家事のコツや収納術、インテリアやおでかけにまつわる話などを通して「わたしらしい暮らし方」をご提案します。
年末恒例の家事の一大イベント「大掃除」。年末は仕事もプライベートも忙しくて、とにかく「疲れる」「気が重い」と思っている人も多いですよね。
そこで今回はクリンネストであり、住宅収納スペシャリストでもある藤野ことさんに、疲れずに大掃除をするコツを教えていただきました。
アンケートで判明! 大掃除が疲れる理由は?
今年11月に「大掃除で面倒な場所・やっている場所ランキング」というアンケートを実施したところ、一緒に聞かれたのは、「やらなくちゃいけないけど、やりたくない」。そんな大掃除に関する葛藤の声でした。
実際、61.8%の人が大掃除にネガティブなイメージを持っていることが判明しました。その理由をまとめてみました。
汚れている場所を想像するだけで嫌になるから
大掃除でしか掃除をしない場所、つまり普段は掃除しない場所ということです。つまり……。
「汚いところを見たくない」(20代・2人暮らし)
「汚れが溜まりすぎて、落ちにくい。掃除にすごく時間がかかる」(30代・5人暮らし)
アンケートで最も多かったのが、「汚れがひどいところを掃除をすることに、気が重くなる」という意見。たしかに、普段動かさない棚の下のホコリの量を想像するだけでゾッとしますよね。
とにかく寒いから
最近温暖化が叫ばれているとはいえ、師走は寒い時期。地域によっては雪が降る場合も。
「窓、網戸を掃除するのが、寒い」(50代・2人暮らし)
「寒い時期は特に、水を使う掃除はしたくない」(40代・3人暮らし)
大掃除の定番、玄関や窓は寒いのは確か。しかもそれらを拭き掃除するときに、水は必須。暖冬とはいえ、寒いものは寒い!ですよね。
忙しくて時間がない
仕事に家事に子育てに、普段でも忙しいのに師走となるとなおさらという声も。
「掃除する場所がいっぱいあって、時間が掛かる。でもその掃除時間を作るのが難しい」(40代・5人暮らし)
「1日で終わらない……。気になるところを徹底的にしようとすると、時間が足りないし気力が持たない。」(30代・4人暮らし)
とにかく忙しい12月。「掃除しなきゃとは思うけど、時間がない!」という人多数。大掃除って締め切りがある家事のひとつ。締め切りに追われている感としなくちゃいけない義務感から、精神的ハードルが上がるのかもしれません。
旦那にイライラする
旦那さんとの連携がうまくいかないから、という夫婦共同作業がメンドクサイという意見も。
「高いところが届きにくく旦那の手伝いが必要。でも言うのが面倒……」(30代・4人暮らし)と二人の関係が垣間見える声も。逆に
「何をどこからするか決める前に、旦那が張り切るのが嫌だから」(20代・3人暮らし)とやる気満々の旦那様に辟易(へきえき)する声も。
夫婦同じ温度感で大掃除にかかれればハッピーですが、そうは問屋が卸さない、大掃除の罪深いところでもあります。
子供がいて進まない
子どもがいると思い通りにいかないのは、大掃除の時も例外ではありません。
「子供が小さいので、夫婦どちらかが相手しなければならず、思うように進まないため」(20代・3人暮らし)
「一番家を汚している子供が、大掃除を退屈に思ってしまってはかどらない」(30代・4人暮らし)
年末ワクワクソワソワしている子どもが手伝ってくれない!余計に散らかすというのは、子育てをしている人ならあるある問題です。「子育て」と家事の一大イベント「大掃除」。両立させるのは本当に大変!
そもそも掃除が嫌い
そもそも掃除が大嫌いという元も子もない声も聞かれました。
「そもそも掃除が大嫌いだから。ゴミ収集があるうちに、寒くなる前に前倒しで……といろいろ思うのですが、思うだけになってしまっています」(40代・4人暮らし)
この思うだけ、気が重くなってしまって結局やらないは、大掃除あるあるです。さらに
「掃除が得意じゃないから。それで先延ばしにするとどんどん汚くなる……。」(30代・3人暮らし)
とエンドレス地獄に陥っている人も。
最終的にアンケートに答えてくれた意見を集計してわかったのは、とにかく「大掃除はめんどくさい」ということです。
クリンネストが伝授! 疲れず頑張らない大掃除のコツ
62%の人が、マイナスのイメージを持つという大掃除。ではどうすれば、いいのでしょう?
家事の時短をテーマに、住み心地のよい住宅を整理や掃除の観点から提案するクリンネストの藤野ことさんに「疲れずできる、頑張らない掃除のコツ」を教えていただきました。
藤野こと
整理収納アドバイザー、住宅収納スペシャリスト、クリンネスト2級。「家事は素早くラクに!」をモットーに、家事が時短になるテクや片付けに関する記事を『ESSE-online』『収納マガジン』などで多数執筆中。
【コツ1】自分が気になるところだけやる
大掃除だからといって隅から隅までを徹底的にキレイにしよう思わず、「ここだけやる!」と決めてしまうのもひとつの手。でも「その気になる場所が全部」という人や「ここだけ」を決められない人に最低限やるべきおすすめの場所はどこなのでしょう?
