」に分類されます。
これは、落雁(らくがん)などの干菓子と比べて水分が多い「生菓子」の中でも、砂糖を多く使っているから。
戦時中、貴重品だった砂糖を多く使う菓子を「上菓子」と呼んだ名残とされています。ですから、厳密には和菓子の中で「上生菓子」が高級であるという意味の呼び方ではありません。
しかし、実際に茶の湯のおもてなしや贈り物に用いられるお菓子のため、格式が高いものとして扱われています。
季節を表す練り切り菓子
練り切りは他の和菓子と同じく、形や色で季節を表現するお菓子です。中でも、季節を表現する細やかな細工が施されるのが何よりの特徴。
季節により決まったモチーフがあり、四季に合わせて形や色合いを工夫して作られます。
- 春…梅、桜、山吹、ツツジ、若草、菜の花、藤など
- 夏…青梅、あじさい、あやめ、百合、鮎、金魚、ホタル、ナス、渦巻きなど
- 秋…紅葉、栗、柿、桔梗、菊、ぎんなん、ヒョウタン、柚子、桃など
- 冬…うさぎ、千鳥、雪、霜、鶴、水仙など
他にも、新春には「松竹梅、海老、福寿草、富士山」をモチーフにするなど、季節のイベントにちなんだデザインで作られることもあります。
また、練り切りなど上菓子には、「春の風」とか「天の川」とか「初氷」といったように、何を表現したのかが分かるように名前をつけるのも特徴的。
お菓子の色形と名前の両方でセンスが問われる奥深さも魅力の1つと言えます。
世界で評価される練り切りの技法
上記のような理由から、和菓子職人がヘラや三角棒を使って練り切り菓子に繊細な成形や模様付けをする様子、その仕上がりの芸術性は、世界でも高く評価されています。
和菓子作り初心者にとっては、「格式が高く」、「繊細な細工」の練り切りは憧れの存在と言えるかもしれません。
しかし、現代では「練り切りアート」なるものも人気です。形式ばった作り方にとらわれず、現代ならではの自由な発想で楽しむ人が増えている、注目のお菓子でもあるんです。
一度作ると、生地の柔らかい感触や、好きな色形を作り上げることにはまってしまう人も多いよう。そう聞くと作ってみたくなりますよね。
初心者ですから難しく考えず、まずは作る工程を楽しむところから始めていきましょう。
練り切り菓子作りの材料と色付け用色素の安全性
練り切り菓子の材料は、主にこの3つです。
- 練り切り生地 180g
- 中芯用あん 180g
- 色付け用色素
※約12個分作れます。
練り切り菓子1個の標準的な重さは30gです。
練り切り生地、中芯用のあんともにあらかじめ15gずつに量って分けておくと、手早く作ることができます。
色付けに使う、いわゆる「食紅」は安全なのかどうか、心配になる人もいると思います。
合成着色料は石油由来のもの(タール系色素)、天然着色料は植物や生物由来のもの(ベニバナ、クチナシなど)というふうに分類されることがありますが、「合成だから体に悪い」と単純に考える必要はありません。
日本で流通している着色料は食品添加物として安全性が確認されたもので、使用できる限度量が決められています。
着色料のみを大量に摂取することはないため、合成着色料であっても人体に影響を及ぼす恐れはほとんどないと言われています。だから極端に嫌がらなくても大丈夫なんです。
自然由来の着色料もある
和菓子作りでは特に自然の色合いに寄せた淡い色が好まれますので、どちらかといえば自然由来の着色料を使いたいと思う人が多いかもしれませんね。
自然由来の着色料を使いたいなら、「食用天然色素」と書かれた商品を探してみてください。
ただし、天然色素は温度や光、湿度の影響を受けやすいため、保存に気を使う必要があります。
また、身近な食品の中にも、きれいな色を出せるものがあります。練り切り菓子に混ぜるのに実際に使われることがある食品を挙げてみました。
- 黄色…茹で卵の黄身、かぼちゃ、人参
- 緑色…抹茶、ほうれん草
- 赤色…苺、赤しそ、赤ビーツ
こうした食品で色付けするときは水分量を調節するのが難しいですが、抹茶粉末などは水分がないため気軽に活用できます。ゆで卵の黄身も混ぜやすくかわいい「たまご色」が出せますよ。
練り切り菓子を作るときは衛生面の心遣いを
手で練って作る練り切り菓子は、衛生面に配慮して作ることも重要です。
道具やテーブルを消毒してから作り始めることはもちろん、作る合間にも手の消毒も行うと安心です。
ホコリなどが入らない清潔な環境で作ることや、練る合間にもこまめに手を拭いて汚れが付かないように意識しましょう。
こまめに手や道具を拭くのは、湿り気を与えたり手の温度を下げたりするためにも効果的。
手の温度が生地に移るとべたつきやすくなるため、気温によっては手を冷やしながら作るようにしましょう。
練り切り菓子はどうやって作る?作り方の手順
練り切り菓子作りに必要なものや作る際の注意点などを確認したところで、いよいよ作り方の手順を見ていきましょう。
練り切り菓子作りは、簡単に言うと4つのパートに分かれます。
手順1.生地を作る
手順2.あんを作る
手順3.色付けする
手順4.成形する
調理師racssが実際に作りながら、初心者でも失敗しない作り方を解説していきます。
続きは2記事に分けてご紹介していますので、順番にご覧くださいね。
おわりに
歴史も長く奥が深い練り切り菓子のいろはをご紹介しました。
実際に作ってみたいと思った方は、ぜひ作り方の記事もチェックしてみてください。