コンビニなどの商品開発業務に従事し、食の大切さに気づく。双子の男の子を育てながら、「食べ方」と「出し方」、ゆるいナチュラル生活の実践の仕方をお伝え中。
甘くておいしい、そして健康にもよい蜂蜜。お家にひとつは常備しているという人も多いと思います。
そんな蜂蜜ですが、「サラサラだったものが気づいたら固まってしまっていた!」という経験はありませんか?
そして、固まってしまった蜂蜜をそのまま食べていいのか分からずに、放置してしまっているという人も少なからずいるのではないでしょうか。
今回は結晶化した蜂蜜を元に戻す方法と結晶化を防ぐための蜂蜜の正しい保存方法などについてご紹介します。
蜂蜜が固まる(結晶化する)のはなぜ?
蜂蜜が結晶化してしまうことは、決して悪いことではありません。
この結晶の正体は、蜂蜜の主成分でもあるブドウ糖です。
そして、この「結晶化する」という現象は、蜂蜜が加工されておらず、自然なもの100%でできている証拠でもあるため、安心してください。
まずは、蜂蜜が固まってしまう原因を解説します。
蜂蜜は糖分の固まり
蜂蜜の主成分は、糖分です。その比率は大きく、糖分約70%、水分約20%で構成されています。
さらに、糖分は細かく分類され、花の種類によってその比率は変わってくるのです。
その中で、代表的な糖分は、ブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)です。
その他に、少量ですが別の種類の糖分として、ビタミン、ミネラル、食物繊維、酵素なども含まれています。
蜂蜜の結晶化には、これらの成分の比率が大きく関与しています。
蜂蜜が結晶化する主な原因
蜂蜜が結晶化する原因は、大きく分けて4つあります。
【1】保存場所の温度が低い
蜂蜜の結晶化は、気温によって左右されます。
気温が低下することで、ブドウ糖が白い粒々の結晶に変化し始めるからです。
ブドウ糖が結晶化する温度の目安は、15℃以下と言われています。
この15℃前後が、蜂蜜の結晶化が1番進む温度帯です。
決して、気温が低ければ低いほど、結晶化のスピードが早まるというわけではありません。
気温が低すぎると、ブドウ糖の分子の動きが遅くなるため、結晶化するスピードは緩やかになります。
また、気温差によっても結晶化は進みやすくなります。
蜂蜜の保存場所には、日中の寒暖差が激しい場所は避けたいところです。
ある程度一定の暖かい温度を保つことができる場所がよいでしょう。
【2】振動を与える(蜂蜜の容器を振る)
蜂蜜の中には、気泡や花粉、ワックス分(ミツロウ)などが含まれています。
この気泡や花粉が、結晶の核となるのです。
最初は小さな核ですが、振動を受けることによって、結晶化はどんどん進んでいきます。
そのため、振動を感じやすい場所(電子レンジの横や冷蔵庫の中など)での保存や、蜂蜜の容器を振ることは、結晶化を引き起こす要因になってしまいます。
加工された蜂蜜では、花粉やワックス分が取り除かれていることもあるため、結晶化しにくいものもあります。
【3】ブドウ糖の比率が高い
結晶の正体はブドウ糖です。
蜂蜜の代表的な糖分はブドウ糖と果糖ですが、ブドウ糖は結晶化しやすい、果糖は結晶化しにくいという特徴があります。
そのため、ブドウ糖の配合比率が高く、果糖の配合比率が低い蜂蜜の方が結晶化しやすいです。
このブドウ糖と果糖の比率は、蜂蜜の蜜源である花の種類や咲いている場所などによって左右されます。
加工された蜂蜜は、この2つの糖分以外の糖分を追加するなどの加工がされることで、結晶化が起こりにくいものもあります。
【4】水分量が少ない
蜂蜜の水分量によっても、結晶化のしやすさは変わります。
水分量が多い蜂蜜は結晶化しにくく、逆に水分量が少ない蜂蜜は結晶化しやすいという特徴があります。
ミツバチは、巣に運んできた蜜を熟成させるために、自らの羽を羽ばたかせて水分を飛ばす作業を行います。
水分量は熟成度の目安にもなっており、日本においては天然蜂蜜の水分量に基準値も設定されています。
天然蜂蜜の水分量
- 国産蜂蜜……22%以下
- 外国産蜂蜜……20%以下
この通り、水分量が少なくしっかりと熟成されている蜂蜜ほど結晶化しやすいです。
そのため、「結晶化=よくない」というイメージは決して持たないでもらいたいです。
結晶化しても蜂蜜の品質が低下するわけではありません。
結晶化した蜂蜜の食感が苦手な場合は、保存方法を工夫したり、蜜の種類を選んだり、丁寧に湯煎を行ったりするとよいでしょう。
蜂蜜は結晶化しても食べられる?