藤野さんにうかがったところ、ここだけ大掃除に3大おすすめ場所は、以下です。
- ドアノブと表札
- ランプシェード
- 冷蔵庫
「玄関は福を呼ぶという意味でも、年末大掃除にやっていただきたい場所です。でも玄関の床も壁もドアもとなると結構大変ですよね。そこで、しめ縄を飾るときにできる“ちょこっと玄関掃除”としておすすめなのが、表札とドアノブだけを掃除することです」と藤野さん。理由をうかがうと、「表札はお客様や神様を迎えるため、ドアノブはみんなが触る場所なので除菌をしていただきたい場所。どちらも数分でできるので気が重くならないと思います」。
次に、藤野さんが“ここだけ大掃除”におすすめするのが、ランプシェード。「ランプシェードは、普段の掃除ではなかなかすることがない場所。でもホコリがたまって部屋に舞うと健康にもよくありません。ランプには虫がついてることもあって、放置すると衛生的にも心配な場所です」と藤野さん。ランプシェードは、下記の記事でのアンケートでも「忘れがちだけど、やった方がよい場所」としてランクインしています。
>>主婦100人に聞いた、忘れがちだけど、やった方がよい場所TOP10
そして、冬のこの時期にぜひ掃除してほしいと藤野さん語るのが、冷蔵庫です。「気温が高く食材の傷みが早い夏は、冷蔵庫の掃除をする時期には向いていません。でも年末は、帰省のために冷蔵庫を空にしたり、正月用料理を作るため食材の入れ替えが発生する時期です。つまり、冷蔵庫掃除をする最もよいチャンスといえます。」中を空にするのが、大変な冷蔵庫。言われてみれば一年を通して、食材が切り替わるのは年末しかなさそうです。年が改まるこの時期、賞味期限切れかどうかもチェックしやすいというメリットも。気が重くても冷蔵庫だけは掃除をした方がよさそうです。
【コツ2】普段も掃除する・できるところはやらない
普段の掃除でやっているところはやらないと決めてしまうのもよいとのこと。例えば、棚上。「多少ホコリがたまっていても、普段の掃除でも十分できる場所です」と藤野さん。
「あそこもここもやろうではなく、普段の掃除でやっている場所・できる場所はやらないと考えを切り替えるのが、大掃除を大変にしないコツです。キッチンのシンク下や引き出しは、大掃除で一気にやると大変。毎月1段ずつローテーションを組んで少しずつやるのも◎。キッチンの壁や引き出しの取っ手も、普段気になったときにサッと拭くことを習慣付けるとよいでしょう」。
【コツ3】キッチンの換気扇はやらない
大掃除をやるのが面倒な場所ランキング1位に輝いた「キッチンの換気扇」。大掃除の最難関といえる場所ですが、藤野さん曰く、大掃除ではやらない方がよい場所なのだそうです。
「レンジフードの油汚れは、寒い季節には固まってしまうので落ちにくいんです。しかも、お掃除にはお湯を使うのがベター。油汚れを効率的に落としたいなら、ウエスや布にお湯をしみ込ませて、汚れをゆるめる必要があるのですが、冬だとすぐに冷めてしまいます。」と藤野さん。確かに、何度もお湯を温めると光熱費もかかってしまいます。もう冬はあきらめて、温かくなってからやるのがよさそうです。
【コツ4】窓や網戸はやらない
キレイな窓から注ぐ日差しは、気持ちいいもの。新年にはキレイにしたいと思う場所で、大掃除といえば……の定番の場所ではあるものの、実は結構、重労働。寒いし、掃除するのに気が重くなる場所のひとつです。
「窓や網戸も温かい季節にやる方が、掃除がはかどる場所です」と藤野さん。「寒くてやるのがつらいなら、『大掃除をやらない』と決めてしまえばいいんです。しかも、冬は雪がふったり、窓が結露をしたりして、キレイにしても汚れやすい季節です。大掃除で徹底的にやらず、サッと拭く程度にとどめるか、リビングの窓やベランダに続く窓など気になるところだけにとどめましょう。」
【コツ5】汚れにくくなるような工夫、“予防掃除”をする
「汚れにくくなる工夫、いわゆる“予防掃除”は、ぜひ取り入れてください」と藤野さん。予防掃除の例をあげていただきました。
- レンジフード:フィルターを貼る
- 排水口:ゴミ受けをステンレス製に変更
- カビの生える隙間:カビ防止テープをはる
- 風呂:「風呂用くん煙剤」を定期的にたく
レンジフードフィルターを使っている方は多いと思いますが、それ以外にも“予防掃除”を取り入れられる場所はたくさんあると藤野さん。「おすすめは、風呂のドアの隙間や洗面台の端っこにカビ防止テープをはることです。隙間掃除を、カビ防止テープを貼ってはがすという作業に変えることができます」。
