ハウジーマガジンを運営するキッチン・雑貨の専門卸売り「クラスフィルグループ」で実験を担当するリケジョ。「何を買ったらいいの?」という悩みに応えるべく、商品を実験して徹底調査していきます!
毎日の料理に欠かせないフライパン。それだけに、食材がくっつくと結構なプチストレスになりますよね。
そこで今回、素材やコーティングの違う6種類のフライパンで「くっつきにくさ」を調べる実験をしました。フライパンがくっつく原因についても調べていますので、フライパン選びの参考にしてみてください。
今回、比較する6種類のフライパンの特徴
今回、くっつかないかどうかを比較するのは、フッ素樹脂やセラミックで表面コーティングされたフライパンから4つ、コーティングされてないフライパンを2つ、合計6つのフライパンを比較。
- 【1】フッ素樹脂加工 (コーベック チェリオット)
- 【2】マーブルコート(和平フレイズ マーブルコート)
- 【3】ダイヤモンドコート(タフコ ダイヤモンドマーブルALキャスト)
- 【4】セラミックコート(パール金属 軽いねセラミック)
- 【5】鉄製(タマハシ ネオキャスチール)
- 【6】ステンレス製(ビタクラフト オレゴン)
それぞれどんな特徴があるのか、まずは表面がコーティング加工されているフライパンから紹介していきます。
【1】フッ素樹脂加工のフライパン(コーベック チェリオット)
コーティング加工といえば、真っ先にフッ素樹脂加工を思い浮かべる人が多いかもしれません。お手頃な価格で手に入れやすいのもこのタイプ。
中でもこちらは、軽く扱いやすい点で人気のアイテムです。
ちなみに「テフロン加工」という言葉もよく耳にするかもしれませんが、テフロン加工とフッ素樹脂加工は、ほぼ同じもの。テフロン加工は、デュポン社(現ケマーズ社)により商標登録されている商標名を指しています。
【2】マーブルコートのフライパン(和平フレイズ)
マーブルとは大理石のことを指し、フッ素樹脂に大理石の粉を混ぜ込むことで耐久性をアップしたのが、マーブルコートのフライパンです。
表面の白い粒状のものが大理石の粉、マーブル。粒子が硬いので、フッ素樹脂加工だけのものより、フライ返しやヘラなどのキッチンツールとの摩擦に強いといえます。
【3】ダイヤモンドコートのフライパン(タフコ ダイヤモンドマーブル アルミキャスト)
フッ素樹脂加工にダイヤモンド粒子が混ぜ込むことで丈夫さをアップさせたのがダイヤモンドコートのフライパン。
こちらは、ダイヤモンドとマーブルがダブルで配合されてさらに耐久性がアップしたアイテム。
ちょっとわかりにくいですが、白い粒状のものがマーブルで、写真の緑色の矢印の先にある「青い小さな粒状のもの」がダイヤモンド。ダイヤモンドは硬い物質ですから、ダイヤモンドコートは、さらに摩擦に強いといえますね。
「フッ素樹脂加工」「マーブルコート」「ダイヤモンドコート」という名前が出てきましたが、ここまではどれも「フッ素樹脂加工」の仲間。くっつきにくいフッ素樹脂で、フライパンの表面を加工するという点は同じなんです。
次に紹介するのは、フッ素樹脂ではなく「セラミック」でコーティングされたフライパンです。
【4】セラミックコートのフライパン(パール金属 軽いねセラミック)
陶磁器などに使われるセラミック粒子で表面をコーティングしたフライパンです。セラミックは硬く摩耗に強いのが特徴です。最近では有害物質を含まない素材としてフッ素樹脂加工に変わり注目されています。
今回使用するアイテムは、真っ白でキッチンに映えると人気のフライパンです。
【5】鉄フライパン(タマハシ ネオキャスチロール)
熱伝導率がよく高温で一気に調理できる鉄製のフライパン。使い始めやお手入れに手間が必要ですが、うまく付き合えば一生使い続けることができるのが魅力です。
こちらのアイテムは「空焼き」がいらないのが特徴。鉄フライパン初心者でも使いやすいと人気になっています。
【6】ステンレスフライパン(ビタクラフト オレゴン)
ステンレスは丈夫でサビにくい素材。保温性にすぐれ、余熱で調理できることも特徴です。今回使用するのは、ステンレス調理器で有名なビタクラフトのフライパン。5層構造で、保温力の高さと熱伝導のよさを両立させたアイテムです。
「フライパンのくっつきにくさ」の実験の方法
くっつかないフライパンを調べるために、何をするのかというと………くっついたらすぐに破けてしま、そんな薄くて繊細な「薄焼き卵」を焼いて調べます。
くっつきにくさを比べるための実験条件
6つのフライパンで、同じ条件になるようにします。
- 油を引かない
- フライパンの中央が140度になった段階で卵を流し入れる
