ハウジーマガジンを運営するキッチン・雑貨の専門卸売り「クラスフィルグループ」で実験を担当するリケジョ。「何を買ったらいいの?」という悩みに応えるべく、商品を実験して徹底調査していきます!
フライパンで薄焼き卵やオムレツを焼いた時、火加減に注意しているのに「キレイに焼き上がらない」と思うことありませんか? 焼きムラができたり、一部だけ焦げ付いてしまうのは、なぜなのでしょうか?
今回は、6種類のフライパンを使って比較実験を行いました。分かった答えとは?
焼き上がりを比較する6種類のフライパン
前回、フライパンのくっつきにくさを調べるために、薄焼き卵を焼いて実験しました。今回は、薄焼き卵を焼いて、その焼き上がりに注目! 「焼き上がりのキレイさ」を比較していきます。
実験に使うのは、ご家庭でもよく使う6種類のフライパンです。
それぞれのフライパンの特徴はこちら。
フライパンの表面 | フライパンの中の素材 | 中の構造 | |
【1】 | フッ素コート | アルミ | ー |
【2】 | マーブルコート(フッ素樹脂+マーブル) | アルミ | 4層 |
【3】 | ダイヤモンドマーブルコート (フッ素樹脂+ダイヤモンド+マーブル) | アルミ | 8層 |
【4】 | セラミックコート | アルミ | 2層 |
【5】 | 鉄 | 鉄 | 鉄のみ |
【6】 | ステンレス | ステンレス+アルミ | 5層 |
フッ素コート(フッ素樹脂加工)は、表面加工とフライパンの構造が違う3種類を用意。コーティングを重ねて層に厚みが出ることで、焼き上がりに違いはでるのでしょうか。
例えば【3】のダイヤモンドコートのフライパンをみてみると
本体のアルミをはさむようにして、内側が5層、外側3層の8層構造になっています。
【6】のステンレスフライパンも多層構造。
こちらはコーティングではなく、アルミ素材ととステンレス素材を重ねることで5層になっています。
焼き上がりを実験する方法
焼き上がりを比較するために、今回も薄焼き卵を焼いて実験していきます。焼きあがった薄焼き卵の「焼きムラ」や「焦げ目」の付き具合を比較して、キレイに焼けたかどうかを判定します。
焼き上がりを比較する実験の条件
どのフライパンも、以下の条件を同じにして実験します。
- 26cmサイズのフライパンを使う
- 1個分の卵を焼く
- フライパンの中央部分をデジタルサーモで計測し、表面温度が140度になったら卵を流し入れる
- コンロのつまみ部分にテープでマーキングして、同じ火加減にする
- 2回焼いて、より特徴が出たほうの薄焼き卵で比較する
今回実験に使うコンロは、卓上のガスコンロ。IHコンロのようにデジタルで火力を調整できないので、マスキングテープで目印をつけて、同じ火力にします。また焼き上がるまではつまみを触らず、一定の火加減を保って実験を行います。
表面に加工のない「鉄フライパン」と「ステンレスフライパン」は、くっつき防止のために、同じ量の油を引いて実験します。
薄焼き卵を焼く実験の手順
以下の手順で実験していきます。
手順1.卵1個を割りほぐす。
手順2.表面にコーティングのないフライパンには、同じ量の油を引く
手順3.デジタルサーモでフライパンの表面を測って、140度になったことを確認する。
手順4.フライパンに卵を流し入れる。
手順5.火加減を一定に保ったまま卵を焼く。
手順6.フライパンを傾けて、卵の裏面全体がフライパンから離れるようになったら、皿に取り出す。
以上の手順で、1つのフライパンにつき2回ずつ卵を焼きます。焼いた薄焼き卵を、フライパンに接していたほうの面を上にして並べます。
2枚を見比べて、より特徴が出ている1枚で比較していきます。
薄焼き卵を焼いた、焼き上がり具合の結果は?