結晶化の初期は白く細かい浮遊物のように見えるため、カビに間違われてしまうことが多いです。
そのため、食べられないと思ってしまう人がたまにいます。
しかし、これは間違いです。
蜂蜜はその糖度の高さから、保存料としても使用されるほど傷みにくい食材です。
そのため、基本的には蜂蜜にカビが生えることはありません。
結晶化した蜂蜜は、食感は変わってしまいますが、品質や風味には影響しません。そのため、安心して食べることができますよ。
絶対に腐敗しない・カビないわけではない
ただし、蜂蜜の容器の中に食べ物のカスが混入したり、一度使用したスプーン(蜂蜜以外のものが触れたもの)を容器の中に入れたりすると、腐敗やカビを引き起こす危険性があります。
蜂蜜を取り出す時には、手間に感じることもあるかもしれませんが、毎回清潔なカトラリーを使用しましょう。
結晶化した蜂蜜は、そのまま食べることもできますが、結晶化を元に戻すこともできます。
結晶化して固まった蜂蜜を元に戻す場合、いくつか注意点があるので、次の章で詳しくご紹介しますね。
結晶化して固まった蜂蜜を元に戻す方法
結晶化しても蜂蜜の品質は変わらないため、そのまま食べても大丈夫です。
しかし、サラサラの食感の蜂蜜が好きという人も多いですよね。そんな人は今回ご紹介する方法を試してみるとよいでしょう。
結晶化した蜂蜜を元に戻す方法としては、2つの方法が一般的です。
結晶化した蜂蜜を元に戻す一般的な方法
- 蜂蜜を湯煎する
- 蜂蜜をレンジにかける
ただし、レンジで加熱する方法は、失敗するリスクが高いです。
また、急激な加熱により、蜂蜜の持つ栄養素を破壊してしまうリスクもあることから、おすすめしていません。
そこで、今回は湯煎で結晶化をした蜂蜜を元に戻す方法をご紹介します。
蜂蜜を湯煎する方法
< 蜂蜜を湯せんするのに必要なもの >
- 鍋
- 水
- 温度計
- マドラーやスプーン、菜箸など
蜂蜜がプラスティック容器に入っている場合は、ガラス瓶も用意しましょう。
1.鍋の中に蓋を開けた蜂蜜の瓶を入れて、瓶が倒れない程度まで水を入れます。
このとき、瓶の中に水が入らないように気をつけましょう。
2.弱火にかけて50℃位まで温度が上がったら、一旦火を止めて、マドラーなどでかき混ぜます。
温度計がない場合の50℃の目安は、お湯の中に指を突っ込んで、静止状態では大丈夫でも動かすと熱いと感じるくらいです。
3.結晶が完全になくなるまで、2を繰り返します。
4.結晶が完全になくなったら、鍋から取り出して自然に冷ましましょう。
プラスティックの容器は移し替えてから
プラスティックの容器に入っている蜂蜜の場合、そのまま加熱してしまうと容器が溶けたり、変形したりしてしまう危険性があります。
そのため、一手間にはなってしまいますが、瓶に移し替えてから湯煎にかけることをおすすめします。
環境ホルモンの害の観点からも、基本的にはガラス瓶などに入った蜂蜜を選ぶことがおすすめです。
湯煎をする時に注意したい3つのポイント
蜂蜜を湯煎するときに気を付けてほしいポイントが3つあります。
【1】高温加熱しない
蜂蜜は高温で加熱すると、ビタミンやミネラル、アミノ酸などの栄養素が破壊されたり、酵素が失活したりと成分が変化してしまいます。
加えて、味や香りも変化してしまう可能性が高いです。
そのため、湯煎するときのお湯の温度は60℃を超えないようにするのがおすすめ。
沸騰した状態で湯煎するのは避けてくださいね。
【2】結晶化を全て取り除く
1度結晶化してしまった蜂蜜は、残念ながら繰り返し結晶化しやすい状態になります。
湯煎した時、結晶が残っていると、そこから再度結晶化が広がる可能性があります。
そのため、何度も湯煎しなくていいようにするには、湯煎する時に完全に結晶を取り除くようにしましょう。
