自分でできる着物の正しい染み抜き方法を和裁士が解説

最近は着物を着る機会が少なくなりましたが、それでも七五三や冠婚葬祭で着物を着ることはありますよね。

着物を着慣れないまま外出すると、気づかない間に汚れがついていることがあります。
外出先でも、簡単な染み抜きの方法を知っているとすぐに応急処置ができますよ。

ちょっとしたシミは、正しい染み抜き方法を覚えておいて、自分できれいに落としてみましょう。

着物のシミを自分で落とすときに気を付けること

着物を着たまま飴を食べる男の子
着物で食事をしたとき、醤油やコーヒーなどをこぼしてしまいシミがつくことがあります。
また、天候が悪い日だと外出先で着物の裾に泥汚れがついてしまい、シミになってしまうことも。

汚れがついてすぐであれば、シミの種類によって自分できれいに落とせるものもあります。
染み抜き方法は汚れの種類によって異なるので、汚れの種類を見極めて自分で染み抜きをしてみましょう。

ここではまず、自分で着物の染み抜きをする前に知っておきたい注意点をご説明します。

セルフで染み抜きしない方がいいケースは?

着物に関わらず、衣類にシミがついてしまうことは多々ありますよね。
シミの種類や原因によっては、プロの手に任せた方がいい場合もあります。
例えば、

  • シミの原因がわからないとき
  • シミが広範囲にわたるとき
  • シミがついてから時間が経っているとき
  • カビなどが原因のシミ
こういったケースは、クリーニング業者や染み抜き専門業者にお任せしましょう。

シミの原因がわからないときやシミがついてから時間が経っているときは、決して自己判断で染み抜きをしないように。
シミの原因がわかっていても、広い範囲でシミが付いている場合は注意が必要です。

特に着物の場合は、乾燥させるときに布地が縮んでしまうことがあるので、自分で染み抜きするのは危険だと覚えておきましょう。

また、少しでも洗剤成分が残ると、新たなシミができる可能性があります。
上記の場合は、必ず専門店のクリーニングに出しましょう。

「正絹」の着物は要注意

正絹の着物の布地
着物の中でも、絹織物などは大変高価なので、間違った判断で染み抜きをして失敗した場合、取り返しがつきません。

絹100%の素材である正絹(しょうけん)の着物は、洗剤を使ったりや水を多くつけすぎたりすると、布地が縮むことがあるので注意が必要です。
染み抜きの前に、必ず見えない裏の部分で布地の状態を確認してから染み抜きをしましょう。

また、正絹の着物は自宅で丸洗いができません。
シミがひどいときは迷わず専門店にお願いしましょう。

着物をクリーニングに出すとどのくらい費用がかかる?

着物のクリーニング
着物を長期間保管する前や、着物についた汗・汚れが気になる場合は、専門店にクリーニングをお任せしましょう。
地域や着物の種類などによって価格には違いがありますが、こちらに参考の価格を載せています。

着物のクリーニングにかかる費用
  • 七五三の着物………3,000~5,000円
  • 訪問着・付下げ……3,000~10,000円
  • 振袖…………………10,000円前後

「洗い張り」は10,000~15,000円+お仕立て代

洗い張りとは、着物を解いてきれいに洗ってからまた着物に仕立てることです。
汚れている胴裏(どううら)や八掛(はっかけ)は取り替えられ、 新しい寸法で仕立て直しができます。

「防水加工(パールトーン加工など)」は10,000~15,000円

クリーニングをした後に汚れがつきにくい防水加工を施すと、シミがつきにくくなるだけでなく、虫やカビなども防いでくれるためおすすめです。
反物(たんもの)でも加工はできますが、仕立て上がりの着物に防水加工をすると裏地や縫い糸まで防水加工ができます。

シミ(汚れ)の種類と染み抜きのポイント

シミや汚れの種類は次の4種類に分けられます。

  1. 水溶性のシミ
  2. 油溶性のシミ
  3. 水溶性シミ+油溶性シミ
  4. 不溶性シミ
種類によって シミの落とし方が違うため、染み抜きをする前にシミの種類を見分けなくてはいけません。