それぞれのフライパンで焼いた結果は以下のとおりです。
アルミ+フッ素コートフライパンの焼き上がり
まずは【1】の中がアルミ、表面がフッ素樹脂で加工されたフライパンから。中のアルミ素材は、素早く熱を伝える性質を持った素材。熱しやすい反面、冷めるのも早いという特徴があります。
今回使ったフライパンは、軽く扱いやすさが魅力のアイテム。フライパンの厚みはそれほど感じられません。
焼き上がりを見てみると、焦げ付きもなくなかなかいい感じに焼けています。フライパンの表面に行き渡った熱で、焦げ目がつく前に素早く全体が焼けたためと考えられます。
アルミ+マーブルコート(4層)のフライパンの焼き上がり
次は【2】のマーブルコートのフライパン。こちらも中は、熱伝導に優れたアルミ素材となっています。
今回使ったフライパンは、アルミの上に4層のコーティングが施されたもの。さきほどの【1】のフライパンより少し厚みが感じられます。
焼き上がりを見ると、焦げ色がやや濃くついているところがありますね。焼きムラも少し気になります。層が厚くなった分、フライパンの表面に、熱が伝わりやすい部分と冷めやすい部分ができたせいかもしれません。この温度差が焼きムラにつながったと考えられます。
アルミ+ダイヤモンドマーブルコート(8層)のフライパンの焼き上がり
次は、ダイヤモンドマーブルコートのフライパンです。こちらも中はアルミ素材。
8層ものコーティングで加工されているせいか、【1】や【2】のフライパンと比べても一番厚みがあるように感じられます。
焼き上がりは、中央がちょっと焦げて、焼きムラが出る結果になりました。これは、層が厚くなることで、熱が端まで熱が伝わりにくくなり、温度差ができたことが原因と考えられます。端っこの卵が固まってきたころにはすでに、中央部分が焦げ始めていたというわけですね。
セラミックコートフライパンの焼き上がり
セラミックは熱伝導に優れ、蓄熱性にも優れた素材です。熱が伝わりやすく冷めにくいのが特徴です。
今回の実験で使ったフライパンは、アルミの表面をセラミックでコーティングしたもの。アルミもセラックもどちらも熱伝導のよい素材です。
焼き上がりは、全体に焼き色は付いていますが、目立った焦げ目のない仕上がりになりました。ただ焼き具合は、ポツポツとしたムラが気になります。フライパン全体に伝わった熱をキープして均一の焼き色になったものの、表面のところどころに温度が低い部分があり焼きムラにつながったようです。
鉄フライパンの焼き上がり
鉄は熱伝導も蓄熱性も高い素材。つまり一度高温になると冷めにくく熱を蓄えておけるのが特徴です。中華料理のように高温で一気に調理する料理に向いているのは、この特徴があるため。
鉄フライパンの板厚は、一般的に1.6mm、2.3mm、3.2mmがあり、厚くなるほど蓄熱性が高くなり、温度が均一になるので焼きムラが少なくなります。今回使った鉄フライパンは、底の厚みが「1.6mm」。
薄焼き卵の焼き上がりは、ところどころに焦げ目がついて均一な焼き色とはいきませんでした。中火で加熱し続けたために、炎が当たるところの温度が上昇し続けて焦げ目ができてしまったと考えられます。厚みのある鉄フライパンではもっとキレイな焼き上がりになるかもしれませんが、厚くなるほど重くなるデメリットもあります。
表面がステンレスで中がアルミ(5層)のフライパンの焼き上がり
ステンレスは熱伝導が低い素材、つまり熱しにくい代わりに冷めにくいという特徴をもっています。そのため、使用するときにしっかり「予熱」をしてフライパン全体に熱をいきわたらせることが重要です。
ちなみに今回使ったビラクラフトのフライパンは、熱伝導のよいアルミを挟み込んだ構造。熱が伝わりにくいというステンレスのデメリットをカバーする仕組みになっています。今回の実験では予熱完了まで2分ほど。フライパンに水滴を落としてみて、表面でコロコロ転がる状態が予熱できたサインなんだそうです。
しっかりと予熱して焼いた薄焼き卵は、焼きムラもなくキレイな仕上がりになりました。とてもおいしそう。真ん中も端も同じ焼き色になっているのは、熱がフライパンに均一に伝わって冷めずにキープできていたためと考えられます。
焼き上がり実験結果のまとめ
実験結果をまとめてみると……
焦げ目も焼きムラもなく、一番きれいな仕上がりになったのは、ステンレス製のフライパン。次にフッ素樹脂加工のフライパンやセラミック加工が焦げ目が少ない結果になりました。
逆にくっきりとした焦げ目ができたのは鉄製のフライパン。フッ素樹脂加工の中でもアルミ+ダイヤモンドマーブルコートのフライパンは、やや焦げ目が目立つ焼き上がりとなりました。まとめると以下になります。
