日本の食文化にとっても馴染みの深い調味料-「味噌(みそ)」。
味噌は、古代中国の醤(しょう)が起源とされていますが、日本では飛鳥時代の頃から食べられてきたとされています。
毎日お味噌汁などで口にすることも多く、日本を代表する発酵調味料と言ってもいいですね。
味噌に含まれる乳酸菌は、腸内を弱酸性に保ち、悪玉菌を減らしつつ善玉菌を増やすという働きを持っています。
腸には体内の免疫細胞のうちのおよそ6割~7割が集中しているとされているため、”免疫アップ”が叫ばれる昨今、積極的に取り入れたい食材の一つでもありますね。
今回は、味噌の保存期間や保存場所についての注意点や、味噌を美味しく使い切るアイデアなど、味噌を積極的に摂りたい方に役立つ知識をお伝えします。
「開封したらいつまでに食べればいいの?」「味噌を使い切れないんだけど……」という疑問やお悩みに対して、解決になればうれしいです。
目次
味噌の賞味期限・保存期間について
スーパーなどで味噌を買い、パッケージを見ると、必ず「賞味期限」が書かれています。
この賞味期限とは、「美味しく食べられる期間」のことで、この期限を過ぎたら食べられなくなるわけではありません。
昔ながらの製法で作られた味噌であれば、3〜5年は食べられるものもあります。
熟成されて美味しくなる味噌もあるため、賞味期限が切れたからといって捨ててしまうのはもったいないといえるでしょう。
昔ながらの味噌は腐らないって本当?
そうなると「味噌は腐らないの?」と不思議に思う方もいらっしゃるかもしれません。
でも実は、昔ながらの製法で作られたまじりっ気のない味噌は、麹菌がいつまでも醸成を続けます。麹菌が元気なうちは悪い菌が繁殖しにくいので、ずっと食べることができるのです。
しかし、これはあくまで「昔ながらの製法」で作られた味噌に限ります。
減塩味噌、だし調味料など調味された味噌は注意が必要
減塩味噌、だし調味料など、現代では調合された味噌も売っていますよね。
最近は液体味噌なども販売されていて便利なのかもしれませんが、長期保存ができない点ではデメリットです。
ここでの話はあくまでも、一般的な昔ながらの製法で作られたお味噌の話だと理解しておいてくださいね。
美味しさを保つには、保存上の注意が必要
ただ、昔ながらのお味噌なら、必ず熟成して美味しくなるというわけではありません。その一方で、賞味期限を過ぎると味が落ちる味噌もあります。
香りがない、しょっぱい、甘みがないなどと感じる場合は、美味しい味噌の時期が過ぎてしまった証です。
味が落ちるだけならいいのですが、味噌は、保存状況や使い方次第で青や黒のカビが生えてしまうこともあります。
異常を発見した時は、賞味期限に関わらず、すぐに処分してくださいね。
味噌の正しい保存方法が知りたい!
一般的にスーパーなどで手に入るお味噌は、プラスチックの容器やビニール袋などに入って売られています。
常温で売られているので、開封するまでは常温で保存しておいてもOKです。
ただ、問題は開封後。お味噌は基本的に常温で保存できるのですが、常温に置いておくと発酵が進んでしまいます。
開封後に味噌の風味を保つために
発酵が進めば風味が変化し、美味しくなくなる可能性もゼロではありません。
そのため、冷蔵庫へ入れて味や風味をキープさせます。麹菌は20度以下では活動が弱まるため、冷蔵庫へ入れれば風味が保たれるからです。もし、風味にこだわらない場合は外へ出しておいても大丈夫ですが、その他の雑菌などが入り込まないように、清潔に扱うように注意しましょう。
味噌の開封後の正しい処理とは?
ここでは、プラスチック容器に入っているお味噌の場合を例に、保存方法をご紹介します。
ビニール袋に入った味噌の場合は、清潔な保存容器に入れましょう。
私の場合はアルコール消毒をした容器に味噌を入れて保管しています。
こちらの場合も、乾燥しないように表面をラップで覆ってください。
薬味味噌などの保存期間、保存方法は?
