ハウジーマガジンを運営するキッチン・雑貨の専門卸売り「クラスフィルグループ」で実験を担当するリケジョ。「何を買ったらいいの?」という悩みに応えるべく、商品を実験して徹底調査していきます!
安全性の面からも注目されているセラミックフライパン。これから買うならフッ素加工よりセラミック加工がいいの?と気になっている人も多いかもしれません。
そこで今回は、セラミックフライパンのメリットやデメリット、使う上での注意点を解説します。
セラミックフライパンが注目されているワケ。フッ素樹脂加工との違いは
フライパンには大きく「コーティングあり」のフライパンと「コーティングなし」のフライパンがあります。コーティングがないフライパンは、素材によって使い方にコツが必要。そのためくっついたり焦げ付いたりすることもあって初心者には扱いにくいのが難点です。
そこで生まれたのが、表面にこびり付きにくい加工が施したコーティングフライパンです。食材がこびりつきにくいため、お手入れも簡単で油が少なくてすむことから今では定番になってきました。代表的なのは「フッ素樹脂加工」のフライパン。ただ最近は、「フッ素樹脂加工ではないフライパン」が注目されるようになってきています。そこで話題になっているのが「セラミックフライパン」です。
フッ素コーティングより安全
「フッ素コーティングでないフライパン」が注目されてきている大きな原因は、表面に「PTFE」「PFOA」といった化学物質を使っていることです。特に最近はEU諸国を中心にこれらの化学物質が人体に与える影響と自然界で分解されないことが問題視されています。
セラミックフライパンとは、表面をセラミック、つまり陶磁器と同じ素材でコーティングされたフライパンのことです。天然の素材を使っているため、人や環境にとって安心安全ということで注目を浴びているのです。
遠赤外線効果で料理がおいしく仕上がる
陶磁器と同じ素材で作られたセラミックフライパンは、陶磁器や土鍋と同様、遠赤外線効果が期待できます。そのため、食材を内側からじっくり温めることが可能。セラミックフライパンで肉や魚を調理すると、外はパリッと中はふっくらジューシーに仕上げることができます。つまり食材の旨味を閉じ込めることができ、煮込みハンバーグといったグツグツ煮る料理も得意です。
そのため、鍋と兼用で使って正解。「焼く」だけでなく「煮る」料理もおいしく仕上げることができるのがセラミックフライパンならではのメリットです。
耐熱性・耐久性に優れている
セラミックは硬いので摩擦に強く、ヘラで繰り返しこすってもコーティングがはがれにくい素材です。そのため、摩耗に弱いフッ素コーティングに比べて耐久性に優れたコーティングといえます。
また、フッ素コーティングのフライパンの耐熱温度が250度前後なのに対し、セラミックフライパンの耐熱温度は400度前後です。特に先ほど紹介したフッ素コーティングに使われている「PFOA」という素材は高い温度で長時間熱したり空焚きをすると人体に有害な物質がでるとされているため、高熱での料理は厳禁。セラミックフライパンはそういった心配がないのはもちろん、耐熱温度が高いので中にはオーブン調理に耐えるアイテムもあります。
フッ素樹脂加工のフライパンより耐熱性・耐久性が高いというのもセラミックフライパンが注目されているワケです。
セラミックフライパンは、料理の入れっぱなしOK
セラミックフライパンは酸やアルカリに強いといった特徴があります。そのため料理を入れっぱなしにしてOK。例えば家族がそろわない夕食でのシーン。チキンのソテーを夕食に作った場合、後で食べる家族の分はフライパンの中でそのまま置いておく、食べる前にセラミックフライパンで温め直すといったことができます。温め直す際、同時焼き直すことができるので、チキンソテーの皮目のパリパリ感を復活させること可能です。
一方、フッ素コーティングのフライパンは料理が仕上がったらすみやかに器に移し替える必要があります。表面のミクロの穴から調味料が浸透してコーティングを傷めてしまうからです。そのため、チキンソテーを温め直す際、レンジを使うことになりチキンソテーの皮目のパリッと感が失われることも。
料理をおいしく復活させる使い方ができるのも、セラミックフライパンならではの魅力です。
ただし、あくまで一時保存ができるというだけです。長時間の保存はコーティングの劣化につなががるため、保存容器替わりに使うのは避けるようにしましょう。
実は白だけじゃなく、黒いセラミックフライパンもある