(デジタルサーモを用いて温度を計測) - コンロの火加減は、一定になるようにマスキングテープでマーキングする
6つのフライパンの中には、使う前に油を引く必要があるものが含まれていますが、今回は同じ条件にするために、全て油を引かずに薄焼き卵を焼いていきます。正しい使い方は後ほどご紹介するので、そこで油が必要かどうかも確認してください。
薄焼き卵実験の手順
実験の手順は以下です。
手順1.たまご1コを割り、菜箸でときます。
手順2.フライパンの中央が、140度になるまで中火で熱します。
手順3油を引かずに卵を流し入れます。
手順4.卵をフライパンにまんべんなく行き渡らせて焼きます。
手順5.薄焼き卵とフライパンの間に、フライ返しを入れて、くっついたかどうかを調べます。
手順6.薄焼き卵がくっついてないかフライパンから滑らせてみます。
手順7.フライパンを裏返して薄焼き卵をお皿に取り出してみて、くっつきにくさを確認します。
フライ返しを入れた時の様子とフライパンをひっくり返して薄焼き卵を取り出したときの様子を確認して比較します。
薄焼きたまごを焼いてくっつきにくさを確認した結果は
さっそくそれぞれのフライパンでの実験結果をみていきましょう。一緒に薄焼きたまごの仕上がりもチェックします。
フッ素樹脂加工フライパンのくっつき具合の実験結果
最初に実験するのは、フッ素樹脂加工のフライパン。まずはフライ返しを薄焼き卵とフライパンの間に入れてみます。
スルッと入り、薄焼き卵ははくっついていませんでした。
フライパンからお皿へのせるのもスムーズで、ひっくり返すとお皿の上にくっつかずに薄焼き卵がのりました。
マーブルコートのフライパンのくっつき具合の実験結果
マーブルコートのフライパンもくっつかず。するっとお皿に薄焼き卵がのりました。
ダイヤモンドコートフライパンのくっつき具合の実験結果
続いて、ダイヤモンドコートのフライパン。
こちらも、薄焼きたまごはくっつかず!フライパンからすっと離れました。
セラミックコートフライパンのくっつき具合の実験結果
次はセラミックコートのフライパンで実験します。
セラミックコートのフライパンを使うときには油を引くのが必須ですが、今回、油を引かずに薄焼き卵を焼いてみました。少しフライパン表面に吸い付いたような感じがありましたが、くっつかきませんでした。ただ、フッ素樹脂加工のように、さらりとお皿にうつせる感覚はありませんでした。
実験の様子は、こちらの動画でもくわしくチェックすることができますので合わせて確認してみてください。
鉄フライパンのくっつき具合の実験結果
次に、コーティングなしフライパンはどうでしょうか。まずは鉄製フライパンから。
焼けてきたら、そっと端からフライ返しを薄焼き卵の下へ入れていきます。
卵が破れないようそっといれたのにも関わらず、フライパンにくっついて破れかけ寸前! 薄焼き卵をすべてはがしてみましたが……
薄焼き卵をお皿にもうまくのらず……。薄焼き卵がかなりくっついて、キレイな薄焼き卵を焼くことはできませんでした。
ステンレスフライパンのくっつき具合の実験結果
最後はステンレス製のフライパンです。
焼き目部分がステンレスフライパンにくっついていて、フライ返しをそっと入れてもうまく取れませんでした。
薄焼き卵をお皿に移した後は、ご覧の通りです。
全体的に焦げ目がくっついていました。
6つのフライパンの実験結果まとめ
実験結果をまとめます。
<6種類のフライパンのくっついたかどうかの比較>
フライパンの種類 | くっついたか | くっつき具合 |
フッ素樹脂加工 | 〇 | スルッと薄焼き卵がはがれた |
マーブルコート | 〇 | スルッと薄焼き卵がはがれた |
ダイヤモンドコート | 〇 | スルッと薄焼き卵がはがれた |
セラミックコート | 〇 | 吸い付くような感触あったが、くっつかず |
鉄製(コーティングなし) | × | ところどころ焦げ目ができくっついた |
ステンレス製(コーティングなし) | × | 全体的にくっついた印象 |
鉄フライパンとステンレスフライパンは、油を使わなかったせいかやはりくっついてしまうという結果に。同じく油を引くことが必須のセラミックコートフライパンもくっつくかと思われましたが、こちらはくっつかないという結果になりました。
マーブルコート、ダイヤモンドコートを含むフッ素樹脂加工を使ったフライパン3種類は「くっつかない」という結果になりました。
フライパンがくっつく原因を素材別に調査
フライパンに食材がくっつくいてしまうのは、なぜなのでしょうか? まず、鉄製とステンレス製のコーティングなしのフライパンから見ていきます。
「鉄フライパン」がくっつく原因は?