例えば、水溶性のシミは水に溶けるため、比較的落としやすい汚れです。
油溶性のシミは油に溶けるため、専用の洗剤を使います。
種類を間違えるとシミが落ちなくなったり広がったりします。

それぞれの汚れにどんなものがあるのかを知り、的確に対処しましょう。

水溶性のシミ

水溶性のシミ

水溶性のシミの代表例
  • 血液
  • 母乳や赤ちゃんのよだれ
  • ジュース
  • コーヒー
  • 紅茶
  • ビール
  • ワイン
  • しょうゆ

水溶性のシミには、血液や母乳、赤ちゃんのよだれなどタンパク質の汚れ 、ジュースやコーヒーなどの飲みものの汚れがあります。

水溶性は水で溶ける汚れのため、早めに対処すればお家での染み抜きも簡単です。

水溶性の汚れは比較的簡単に自分で落とせますが、ワインや醤油など色の濃いものは完全に落としきれない場合があります。

MEMO
コーヒーや紅茶などは水溶性の汚れですが、ミルクを入れた場合は水溶性プラス油溶性のシミとなります。

油溶性のシミ

油溶性のシミ

油溶性のシミの代表例
  • 口紅
  • ファンデーション
  • ドレッシング
  • 油性ボールペン
  • インク
  • 朱肉
  • クレヨン

油溶性のシミは水では溶けないので、油で溶かして汚れを落とします。
水溶性の汚れよりも落としにくく、自分で染み抜きをするには難度が高めです。

油溶性のシミを落とすにはベンジンなど専用の溶剤を使用しますが、完全に落としきれない汚れもあります。
とくにインクや朱肉、クレヨンなどの汚れは自分では落とせません。
そういうときは、専門店で染み抜きをお願いしましょう。

水溶性のシミ+油溶性のシミ

水溶性のシミ+油溶性のシミ

水溶性シミ+油溶性シミの代表例
  • カフェラテ
  • ステーキソース

水溶性の汚れと油溶性の汚れが混じっているシミには、カフェラテなどミルクの入ったコーヒー、ステーキソースなどがあります。

これらは水溶性の汚れと油溶性の汚れが複雑に絡み合っているため、家庭では簡単には落とせません。
油溶性の染み抜きをしてから水溶性の染み抜きをしますが、繊維に付いて固まってしまうため水洗いが必要になります。

正絹(しょうけん)など水洗い不可の着物についてしまったときは、自分で染み抜きをするのは避けましょう。
早めに専門店にクリーニングを頼むのがおすすめです。

不溶性のシミ

不溶性のシミ

不溶性のシミの代表例
  • 泥はね
  • 顔料インクの水性ボールペン、マジックペン
  • 顔料使用のアイライナー、マスカラ

泥はねや泥汚れは不溶性のシミとなります。泥の正体は細かい砂なので、溶剤や洗剤などでは落とせません。
広い範囲に泥汚れがついた場合は専門店のクリーニングに出しましょう。
少しの泥汚れなら、よく乾かしてからブラシをかければ落とすことができます。

また、不溶性のシミには水性ボールペンや顔料使用のマスカラやアイライナーによるものもあります。
これらの顔料使用のシミは家庭では落とせません。
早めに専門店で染み抜きをしてもらいましょう。