それ以外にも、ヌメヌメ汚れを見るのも嫌だとアンケートでも声があがっていた、キッチンやお風呂の排水口。排水口のゴミをキャッチするフィルターだけでなく、カビが生えにくいステンレス製の排水口に変えてみるのも手。
「とにかく掃除をしなくて済むよう、あらかじめ手間を省くような工夫をしておくことは大事。そうするとそこは大掃除しなくて済む場所に変わります。」と藤野さん。今回大掃除するなら、掃除をするだけでなく、来年のために予防をするようにしましょう。
ほったらかし洗剤を使う
放置して汚れを落とす「ほったらかすだけの洗剤」を使うのもおすすめ。
「私は、木村石鹸の『お風呂まるごと洗浄剤』という洗剤を使っています。残り湯ににこれを入れて追い炊きをして放置するだけで、バスタブや風呂釜をきれいにしてくれるという洗剤です。それに風呂イス、洗面器、風呂フタなども入れて一緒に掃除できる点が優秀!」
と藤野さん大絶賛の品。少し高い気もしますが、「ほかの同類の洗剤も使いましたが、これが一番汚れが落ちる!」とコスパがいいのだそう。ぜひ試してみてください。
また編集部スタッフ全員が愛用している「ほったからし洗剤」もあります。その名も「かびとりイッパツ」というアイテム。
とにかく、お風呂の床や壁、キッチンの隅に生える黒カビに塗って、放置するだけでカビがとれるという洗剤です。
「スプレー類などいろんな洗剤を試してきましたが、これが一番落ちる上にラク。ほかの洗剤にありがちなツンとしたニオイもほとんどしないのも◎」と編集部ひらこ。
掃除が大変なところは業者を使う
業者を使うのもおすすめと語る藤野さん。「ぎっくり腰をしてから、風呂の掃除がつらくなったのがきっかけで、数年前からお風呂掃除を業者に頼んでいます。」
はじめは贅沢かなと感じたそうですが、一度頼んだらコスパがとてもいいと感じたのだそうです。「風呂掃除は屈んでゴシゴシしたり、背伸びしたり、風呂イスなど小物を持ち上げたり、いろんな動作をしなくてはいけない掃除が本当に大変な場所。私も実際、お正月いつも腰が痛いといっていたんです。でも業者に頼んで、その大変さはゼロに。しかも、自分ではできないほどキレイになるので、お値段以上と感じました。」
特に藤野さんが感動したのが鏡のウロコ。鏡のウロコは小まめに掃除しても水アカが付いて掃除が大変な場所です。でも業者にお願いすると、キレイになるだけでなく、1年たってもあまりつかないんです。」
1年に1回頼むだけでも会員割引がきくといったサービスもあるそう。気が重いなら、あきらめて年明けに業者に頼んでみるのもいいかもしれません。
「今年はもうやらない」と決めてしまう
最後に藤野さんからアドバイスいただいたのは、「いっそやらないという選択肢も考えて!」ということでした。
「先ほども窓や網戸が寒くてつらいなら『やらない』と決めてしまえばいいといいましたが、『やらなくちゃ!』と思うから気が重くなり『できない』と考えるから罪悪感も芽生えてしまう。考え方を変えて、『やらなくちゃ!』『できない』ではなく自分の意志で『やらない』と決めてしまえば、心もラクになります」と藤野さん。
「徹底的にではなく、できるところだけする。『やらなくちゃ!』ではなく『やらない』とポジティブに変換するだけで、疲れる大掃除ではなくなります」と藤野さん。
義務感から解放されたら、意外に大掃除がはかどることもあるのだそう。気持ちの持ちようが大切ということです。
結局、疲れる大掃除を今年はやる予定?
とにかくマイナスイメージも多い大掃除。藤野さんに「疲れない大掃除のコツ」を教えてもらったところで、主婦100人に、2023年の今年、大掃除をするつもりかどうかもアンケートで聞いてみました。結果は以下の通り。
2023年大掃除はやるつもりですか?
- 年末に大掃除をする予定……23.5%
- 年末に大掃除をしないつもり……53%
- まだわからない……23.5%
なんと53%の人が、年末に大掃除をやらない予定だと判明。その内訳は「年末以外の時期に大掃除をやっている」が20.6%、「大掃除をやっていない」が32.4%となりました。まとめてやるのではなく、分散化が進んでいるようです。
残り今年も一週間。大掃除をやるかやらないか、考えるだけで疲れているなら、教えてもらったコツを参考に“がんばらない大掃除”“ちょこっと大掃除”をしてみてくださいね。
<調査概要>
- 調査手法:オンラインアンケート
- 調査期間:2023年11月1日(水)~11月13日(月)
- 調査対象:30代~60代の男女
- 有効回答数:106人