やはり「油をひかなかったこと」がくっついた一番の原因ではないかと思い、油を引いて薄焼き卵を焼いてみました。
すると写真のように、焦げ目がついているもののフライ返しがすんなり入りくっつかないという結果に。鉄フライパンを使うときには、油を引くのは必須ということが改めて分かりました。
それ以外にも、鉄は非常に熱が伝わりやすい素材。そのため、強火で加熱しすぎるとすぐに焦げ付く原因に。また、手入れをおこたって鉄フライパンの表面に汚れがたまっていると、その汚れが焦げグセになることも。ただし、このときメラミンスポンジといったものを使うと油のコーティングまで落としてしまいます。まとめると以下のとおり。
<鉄製フライパンがくっつく主な理由と対策>
- 油がなじんでない
→調理前・調理後ともに油をしっかり引いてなじませる - 強火で加熱しすぎると食材が焦げ付いてくっつく
→強火で加熱しすぎず、フライパンの説明書に従う - 表面に汚れが残っていると、焦げグセになる
→鉄フライパン用タワシを使ってしっかり洗う
鉄フライパンは、毎回油を引いて使い続けることで、油が表面になじんみくっつきにくくなります。「鉄フライパンを育てる」とよくいわれるのは、こういった理由から。つまり買ったばかりのフライパンより育ったフライパンの方がくっつきにくいということ!
くっつきにくくするには、毎回調理前「油返し」、調理後「油を塗って保管」するのが必須。「油返し」というのは、多めの油を入れて加熱してなじんだら余分な油を取り出すという作業です。
この調理前の油返しの作業で、予熱をちゃんとすることも大事。ただ鍋底が厚い鉄フライパンは、強火で加熱し続けると食材が焦げ付くこともあるので注意が必要。鉄フライパンは、アイテムによってクセが違うので、初めは説明書をちゃんと読んで使うことが「食材をくっつかせない」秘訣です。
そして調理後には、タワシなどで汚れを落とすのも大事です。こびりついた微細な汚れが焦げグセになってしまうことになります。
「ステンレスフライパン」がくっつく原因は?
ステンレス製のフライパンも調理前に油を必ず引く必要があります。それからもう1点、フライパン担当のバイヤー情報によると「ステンレスは熱が伝わりにくい素材。だから予熱が絶対必要」とのことと。この予熱不足が食材がくっつく原因とのことです。
「予熱が十分か、どうやって確認すればいいの?」と疑問に思いますよね。今回使用したビタクラフトのフライパンでは、水滴を落としてみてコロコロ転がる状態が、予熱OKのサインとされています。
上記のように、水滴が転がる状態にしてみました。火をつけてから目安は約2分ほど。その後、油を引いて薄焼き卵を焼いてみました。
このとおりフライ返しが入ってくっついていませんでした。お皿にもスッとうつせ、きれいな薄焼き卵が焼けました。
またステンレス製のフライパンは調理前に油を引くことも必須。ステンレス製のフライパンは表面に加工がないので、油をなじませてコーティングすることで、食材がくっつくのを防ぐことができます。
またステンレスは、熱がいきわたりにくい素材である一方、冷めにくいという性質もあるので、強火で使い続けると食材が焦げるもとに。そこで中火弱火で調理しましょう。
<ステンレスフライパンがくっつく主な理由と対策>
- 予熱不足でくっつく→調理前に水滴を落として予熱確認をする
- 油分が足りないのでくっつく→調理前に油をひく
- 強火だと焦げ付く→中火~弱火で調理する
「セラミックコートのフライパン」がくっつく原因は?