セラミックといえば「白いフライパン」を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。白いフライパンは、薄焼き卵を使ったりするシーンで食材の状態が分かりやすいといったメリットがあるものの、焦げ付きが目立ってくるといったデメリットも。この「汚れが目立つのが気になる」という理由で、セラミックフライパンを敬遠している人もいるかもしれません。
でも最近は、黒やグレーといった色のセラミックフライパンも登場しています。のちほどアイテムをご紹介するのでぜひチェックしてください。
くっつくきやすい? 検証から分かったセラミックフライパンの使い方1
「セラミックフライパンはくっきやすい?」と疑問に思っている人もいるかもしれません。そこで実際に、くっつきやすい食材を焼いて検証してみることにしました。
【検証】卵を焼いて「くっつきやすいか」を調査
部分的に少しでもくっつくとボロボロになってしまう「薄焼き卵」を焼いて検証してみます。今回検証で使うセラミックフライパンは、「グリーンパンのウッドビー」というアイテム。26cmサイズのものを使います。
<具体的な実験方法>
- 中火で温めたセラミックフライパンに大さじ1の油を入れる
- 溶いた卵を流し入れて、薄く広げて1分半ほど加熱する
- 表面が固まってきたところで、側面や底のくっつき具合を確認
では実際焼いてみて、ちゃんとくっつかず器に卵の下に木ベラを滑り込ませると、すんなりと全体が持ち上がりました。卵がフライパンの中でスルスル動くほど。お皿に移す時もこのとおり、スルッと気持ちよく移しかえることができました。
くっつきやすいフライパンで作ると確実に失敗してしまう薄焼き卵。今回の実験では、卵のくっつきやすさは全く感じられず、きれいに薄く焼くことができました。くっつかずに調理できた理由としては、以下の点に注意したことがあげられます。
【使うときの注意点】中火で予熱する
セラミックは温度変化に弱い素材ため、強火で予熱するのはNG。コーディングの劣化を早めてしまう結果になります。
また非常に熱伝導に優れた素材であるため、強火で予熱すると思ったより早くフライパンが高温に達することに。セラミック自体は高温に耐える素材ではあるものの、予熱で高温になったフライパンに油や食材を入れると即座に炭化してくっつく原因になります。
セラミックフライパンを予熱するときは、150~190度の中火で30秒~1分程度がベストとされています。実験でもこの点に注意したためくっつきにくかったといえます。
ちなみに予熱とはフライパンを温めることで、「空焚き」とは異なります。予熱しているつもりでも、加熱し続ければ予熱を通り越して空焚きに。この空焚きもセラミックコーティングを傷める原因になるので注意しましょう。
【使うときの注意点】調理前に油をひく
セラミックの表面には、ピンホールと呼ばれる小さな穴がたくさん空いています。油をひかずに調理をした場合、この穴に食材や調味料が入り込んでくっついたり焦げ付いたりする原因に。調理前には油をひいて表面になじませ、食材をくっつかないようにしておくことが大切です。
ただ油をひく際にオイルスプレーを使うのはNG。オイルスプレーで吹きかけられた油は、炭化と呼ばれる油が焦げ始める温度が低くなり、食材がこびりつく原因になってしまいます。またエキストラ・バージンオリーブオイルといった未精製オイルも炭化を始める温度が低い油です。NGではありませんが、使うなら予熱時間や火加減に注意するようにしましょう。
焦げ付きやすい? 検証して分かったセラミックフライパンの使い方2
またコーティングフライパンを選ぶとき「焦げ付きやすさ」も気になりますよね。こちらも実際、調理してみて調べてみます。
【検証】デミグラスソースを沸騰させて「焦げ付きやすいか」を調査
フライパンでよく焦がしてしまうタレやあんかけ。その代表のひとつ、煮込みハンバーグのデミグラスソース。先ほどの検証でも使ったと「グリーンパンのウッドビー」にデミグラスソースを同じく沸かしてみて試してみました。
<具体的な実験方法>
- セラミックフライパンに油をひいて中火で温める
- 市販のデミグラスソース50gを入れて、全体がフツフツと沸騰するまで1分半ほど加熱する
- 最後に、木ベラで焦げ付き具合を確認
しばらく沸騰させた後、木ベラで底をなぞってみましたが、底が焦げ付いている様子はなし。フライパンを傾けてみると、ソース全体がすんなり流れ落ち、一部だけ焦げ付いているということこともありませんでした。