ねぎ味噌やゆず味噌など、スーパーなどでも薬味を混ぜた薬味味噌をよく目にします。
瓶詰めなどに入って売っているものが多いですが、基本的には商品の表示に従って管理しましょう。
開封後は、塩分量、水分量などで痛みやすさは変わってきます。たいていの商品が「お早めにお召し上がりください」と記載してあると思いますが、「開封○日後までは食べられる」と、ここで言い切ることはできません。
なるべく市販のものはすぐに食べてしまうのがベストです。
匂いや見た目に変化があれば、食べるのをやめてください。もし、長期で保存したいなら、ラップで包んで冷凍すると安心です。
それでも、2〜4週間のあいだに食べ切るようにすると、風味が落ちずに美味しく食べられるでしょう。
味噌の保存におすすめの容器の選び方やポイント
ここからは保存容器の選び方を見ていきましょう。
お味噌を保存するときには、以下の点に注意して選んでくださいね。
- サイズの目安
- 密閉できるかどうか
- 使いやすい形状
- 保存に適した素材

サイズの目安
空気に触れる部分が多いと、味噌が乾燥したり、風味が落ちたりします。そのため、サイズはこまめに小さいものへ移行させるのがベストです。
密閉できるかどうか
空気が触れるのは味噌にとってよくないので、ピタッと蓋が閉まる容器に入れるといいでしょう。ただし、手作り味噌などは発酵が続いているので、空気の逃げ場がない容器では爆発する可能性があります。
完全密閉ではなく、きちんとフタが閉まる程度の物を選ぶといいです。
使いやすい形状
これは好みかもしれませんが、冷蔵庫内に入れて保管するなら箱状のものが一番かなと思います。重ねて保管できるスタッキングタイプのものなら、味噌の種類ごとに保管することも可能です。マスキングテープなどで中身を書いておけば、容器の中身も一目瞭然です。
また、取っ手がついたタイプの容器も便利です。お味噌は重く、容器も大きいので、片手でつかもうとすると滑ってしまうことがあります。その点、取っ手のついている容器なら、片手でもラクラク取り出せますね。
お宅の冷蔵庫事情や保存している味噌の種類、味噌の使用頻度などに合わせて、使い勝手のいいように保存容器も選んでみましょう。
保存に適した素材
保存容器の素材は、密閉できるタッパーや陶器、琺瑯やガラスなどがおすすめです。琺瑯やガラスであれば、色や匂いが移りにくいです。衛生的で長期保存にも向いています。プラスチックのタッパーは手軽ですが、色移りなどがするのでお味噌専用として使う覚悟をしてください。
味噌の保存に向かないNG素材とは?
また、一点、注意点があります。それは、「金属製のものは避ける」ということです。味噌には塩分が含まれるので、金属製のものは錆びる可能性があります。変質や中毒をさけるためにも金属製の容器は避けましょう。
祖母直伝!自分で調合を楽しむ”味噌ハック”
また、いくつかの味噌を使い分けている場合は、1つの容器にまとめてしまうという手もあります。白みそや麦味噌、赤味噌など、お味噌には様々な種類がありますが、混ぜて使えば自分だけの合わせ味噌もつくりやすいです。
実はこれは、わたしの祖母がやっていた“味噌ハック”。お料理好きの祖母でしたが、いつもお味噌は一つの容器にまとめて入れていました。お味噌汁や煮物、炒め物の味付けまで、味噌を調合しながら味付けしていたんですね。
その日の気分で味噌を楽しむ
いつも同じ容器を取り出すだけでいいので、「あれ?白みそは何処に行った?」と探すこともありません。
「今日は麦味噌の味噌汁にしようかな?」「八丁味噌を隠し味に入れてみよう」など、その日の気分でお料理がしやすくなります。毎日のお味噌汁の味にもバリエーションを生むことができて、飽きずにお味噌を楽しめるかもしれません。
捨てる前に要チェック!古くなった味噌の活用方法
味噌が古くなってくると、乾燥したり、風味が弱くなったりします。お味噌汁をつくっても、なんとなく物足りない……。そんなふうに感じることもあるかもしれません。
でも、古くなったからと言って捨てるのはもったいないですよね。そんなときは、味噌漬けをつくってみましょう! 味噌漬けは、味噌に直接食材を漬け込んでつくる調理法で、家庭にある材料で簡単に作ることができます。
野菜やお肉など、試していただきたいものをいくつかご紹介しましょう。
【活用レシピ1】味噌床でつくるお漬物
ぬか漬けのように床をつくって漬ける方法です。手軽で簡単。常備菜にもなります。
<味噌床でつくるお漬物>
- まずは味噌床をつくります。お味噌が100gに対して、酒・みりんを各大さじ2入れて混ぜます。あまり厳密にならなくても大丈夫です。(お味噌に甘みが少なく、甘いお漬物にしたい場合は、様子を見ながらお砂糖を入れてみてください)
- しっかり床を混ぜ合わせたら、味噌床のできあがり!