今回、油を引かず実験してもくっつきませんでしたが、セラミックコーティングのフライパンも油を引くのは必須です。その理由は、セラミックとは実は陶器と同じ素材。表面に微細な穴が空いているため、油を引かずに調理すると穴に食材が入り込んでくっつく原因になります。実験で「吸い付くような感じがした」というのはこの穴のせい。
セラミックフライパンも油を少量引いて実験したところこのように、フライパンを傾けるだけでスルリと薄焼き卵をお皿にのせることができました。
また、セラミックは熱が伝わりやすい素材であるため、強火で加熱はNGです。すぐに食材が焦げつく原因にもなります。またセラミックは温度変化に弱いので、強火で急激に加熱したり、温かい状態で水に浸すとコーティングが劣化する原因に。これが次第に食材がくっついてしまう原因になるのです。
<セラミックフライパンがくっつく原因と対策>
- 油を引かないとくっつく→油をなじませて調理する
- 強火で加熱すると食材が焦げる→中火~弱火で調理する
<セラミックコーティングを劣化させないための対策>
- 温度変化に弱い→熱いまま水にさらさない、強火を使わない
- 強火で使うと膨張・収縮を繰り返す→中火~弱火で使う
セラミックは摩耗に強い素材ですが、コーティングフライパンである以上、使っていればいずれは劣化します。劣化したらどうしても食材がくっつくようになりますので、買い替えが必要です。
セラミックフライパンは、下記の記事でくわしくご紹介しています。
>>意外に知らない「セラミックフライパンの世界」寿命やお手入れ方法は?
「フッ素樹脂加工のフライパン」がくっつく原因は?
そもそもフッ素樹脂加工のフライパンに食材がくっつかなのは、フッ素樹脂に「はじく性質」があるため。ただこのフッ素樹脂加工は摩耗に弱いため、目に見えない小さなキズがついただけでもはじく力が弱くなり、だんだんと食材がくっつきやすくなってしまいます。そのためいかに傷をつけないかがカギ。
また、フッ素樹脂加工は高温で使うと化学変化を起こします。そのため、高温で溶けるため、強火で使わない・空焚きをしないことが大事。またセラミックコーティングと同じで、コーティングフライパンは、急な温度変化で膨張・収縮を繰り返すとコーティングに微細なヒビが入り劣化するもとになります。
<フッ素樹脂加工を劣化させないための対策>
- 金属ヘラを使わない
- 金属タワシやメラミンスポンジを使わない
- 空焚きしない
- 調理後、熱いまま水につけない
フッ素樹脂加工は劣化すると、元通りには戻せません。フッ素樹脂加工のフライパンの寿命は約1~2年とされています。くっつくようになってきたら買い替えが必要です。
「マーブルコート・ダイヤモンドコート」がくっつく原因は?
フッ素樹脂加工の「摩耗に弱い」という弱点を補うため、フッ素樹脂にマーブルを混ぜたのが「マーブルコート」、ダイヤモンド混ぜたのが「ダイヤモンドコート」です。
マーブルコートやダイヤモンドコートもフッ素樹脂加工の仲間なので、扱う上で気を付ける点は同じです。ただ摩耗に強いメリットとして「金属ヘラOK」と書いてあることもありますが、くっつきにくさを長持ちさせるためには、金属ヘラは使わないようにするほうがよいでしょう。
マーブルコートのフライパンの寿命は約1~3年、ダイヤモンドコートのフライパンの寿命は約2~3年とされています。こちらも、くっつくようになってきたら買い替えるようにしましょう。
くっつくストレスなく、毎日の料理を楽しもう
ひと口に「くっつく」と言っても、原因はさまざま。フライパンに目立ったキズも劣化もないのに、食材がくっつくという場合は、使い方に問題がないか振り返ってみましょう。
どのフライパンも手順やポイントを踏まえれば、魅力を生かした調理ができます。ぜひ使い方をマスターして、くっつくストレスなく料理を楽しんでくださいね。
※この記事は、ご紹介しているアイテムのうちいくつかのアイテムについては、メーカーより商品提供をいただいて執筆しています。