家事のコツや収納術、インテリアやおでかけにまつわる話などを通して「わたしらしい暮らし方」をご提案します。
まな板は包丁と同じく、毎日いろんな食材に触れるものなので、いつでも清潔にしておきたいですよね。
プラスチックまな板は木のまな板とは違い、まな板自体に抗菌加工が施されているものも多くあります。
また、漂白剤に漬け置きしていつでも除菌することができます。
そんなお手入れが楽なイメージがあるプラスチックまな板ですが、意外と悩んでいる人が多いのが「色移り」と「反(そ)り」の問題。
そこで今回は、プラスチック製のまな板の正しいお手入れ方法を中心に、プラスチックまな板を製造するメーカーさんのご協力の元、色移りを落とす方法や、やっかいな反りを直す方法などをご紹介します。
TONBOのロゴでお馴染み!新輝合成さんに聞いてみた
今回ご協力いただいたのは、こちらのTONBOのロゴでおなじみのメーカー、新輝合成(しんきごうせい)株式会社。
半世紀以上、プラスチック製品の製造をされているメーカーさんです。
ダストボックスやバケツなどの他、保存容器やまな板など、プラスチック製のキッチン用品も数多く製造されています。
お話を伺ったのは、そんな新輝合成で20年以上モノ作りに携わっておられる林さん。
プラスチックまな板の扱い方や豆知識などをたくさん教えていただきました。
プラスチックまな板のお手入れ方法と注意点
プラスチックまな板のお手入れ方法は、食器やカトラリーと同じなのでとても簡単。
普段のお手入れなら、使ったあとに食器用洗剤を使って柔らかいスポンジでこするだけでOK。
ただし、硬いスポンジで強くこすると表面に傷がついてしまうことも。
表面が傷付くと、汚れや菌が溜たまってしまうので、金たわしなどの硬いスポンジは使わないようにしましょう。
まな板のしつこい汚れや黄ばみを落とすには?
普段の調理では気にならないかもしれませんが、例えば市販されている味付きの食材などを切ったときなど、まな板にちょっと手ごわい汚れが付くことがあります。
また、長く使っているうちに、いつの間にかまな板の表面に洗っても落ちない黄ばみが付いてしまうことも。
実はこの黄ばみは、まな板の包丁傷に菌が繁殖している証拠!
こういったしつこい汚れや、一刻も早く落としたい黄ばみの対処方法を、新輝合成の林さんに聞いてみました。
林さん「なかなか落ちない汚れは漂白剤の浸け置きや市販のまな板けずりなどを利用するのが良いと思います。」
とのことです。
基本的にプラスチックまな板はどんな漂白剤を使っても問題ありません。
ただし、塩素系漂白剤は漂白力が強い分、塩素のツンとしたニオイが気になる場合も。
まずは酸素系漂白剤を試してみて、それでも汚れが落ちない場合は塩素系漂白剤を使ってみてください。
プラスチックまな板の漬け置き方法
手順1.まずは漬け置き溶液を用意します。
まな板が入るサイズの洗い桶などに、水1Lに対して4gの漂白剤(小さじ2杯程度)を入れます。
まな板のサイズが大きいと漬け置き溶液がたくさん必要になります。今回はまな板が完全に浸かるのに2Lの水が必要でした。
手順2.酸素系漂白剤が溶けやすい水の温度は30~50度なので、お風呂のお湯くらいの温度に温めたものを使うと効果的です。
手順3.1時間程度、まな板を漬け置きします。
手順4.1時間経ったら、溶液をさっと水で流し、食器用洗剤とスポンジで汚れを落とします。
液体タイプの漂白剤を使う場合は、まな板の上に清潔なふきんかペーパーをかぶせ、その上から薄めた液をまんべんなくかけるようにしてください。
漬け置きは抗菌加工に影響する?
林さんによると、まな板を強く洗ったり、漬け置きしたりすることで抗菌加工に影響が出るのを心配される人もいらっしゃるのだとか。
林さん「抗菌加工まな板は、抗菌剤を樹脂に溶かして製造しています。そのため、半永久的に効果が続きます。」
とのことなので、抗菌加工が施されたまな板も安心して漬け置きしてくださいね。
プラスチックまな板を消毒するには?