- キュウリやキャベツなど、ぬか漬けのように入れて漬け込みます。(水が出て味が薄まるので、漬ける前には簡単に塩をまぶし、水気を抜くと理想的)
- 2〜3日置くとしっかりと漬かります。お好みで1週間ほど漬けてもOKです。
- 食べるときには味噌をしっかり水で落として、一口大に切っていただきます。
味噌床にはお好みで唐辛子などを入れても美味しいです。チーズやお豆腐なども漬けると味わいが濃厚で、おつまみにぴったりの一品ができあがるでしょう。
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ただ、水っぽくなると腐敗しやすくなるので、ぬか床のように何度も使うことはできません。1度お野菜を漬けたら、その漬けた後のお味噌はスープにしたり、炒め物や焼きうどんなどの味付けに使ったりして食べきってください。
【活用レシピ2】数時間で完成!セロリの味噌漬け(浅漬け)
数時間ほど漬けるだけでできあがる浅漬けの作り方です。味噌を使って今晩のおかずをつくりたい!という方にぴったり。
<セロリの味噌漬け(浅漬け)>
- まずは下準備から。セロリ1本に対し、お味噌は大さじ1〜2杯が目安です。たくさん入れすぎると味が濃くなるので、「少ないかな?」と、思うくらいの味噌ダレをつくりましょう。甘みの少ないお味噌の場合は、お味噌大さじ1に対し、お砂糖を小さじ1ほど入れてください。
- セロリは筋を取って斜め切りにします。
- ポリ袋にセロリと味噌ダレを入れたら、もみもみしてなじませます。
- 味が足りない場合は、味噌や砂糖を追加しましょう。コクが足りないと感じる場合は、豆乳やヨーグルトを小さじ1程度入れて味を見ます。
- 冷蔵庫で1〜2時間漬けたら出来上がりです。深めに使ったものがいい場合は、一晩置いてみるなど浸け時間を長くしてみてくださいね。

もし、お味噌がパサパサして漬けづらい場合は、水分を足すといいです。豆乳やヨーグルトだけでなく、お水やみりんを少量ずつ入れて伸ばしてもいいと思います。セロリの他にも、キュウリや玉ねぎ、トマトなどでも試してみてください。アクセントにごまやチーズを入れても美味しいです。
【活用レシピ3】メインおかずにもぴったり!豚肉の味噌漬け
もしものときの1品になるお肉の味噌漬けもご紹介します。冷凍保存もできるので、我が家では一つ作っておいて、もう一品ほしいとき、メインのおかずに困ったときなどに活用しています。
<お肉の味噌漬け>
- 150〜200gの薄切りの豚肉を用意します。
- 味噌、酒、みりんを各大さじ1、おろしにんにくを1/2かけ程度入れて混ぜます(おろしショウガを1かけ程度入れてもOKです)
- ロースのお肉に味噌ダレを伸ばします。多すぎると塩辛くなってしまうので、少なめに伸ばすのがポイントです。(実は、写真の量では少々多すぎました……)
- ビニール袋などに入れて30分〜1時間程度寝かせます。2週間ほどなら冷凍保存することも可能です。
食べるときは、えのきやキャベツなどと一緒にホイル焼きにしたり、フライパンでシンプルに焼いたり、スープの具にしたりしていただきます。味が濃くなってしまったら、刻んで野菜と炒めるといいでしょう。
【活用レシピ4】絶品おつまみにもなる「黄身の味噌漬け」
試したことのある人も多いかもしれません。黄身の味噌漬けです。同じ要領でチーズなどを漬けることもできます。
<黄身の味噌漬け>
- 卵を冷凍させておきます。
- 味噌をタッパーなどの容器に詰めて、黄身の大きさ程度にくぼませておきましょう。
- 冷凍した卵から黄身を取り出し、ガーゼに包んで味噌のくぼみに置きます。味噌をかぶせておきましょう。
- 冷蔵庫で保管し、4日目あたりからができあがりです。
こちらももしお味噌がパサパサしているようであれば、みりんで伸ばしてもOKです。卵は生のままでも漬けられますが、冷凍したほうが、黄身がまあるく仕上がります。
【活用レシピ5】漬けるだけ!かんたん薬味味噌のつくり方
薬味味噌はフライパンで加熱して作るレシピがほとんどですが、手間を省いて味噌に漬け込むだけでも美味しくいただけます。
<味噌に漬けるだけの薬味味噌>
- 大葉、しょうが、みょうが、ねぎ、にんにく、唐辛子など、お好みの薬味を刻んでいきます。ポイントは、水気をしっかり切ることです。濡れている場合はキッチンペーパーなどでしっかり水気を取りましょう。
- 刻んだお味噌と和えます。味噌の量は、薬味のボリュームの半分くらいです。あとはお好みで調整してください。
- しっかり和えたらできあがりです。清潔な容器で1週間〜10日ほど食べられます。

加熱していないので日持ちは短めです。ただ、簡単に作れる手軽さがあり、何より薬味の風味が落ちません。
もし水が出てきたら、こまめにすくって捨てましょう。痛む原因になるので、とにかくしっかり水気を切ってくださいね。
もっと味噌料理を楽しもう
保存の仕方に少し気をつけるだけでも、きっと今までより味噌の美味しさが長続きします。
せっかくなら風味を損なわずに上手に保存して、一番美味しい時期を逃さないうちに使い切りたいですね。
お味噌は日本人にとって、とっても身近な調味料。腸内環境を整えてくれる健康にとっても重要な発酵食品でもあります。
味噌汁だけでなく、色々な楽しみ方をしながら、ぜひ毎日の食事に積極的に摂り入れてみてください。
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