シミの種類を把握したところで、着物につきやすい汚れである「水溶性」「油溶性」のシミと、シミになりやすい「泥汚れ」の落とし方をご紹介していきます。

着物の染み抜き|水溶性のシミを落とす道具と手順

水溶性のシミは水に溶ける性質を持つため、早い段階で染み抜きをすると落としやすくなります

血液、牛乳などたんぱく質のシミは必ず冷たい水を使いましょう。
ぬるま湯だとたんぱく質が固まってしまい、落ちなくなります。

用意するもの

  • タオル
  • ガーゼハンカチもしくは薄手のタオルもしくは綿棒
手順1
シミがついた着物
シミがついた部分の下にタオルを当て、着物を広げましょう。
手順2
綿棒を使った着物の染み抜き方法
ガーゼハンカチや綿棒などは、シミの大きさによって使い分けます。
これらを水につけて固く絞ります。
手順3
綿棒を使った着物の染み抜き方法
シミの部分を上からガーゼや綿棒で叩くようにして、下に当てているタオルに汚れを染み込ませるようにします。
この時、着物の布地をこすらないように気をつけましょう。
手順4
着物の染み抜き方法
シミの周りをぼかしながら、トントンと軽くたたきながらシミを落としていきます。
下に当てたタオルにシミの色が付かなくなるまで続けます。
手順5
着物の染み抜き方法
上から軽く叩いて汚れを下に当てたタオルに移したら、今度は乾いたタオルで濡れた部分を軽く叩いて水分を取りましょう 。
手順5
染み抜きはこれで完了です。
完全に着物を乾かしてから保管しましょう。

着物の染み抜き|油溶性のシミを落とす道具と手順

油溶性のシミを落とすときは、ベンジンなどクリーニング用溶剤を使用します。
落としにくい油溶性の汚れもあるため、無理せずにプロに頼む選択も考えましょう。

用意するもの

  • クリーニング用ベンジン
  • ガーゼ2枚もしくは綿棒
  • タオル2枚
  • ゴム手袋
  • 着物用ハンガー
  • 霧吹き
手順1
シミの部分の下にタオルを当てて着物を広げましょう。
手順2
ガーゼ(もしくは綿棒)をベンジンに浸します。
手順3
ガーゼ(もしくは綿棒)をシミの部分に当てて、汚れを下のタオルに移すように軽く叩きます。
手順4
汚れがガーゼ(綿棒)や下のタオルに移ったら、タオルの汚れていない白い部分に取り替えます。
手順5
シミが落ちたら、新しいガーゼにベンジンを浸します。
手順6
濡れている部分の周りをぼかすようにガーゼを使ってベンジンで濡らします。
このとき、輪郭がはっきり見えなくなるくらいまでぼかしましょう。
手順7
水洗いができる着物は、全体を手洗いして仕上げます。
水洗いができない着物は、ベンジンで濡らした部分に霧吹きで水を掛け、濡れている部分をぼかしていきます。
手順8
乾いたタオルで軽く叩きながらしっかり水分を吸い取りましょう。
着物用ハンガーに掛けて、形を整えながら乾かして完了です。

着物の染み抜き|泥汚れを落とす道具と手順

着物についた泥汚れは、しっかり乾かしてから落としましょう。
湿ったままの泥汚れをこすると着物の布地にシミが広がってしまうため、注意が必要です。

布地の織目に泥が入ってしまった時は、無理にこすらずに専門店で落としてもらいましょう。
また、水洗いできない着物は専門店のクリーニングに出すようにしましょう。

用意するもの

  • 着物用ブラシ(やわらかいブラシ)
  • 着物ハンガー
手順1
まずは着物を陰干しして、しっかり乾かします。
手順2
やわらかいブラシで表面の砂のつぶを優しく落としていきましょう。
水洗いができる着物の場合は、泥の付いた部分を水につけて泥を落とします。
手順3
汚れがひどい部分の泥をあらかたブラシで落としてから、着物全体を手洗いします。

泥がついた部分にブラシを当てるときは、優しく当てるようにしましょう。
力を入れてこすりすぎると布地が毛羽立ち、着物が傷んでしまいます。

おわりに

着物の染み抜きの方法を覚えておくと、お出かけ先で食べ物や飲み物をこぼしたとき、応急処置ができて便利です。
着物を気軽に着ることもできるようになりますし、お出かけが楽しくなりますね。

万が一汚れが付いてしまっても、自分で早めに対処できたらクリーニングに出した時にも汚れがすぐに落ちて綺麗に仕上がります。
いつでも万全の状態で着物を着られるように、丁寧にシミを落として綺麗な状態で保管しておきましょう。