まな板や包丁など、生の食材に直接触れる調理用品は、定期的に消毒して清潔にしておきたい!という人も多いですよね。
消毒と言えば真っ先に、熱湯を使う「煮沸消毒」を思い浮かべますが、まな板は煮沸消毒NG!
林さん「煮沸消毒を行うとまな板が変形してしまい、反りの原因になってしまいます。もしお湯をかける必要があっても、さっとかけるだけに留めてください。」
林さんからもこのように回答いただきました。
では、まな板はどうやって消毒すればいいのでしょうか。
漂白剤を使ってまな板を消毒する方法
まな板を消毒するときは、アルコールスプレーなどを使って消毒するか、泡タイプの漂白剤を使うのがおすすめ。
特に生肉や生魚を扱った日は、まな板も包丁もまとめて消毒するのがいいそうです。
なかなか落ちないまな板の色移りを落とすには?
プラスチック製によくある、白いまな板を使ったことがある人にとっては「あるある」なこと。
それは、トマトやニンジンなど色の濃い野菜を切ると、すぐにまな板に色が移ってしまうことです。
ネットで調べてみると、このまな板の色移り問題を食用油を使って解決している人が多くいました。
食用油で本当にまな板の色移りが落とせるのか、気になりますよね。
新輝合成の林さんに伺いましたが、「メーカーとして試してみたことはない」とのことだったので、今回は編集部で検証してみることにしました。
【検証】食用油でまな板の色味が落ちるのか試してみた
使用する油は何でも良いそうなので、今回はキャノーラ油を使用します。
実験用に用意した白いまな板は、ケチャップを垂たらしてしばらくするとすぐに赤っぽい色が付いてしまいました。
まな板にキャノーラ油を垂らし、全体的になじませます。
油分で汚れを浮かせる必要があるそうなので、5分ほど放置。
軽く油を拭き取り、そのまま食器用洗剤を数滴垂らします。
そして、いつものようにスポンジを使ってまな板をこすり、水で洗い流します。
写真では分かりにくいですが、ケチャップの赤っぽい色移りがすっかりなくなりました!
ネットの情報は正しいことが証明されましたね。
食用油でまな板の色移りが落とせる仕組み
トマトに含まれる「リコピン」やニンジンに含まれる「カロテン」などの色味成分は、水に溶けにくく油に溶けやすいという性質があります。
この性質を利用して、まな板に付いた色味成分を油によって溶かして浮かせ、洗剤で落としやすくするのがポイントのようです。
実際にやってみると、まな板に油を垂らしてすぐに油に赤っぽい色味が付いたので、色味成分が浮き出てきたのを実感できました。
油を拭き取る段階でかなり色移りが軽減されたので、ちょっとした色移り程度なら食用油だけでも十分かもしれません。
気になるまな板の「反り」を直す方法
プラスチックまな板を使うとき、切る時にカタカタと動いたり、くるくる回ってしまったりしたことはありませんか?
実は、プラスチックまな板は買ったばかりのものでも反ってしまっていることがあります。
プラスチックの種類によっては、製造過程で冷やされる際、収縮にムラができて反ってしまうことがあるんだとか。
以前編集部で、プラスチックまな板の使い心地を比較していたときにも、集めたまな板の中に少し不安定なものがありました。
実験中はこのようにふきんを敷いて安定させていましたが、長く使うならこの反りをなんとかしたい!と思いますよね。
まな板が反る原因って?
製造過程ではなく、使っているうちにまな板が反ってしまうこともありますよね。
まな板が反ってしまう主な原因は「熱」と「置き場所」にあると言われています。
新輝合成の林さんに詳しく聞いてみました。
林さん「プラスチックまな板は、耐熱温度が高いほど硬く、低いほど軟らかいです。耐熱温度が低く軟らかいポリエチレン製のまな板ですと、80度くらいで温めると軟らかくなり始めます。」
つまり、まな板を耐熱温度くらいまで温めてしまうと、いくら硬いプラスチックといえど軟らかくなり、変形しやすくなってしまうのです。
まな板をコンロの近くに置いたり、食洗機に入れたりして、意図せずまな板を温めてしまうこともありますよね。
その状態のまな板を、キッチンの壁に立て掛けるなどして不安定な状態にしておくと、反った状態で固まってしまう、ということになりかねません。
硬いまな板の反りを直すには?