表面コート+中素材 | 特徴 | 薄焼き卵の焼き上がり |
【1】フッ素コート+アルミ | 素早く熱が伝わる素材 | コゲがなくきれい |
【2】マーブルコート+アルミ | 熱が伝わりやすい部分と冷めやすい部分がある | やや焼きムラが気になる |
【3】ダイヤモンドコート+アルミ | 中央は温度が上がりやすいが、層が厚く端まで伝わりにくい | 中央がちょっと焦げて焼きムラができた |
【4】セラミックコート+アルミ | 熱が伝わりやすく冷めにくい素材 | ポツポツした焼きムラはあるが均一の焼き色になった |
【5】鉄 | 一度高温になると冷めにくい素材 | 焦げ目がついて焼きムラができた |
【6】ステンレス+アルミ | 熱しにくく冷めにくい素材 | 焦げ目がつくことなくきれいに焼き上がった |
焼きあがりがキレイなフライパンを選ぶポイント
実験の結果から、冷めにくく一定の温度を長く保てるかどうかが、焼き上がりを左右するポイントになることが分かりました。キレイな焼き上がりになるフライパンを選ぶには、以下の点をチェックしておくとよいでしょう。
素材の「熱伝導のよさ」を理解して選ぶ
表面の素材だけではなく、中の素材にも注目する必要があります。フッ素樹脂加工やセラミックコートのフライパンは中がアルミ素材であることが多く、熱伝導がよいことで、温度が伝わりすぎて焦げやすくなることがあります。その点、ステンレスは熱がゆっくり均一に伝わることで、焼きムラなくキレイに焼き上げることができます。
素材の「蓄熱性の高さ」を理解して選ぶ
伝わった熱を一定の温度に保てることもポイント。セラミックや鉄のような、「蓄熱性の高い」素材を選ぶことで、キレイな焼き色が均一についた焼き上がりになります。
蓄熱性が高いかどうかは「鍋厚」も関係している
フライパンの蓄熱性は、素材自体の特徴とは別に、フライパンの厚みも関係しています。つまり、フライパンの厚みが薄ければ熱が冷めやすく、厚いほど熱を蓄えやすいということ。均一の焼き色でキレイな仕上がりを目指すなら、厚みのあるフライパンを選ぶこともポイントです。
極厚のフライパン「大人の鉄板」というアイテムを例にとってみていきましょう。
こちら「大人の鉄板」ですが、今回の実験に使用した一般的な鉄フライパンと比べると、約3倍もの厚さがあります。その厚みは、なんと4.5mm! その分、重量は約3.1kgもあります。
「大人の鉄板」のような厚みのあるフライパンと薄いフライパンでは、焼き上がりにどんな違いが出るのが、イラストで見ていきます。
上記のイラストのように、薄いフライパンの場合は、火の当たる部分だけにしか熱が蓄えられないので、どうしても焼きムラができてしまいます。その一方、「大人の鉄板」のようにフライパンに厚みがあると、その分だけ熱を蓄えることができます。そのため、端までめいっぱい蓄熱でき、焼きムラなく均一に焼き上げることが可能なのです。
また蓄熱性が高いことで、内部の熱の伝わり方にも違いがあります。
分厚い肉を強火で1分焼いた時の違いを見てみると、薄いフライパンでは表面が焦げて中は生焼けの状態に。一方厚みのある「大人の鉄板」のようなフライパンだと、中まで程よく火が入っています。蓄熱性が高いことで、肉をのせても温度が下がらず、すばやく表面が焼けて中心まで均一に熱が伝わったことが分かります。蓄熱性の高いフライパンを使えば、キレイな焼き上がりになるだけでなく、おいしく仕上げることもできるんですね。
もし、肉といった焼き上がりにこだわりたい場合、蓄熱性の高い厚みのあるフライパンを選ぶのがベスト。「大人の鉄板」ぐらいの厚みがあると、外はカリっと中はジューシーなプロ級の仕上がりに仕上げることができるのです。
フライパンの特徴を知って、キレイな焼き上がりを目指そう
キレイな焼き上がりにするには、ステンレスや極厚のフライパンを使うのが理想。ただ、今すぐにフライパンを買う予定はないという場合は、今あるフライパンの使い方を見直してみても。
熱しやすく冷めやすいアルミ素材のフライパンを使っているなら、火のとおり具合を見て途中で弱火にするなど、一部だけ温度が上がりすぎないように注意するとよさそう。またフライパンの説明書に「強火NG」や「必ず油を引く」といった注意書きがある場合は、きちんと守ることも大切です。
フライパンの特徴を知れば、もっと料理上手になれること間違いなし。今回の実験を参考に、失敗の少ない調理を楽しんでくださいね。
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