【3】湯煎を繰り返さない
基本的に、結晶化によって蜂蜜の品質が変わることはありません。
ただし、結晶化→元に戻す→結晶化→元に戻す、ということを繰り返してしまうと、品質や風味が落ちてしまうことがあります。
繰り返しになりますが、結晶化を戻す時には、完全に結晶がなくなるまで湯煎することが大切です。
結晶化した蜂蜜が元に戻ったら、今度は再度の結晶化を防ぐための保存方法を実践しましょう。
結晶化を防ぐ!蜂蜜を保存するときのポイントと注意点
蜂蜜が結晶化してしまうのは、理由が分かっているので、しっかり対策をすることである程度予防することが可能です。
結晶化した蜂蜜が苦手という人は特に、以下のポイントを押さえて蜂蜜を保存をするようにしましょう。
蜂蜜を保存するときのポイント
- 保存温度は18~24℃をキープ
- 直射日光は避ける
- 振動のリスクがある場所も避ける
保存温度は18~24℃をキープ
蜂蜜は気温が低下すると結晶化がスタートし始め、15℃前後が1番結晶化しやすくなり、10℃以下になると結晶化するスピードは緩やかになります。
そのため、蜂蜜は15℃以上で保存するのがポイントです。
18~24℃の常温で保存するとよいでしょう。
可能であれば、時間帯による寒暖差が少ない場所がおすすめです。
夏は暑すぎない場所を、冬は寒すぎない場所を選ぶとよいでしょう。
直射日光は避ける
蜂蜜は、直射日光に当たると品質が低下したり温度変化によって風味が低下したりする可能性があります。
そのため、風通しのよい冷暗所などで保存するのがおすすめです。
振動のリスクがある場所も避ける
前述の通り、蜂蜜は振動を受けることでも結晶化してしまいます。
電子レンジの近くや冷蔵庫の中は、振動が起こりやすい場所のため、保存場所としては向いていません。
【+αのポイント】結晶化しにくい種類の蜂蜜を選ぶ
蜂蜜は種類によって、ブドウ糖と果糖の配合比率が異なります。
蜂蜜の種類によって、結晶化のしやすさは変わってきます。
100%結晶化を防ぐことができるわけではありませんが、ブドウ糖の割合が少なく、果糖の割合が多い蜂蜜を選ぶというのも、結晶化を防ぐひとつの選択です。
結晶化しにくい蜂蜜の代表例
- アカシア
- レンゲ
- リンゴ
- ラズベリー
- マロニエ
- トチ など
結晶化しやすい蜂蜜の代表例
- ナタネ
- ヒマワリ
- ウド など
逆に、結晶化した蜂蜜を味わいたいという場合には、ブドウ糖の割合が多い(果糖の割合が少ない)蜂蜜を選ぶというのもよいでしょう。
結晶化した蜂蜜のおすすめの食べ方は?
蜂蜜は結晶化しても問題なく食べられるので、湯煎で元に戻すことが面倒な場合はそのまま食べるのもおすすめですよ。
結晶化してジャリジャリした食感になった蜂蜜も、また違った味わいを楽しむことができるので、1度試してみてもよいでしょう。
結晶化した蜂蜜のおすすめの食べ方
- ジャリジャリを楽しみながらそのまま食べる
- パンやクラッカーなどに塗る
- ヨーグルトやフルーツなどにトッピングする
- コーヒーや紅茶などの砂糖代わりに使用する
- 料理の甘みづけに使用する
など、基本的には通常の蜂蜜と同じような使い方をすることができます。
結晶化した蜂蜜はスプーンですくった時に垂れないので、蜂蜜をたくさん使うときに使いやすいというメリットもありますよ。
結晶化も楽しみながら蜂蜜ライフを楽しみませんか?
蜂蜜の結晶化は決して悪いものではありません。
そのため、結晶化のしにくさを求めて加工蜂蜜を選ぶというのは避けてもらいたいところです。
質や味わいの面でも、天然の蜂蜜がおすすめです。
ただし、結晶化した蜂蜜は、品質は変わらなくとも食感は変わってしまいます。
そのため、お好みに合わせて、サラサラやジャリジャリの食感の蜂蜜を使い分けて楽しんでみるのもよいでしょう。