ねっとりしたデミグラスソースは、多少は焦げ付いてしまうのではと予想しましたが、焦げ付きはゼロ。しかも、使ったセラミックフライパンの熱を冷ましてから、水道に当ててみると、水の力だけでスルスルと汚れが落ちたのには感動しました。
焦げ付かず使うためには、以下の点に注意するようにしましょう。
【扱うときの注意点】弱火~中火で調理する
予熱するのに強火はNGといいましたが、調理する時も強火はNGです。セラミックは熱伝導率が高く火がまわるスピードも早いため、食材に表面がすぐに焦げ付いてしまうからです。
セラミックフライパンに適しているのは、弱火~中火。中火はガス火の場合、フライパンの底に火の先が少し触れるくらいの火加減、IHコンロなら「160~180度」の間になります。調理中も高熱にならないよう火加減の調整が必要です。
ただ、中火だと料理があまりおいしく仕上がらないのでは?と思うかもしれません。セラミックは。中火で調理していても急速に加熱されるので、チャーハンもパラっと仕上がるので、その心配はいりません。
【使うときの注意点】金属製のキッチンツールは使わない
セラミックは硬く耐久性に優れた素材ではあるものの、金属ヘラでは傷ついてしまいます。目に見えない小さな傷の食材や油が入り込み、くっつきや焦げ付きやすさの原因になってしまうのです。金属製のキッチンツールを使ったからといって、すぐにくっついたり焦げ付きやすくなるわけではありませんが、小さな傷が増えるといずれくっついたり焦げ付いたりする原因に。
そのため、「金属ヘラOK」と表記のないものに関しては、樹脂製やシリコーン製、木製のキッチンツールを使うようにしましょう。
セラミックフライパンのお手入れ方法
温度変化に弱いセラミックフライパンには、お手入れする際にもいくつか注意点があります。
普段のお手入れ方法
使用後にアツアツの状態で、水をかけるのは厳禁。急激な温度変化によりセラミックにヒビが入りコーティングが劣化してしまいます。調理が終わったらサッサと洗ってしまいたくなるかもしれませんが、そこはグッと我慢。しばらく置いて熱が冷めるまで待つようにしましょう。
熱が冷めたら、食器用洗剤とやわらかいスポンジで汚れを洗い流しましょう。ここでも柔らかいスポンジを使って、なるべく傷がつかないように注意します。研磨剤入りの洗剤や、金属のたわし、メラミンスポンジは傷をつける原因になるので、使わないようにしましょう。
ガンコな汚れが付いた時のお手入れ方法
ガンコな汚れは、しばらくお湯につけてふやかして洗います。焦げ付いたからといってとゴシゴシこすったりメラミンスポンジを使うのはNGです。
また軽度の焦げつきであれば、重曹で落とせる場合もあります。くわくはセラミックフライパンの取扱説明書を確認するようにしてください。
食洗機は使ってOK?
セラミックフライパンのほとんどが、食洗機不可です。中には強度を上げていて食洗機対応のものもありますが、ノンスティック性能を長持ちさせたいと思うなら手洗いするのがベストです。よく説明書を読むようにしましょう。
セラミックフライパンで揚げ物はできる?
耐熱性が高いセラミックフライパンなら「揚げ物できる?」と思うかもしれませんが、セラミックフライパンは揚げ物をするのは非常に危険です。
揚げ物油は200度を超えると白煙があがり、発火する危険性があります。先ほども述べたようにセラミックは熱伝導率が高く、すぐに高温になってしまいます。とくにフライパンは底面が広く火があたっている部分が大きいことで温度管理が非常に難しく、また鍋の高さもないため油が飛び散ってしまいます。
セラミックフライパンの「寿命」は?他のコーティングと比較
耐久性に優れたセラミックといえど、コーティングのない鉄やステンレスのフライパンのように10年以上も使えるというわけではありません。フッ素樹脂加工のフライパンと同じく、セラミックフライパンもいずれは劣化します。
他のコーティングと比べると?
先ほどセラミックフライパンは耐久性に優れているといいましたが、他のコーティングフライパンと比較してみました。
<コーティング別フライパンの寿命>
コーティングの種類 | 目安の寿命 |
セラミックコート | 約1~2年 |
フッ素(テフロン)コート | 約1~2年 |
マーブルコート | 約1~3年 |
ダイヤモンドコート | 約2~3年 |
チタンコート | 約2~3年 |
セラミックフライパンの寿命は約2年です。耐久性がある素材ではありますが、どんなに気を付けて使っていも毎日の調理でどうしてもコーティングが傷ついてしまうからです。食材が焦げ付くようになってきたら買い替え時期と思うようにしましょう。
セラミックフライパンの寿命を延ばすには?