まな板を不用意に温めるのはよくないことが分かりましたが、すでに反ってしまったまな板を元の状態に戻す方法はあるのでしょうか。
林さん「プラスチックまな板の反りを直すには、まな板に耐熱温度くらいの熱湯をかけ、そのまな板を平らな面に置いて荷重をかけて、まな板が常温になるまで放置するという方法があります。」
林さんにはこのようにご回答いただきました。
つまり、まな板を反らせたときと同じように熱を加え、まな板を軟らかい状態にする必要があるようです。
プラスチックまな板の耐熱温度
プラスチックまな板の耐熱温度は、プラスチックの種類によってかなり違いがあります。
まな板に使われている主なプラスチックの耐熱温度をまとめてみました。
- ポリエチレン…80度前後
- ポリプロピレン…130度前後
- 合成樹脂類…100~130度※
※合成樹脂は樹脂の配合の違いによって、商品ごとに耐熱温度が違う場合が多いです。
この通り、ものによって軟らかくなり始める温度に違いがあります。
耐熱温度に近い温度で温めなければ、まな板は軟らかくならないので、反りは直りにくいです。
まずは、自分が持っているまな板が「どんなプラスチックでできているか」を確認してから作業するようにしましょう。
【検証】熱湯でまな板の反りが直るのか試してみた
用意したのはポリエチレン製のまな板とポリプロピレン製のまな板。どちらも100均で購入しました。
ポリエチレン製のまな板はシート状のもので、厚みは1mmほど。ふにゃふにゃと簡単に折れ曲がります。
一方、ポリプロピレン製のまな板は硬く、厚みは2mmほどあります。
まな板をあえて反らせるため、まな板に熱湯をかけて、キッチンの壁に斜め掛けしたところ…
一晩置いただけでどちらもかなり反り返ってしまいました。
横から見ると反り具合が良く分かります。
ポリエチレン製のまな板は、分度器で角度を測ってみると、10度近く反っていました。
シート状のポリエチレン製のまな板は…分度器では正確に角度が測れないほど反ってしまっています。
どちらのまな板も、手で元に戻そうとしてもうまくいきません。
もう一度まな板に熱湯をかけて反りを戻せるのか
まな板の反りを元に戻すには、もう一度熱湯をかけてまな板を軟らかい状態にする必要があります。
先ほどお伝えした通り、ポリエチレン製であれば80度前後のお湯をかければ軟らかくなり始めますが、ポリプロピレン製は130度前後の温度が必要。
今回は沸騰したての100度のお湯で試してみますが、ちゃんと反りが直るかは少し不安なところ…。
ポリエチレン製のまな板には、耐熱温度に近い温度に調節したお湯を用意。
どちらも両面をしっかり温めます。
お湯をかけて温めたあとは、水を満タンにした2Lペットボトルを3本上に置いて、約6kgの荷重をかけました。
まな板の反りは直ったのか
約3時間後に様子を見てみると…
この通り、3時間放置しただけで、どちらのまな板もすっかり反りが収まりました。
特にポリエチレン製のシート状のまな板の方は、まな板として使えないようなレベルまで反ってしまっていたので、元に戻ってくれて一安心です。
▼実験の様子を動画で見る
反りやすいまな板と反りにくいまな板がある?
林さんもおっしゃっていましたが、まな板の反りやすさはまな板の厚みによっても変わります。
シート状の薄いまな板の場合は反りやすい分、元に戻しやすいです。
逆に業務用まな板のような分厚いものは、一度反ってしまうとなかなか元に戻しにくくなります。
林さん「もし、どうしてもまな板に熱湯をかける必要がある場合は、反り防止のため、片面ではなく両面にかけてください。」
林さんからはこのようにアドバイスいただきました。
反りを直す作業は熱湯を扱うため注意が必要なのと、かなり時間もかかります。
まな板を火のそばに置かないなど、日ごろから注意するようにしてくださいね。
まとめ
今回はメーカーさんにもご協力いただき、まな板のお手入れ方法について解説してきました。
しっかりお手入れすれば、いつまでも使い続けることができるプラスチックまな板。
まな板の汚れや色移り、反りが気になるまま使っている…という方は、ぜひこちらの記事を参考に、お家のまな板をケアしてあげてくださいね。