セラミックフライパンは、フッ素樹脂加工のフライパンよりお値段がはるアイテムだけに寿命を少しでも伸ばしたいですよね。とにかくコーティングがはがれないようにすることと傷をつけないようにすることが大事です。先ほどの検証でもわかった注意点を含めて以下の点に気を付けるようにしてください。
- 空焚きはしない
- 強火で予熱しない→中火以下でじわじわ予熱する
- 油なしはNG→毎回必須、ただしオイルスプレーはNG
- 強火調理しない→中火以下で調理する
- 金属キッチンツールはNG→シリコン製や木製のものを使う
- 食洗機は使わない→手洗いがベター
- 金属タワシ、メラミンスポンジは使わない→柔らかいスポンジを使う
- 料理を入れっぱなしにしない
寿命を延ばすかどうか特に重要なポイントは「強火」で使わないことです。セラミックの熱伝導の高さを考えると、弱火や中火でも食材に火が通りおいしく焼きあがりますので、火加減を抑えめにして使うように気を付けましょう。
また、先ほど料理を入れっぱなしにしてOKと書きましたが、寿命を延ばしたいならアルカリ性に長く浸さない方がベターです。
ただ、表面に傷がつきにい加工が施されたセラミックフライパンも登場しています。
代表的なセラミックフライパン
セラミックフライパンといえば……という代表的なシリーズをまずご紹介します。迷ったときの参考にしてみて下さい。
おしゃれで有名な「グリーンパンのウッドビー」
「GREENPAN/グリーンパン」は世界で初めて、フッ素樹脂を使わないノンスティックコーティングを開発したベルギーのブランド。ホワイトカラーのウッドビーは、セラミックフライパンの代名詞ともいえる定番アイテムです。白に木目調のハンドルを合わせた、ナチュラルな雰囲気も人気の理由になっています。20cm~28cmまで豊富なサイズ展開も◎。
キズがつくにくい「グリーンパンのヴェニスプロ」
グリーンパンの中でも耐久性に優れたシリーズ「ヴェニスプロ」。スクラッチガードと呼ばれる傷がつきにくい特殊加工が施されていて、金属ヘラもOK。さらに食洗機とオーブン対応というのがうれしいアイテムです。グレーカラーにステンレスを合わせた高級感のあるデザインも魅力で、料理道具にこだわる人にもおすすめ。20・24・26cmがあります。
京セラのセラミック技術が生きた「セラブリッド」
1959年の創業以来蓄積されたファインセラミック技術を、幅広い事業に展開している京セラ。その京セラから販売されているセラミックフライパンが「セラブリッド」です。ホワイトカラーで食材の焼き色が見やすく、そのまま食卓に出しても絵になるのが魅力。セラミック面はメラミンスポンジで簡単にお手入れできるのもうれしい点です。
200万個を超えて売れているD&S「シャイニー」
北欧デザインのルーツと呼ばれるデンマーク発祥の「ケヴンハウン ディー スタイル」の「シャイニー」は、累計200万個を超えたヒットシリーズ。取っ手がとれるタイプで、フタごとオーブンにいれることが可能で、グラタン料理もこれひとつで作ることが可能。2層のセラミックコーティングで、耐久性がアップしているのもうれしい点です。
最近登場!お手頃価格のセラミックフライパンも登場
セラミックフライパンが、ちょっとお値段が高いイメージがあると思いますが、最近は「脱・フッ素樹脂加工」の潮流にのってお手軽価格なアイテムも続々登場。特にキッチンバイヤーMITSUがおすすめするフライパンをご紹介します。
竹炭と赤土を使用した5層コーティング
ビオ・セラミックという特許技術によりコーティング。竹炭と赤土を使用した天然素材からなる5層構造になったセラミックフライパンシリーズです。竹炭と赤土がもつ遠赤外線効果で、食材の中まで効率的に火が通る優れものです。
環境に配慮して作られたシリーズ
基盤には回収されたアルミをリサイクルして使用しお手頃価格を実現。鉱石から製造する一般的なフライパンに比べて、エネルギーを大幅に節約することで、環境問題に配慮して作られています。20、22,、24、26cmサイズがあり、やや深さがあるので、汁気のある煮込み料理にも使いやすいのが魅力です。
韓国製のニューフェイス
韓国でもセラミックフライパンが登場しています。底面は厚く外面は薄く設計されているので熱まわりは抜群。26cmサイズで約550gと軽量化を実現し、調理や後片付けの際に扱いやすいのが魅力です。木調調のシリコンハンドルのかわいい見た目も◎。20・26・28cmのサイズ展開です。
セラミックフライパンは、今後ますますトレンドに!
EU諸国では、有機フッ素化合物(PFAS)の規制がすでに始まっており、その影響をうけて脱「フッ素コーティング」の流れは止まりそうにありません。健康にも環境にも配慮したセラミックフライパンは、今後ますます商品が増えてくる予感です。
セラミックフライパンは正しい使い方をするは、性能を十分に引き出し、料理をおいしく仕上げることにもつながります。今回の記事を参考にセラミックフライパンのメリット・デメリットを知って使いこなしてください。
参考資料
佐渡市公式ホームページ 「天ぷら油火災の原因と対策」検索日:2023年3月25日