災害でライフライン(電気、ガス、水道)が止まってしまった場合、最初に不便に感じるのは、トイレに関することではないでしょうか?
そうした災害などの不測の事態に活躍するのが「簡易トイレ」です。
簡易トイレは災害時以外にも、渋滞中の車内やレジャーのときなどでも活躍します。
この記事では、簡易トイレの種類や選び方、おすすめのアイテムをご紹介します。
意外と重要な防災用の簡易トイレの備蓄
一般財団法人消防防災科学センターが発表した資料によると、震度6(6弱)以上の地震経験者に被災時に困ったことを聞いたところ、その55.4%が「トイレ」と解答しました。
また、東日本大震災が発生したときに、避難所に仮設トイレが行き渡るまでに4日以上かかったという自治体が、29自治体の66%にのぼりました。
避難所では、「プライバシーが保たれていない」という理由で、精神的に参ってしまったり、共用のトイレに行く回数が減り、エコノミー症候群を発症してしまったりといった問題も起こります。
自宅避難の場合でも、断水などで水洗トイレが使えなくなると、トイレ環境が悪くなり、感染症が広がったり、悪臭で環境に影響が出てしまうことも。
あらかじめ準備しておかないと、災害時にそうした問題が起きてしまう可能性が高くなるので、普段から、防災用の簡易トイレを備蓄しておくことが重要です。
また、近隣にトイレがない場所での野外遊びや、車の渋滞で長時間我慢しなればならないときなどでも、簡易トイレを持ち歩いていれば安心して過ごせますよ。
【参考資料】
一般財団法人消防防災科学センター『大地震被災経験者に聞く「被災時にあってよかったもの」調査』検索日2021/5/13
内閣府『避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン』検索日2021/5/13
防災用の簡易トイレをどれだけ備蓄しておく必要がある?

先ほどご紹介した内閣府のガイドラインによると、被災者1人の1日のトイレの平均使用回数は5回。1回の平均排せつ量は200~300ミリリットルとされています。
避難所に仮設トイレが設置されるまで4日以上かかると想定すると、家族全員が1日5回ずつ、3日間使える量の簡易トイレの備蓄が少なくとも必要となるわけです。
また、溜められる容量が少ない簡易トイレだと、処理していない袋を大量に保管しなければなりません。そうしたことにならないよう、容量が比較的大きな簡易トイレを選ぶとよいでしょう。
- 必要最低数:家族人数 × 5回/日 × 3日分
- 必要最低容量:家族人数 × 5回/日 × 300ミリリットル × 3日分
【参考資料】
内閣府『避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン』検索日2021/5/13
簡易トイレの3つのタイプ
ここまで防災用簡易トイレの備蓄の必要性をご紹介してきましたが、さらに簡易トイレの主なタイプについて詳しくご紹介します。
簡易トイレには、大きく分けて3つのタイプがあります。
それぞれの特徴をご紹介するので、用途に合わせて選び、備蓄しておきましょう。
【簡易トイレのタイプ1】便器設置式

便器設置式の最大のメリットは、避難所でも家でも、個室トイレで用を足せることです。
避難所では、他の人の目が気になってしまいがちですが、こちらは個室内で使用するものなので、少しだけ気持ちを落ち着かせることができます。
便器設置式の簡易トイレの使い方
便器設置式の簡易トイレは、実際の便座に取り付けて使い、使用後は、汚物袋に凝固剤を入れ固めたうえで、臭いが漏れないよう保管袋に入れ、廃棄まで保管します。
凝固剤を入れる際に、直接排せつ物を目にしてしまうということもありますが、凝固剤はすぐに固まり防臭効果で、悪臭も気にならなくなります。
処理する際に、便器の内側に直接触れるのに抵抗がある方もいると思います。便器内の濡れている場所に直接触れない短い汚物袋を選ぶと、手を汚さず衛生的に処理できます。
また、黒っぽい保管袋選ぶと、中身が気になりません。
【簡易トイレのタイプ2】携帯式

コンパクトで持ち運びが簡単。渋滞中の車内やレジャーのときなどにも大活躍します。
他のタイプに比べて安価なのも、魅力の1つ。
ただ間口が狭く、袋のサイズが小さいものもあり、使用する際は、使い勝手や容量をチェックしておかないと、中身がこぼれてしまう可能性があります。
またグッズによって処理方法も様々なので、簡単に捨てられるものを選ぶようにしましょう。
【簡易トイレのタイプ3】組み立て式

便座の下に汚物袋を置き、使用後に袋に凝固剤を入れ、中身を固めたうえで処理します。
避難所や屋外などで使用する場合
組み立てると多少スペースが必要になりますが、カーテンなどで仕切れば、簡易的な個室を作ることができます。また、目隠し用のポンチョ付きのグッズや着替え用に使えるポップアップテントもあるので、併用することで少しだけプライベートな空間で用を足すことができます。
組み立て式の簡易トイレは洋式トイレのような形状が多く、座って使用するので、どれくらいの重みに耐えられるのか(耐荷重)を、あらかじめチェックしておくようにしましょう。
簡易トイレの選び方の3つのポイント
簡易トイレを選ぶときは、どのようなことに気をつければよいのでしょうか?
ここでは、簡易トイレの選び方として重要な3つのポイントをご紹介します。
【ポイント1】衛生的に使えるか?
災害時はトイレを流せないので、どのタイプの簡易トイレを使っても、自分で排せつ物を処理し、それを一定期間置いておかなければなりません。
その際、衛生的に処理できるかがとても重要です。
排せつ物や、洗浄していないトイレに直接触れてしまうと、感染症などの心配がありますし、何より心理的に抵抗がありますよね。
汚物袋のサイズが小さすぎると中身が漏れてしまう一方、汚物袋が大きすぎると、水洗トイレの便器の内側に残っている水分で袋が濡れ、手が汚れます。
防臭、防菌対策を行い、簡易トイレを少しでも衛生的に使うためにも、直接排せつ物に触れずに処理できるものを選ぶとよいでしょう。
また、排せつ物は長期間保管しなければならないので、可燃ごみとして処理できるかなど、処理方法も事前にチェックしておくことが重要です。
【ポイント2】防臭対策されているか?
被災生活において、排せつ物の臭いは非常に大きな問題ですが、簡易トイレの防臭効果は、付属されている「凝固剤」と、「袋」により得られます。
簡易トイレに付属されているほとんどの凝固剤は、もともと消臭効果があるといっても過言ではありません。
凝固剤が固まるスピードが速いと、それだけ早く処理でき、悪臭が漂う時間が短くなるので、凝固剤が固まる時間もチェックしておくとよいでしょう。
「袋」は、その強度がとても重要です。汚物袋の強度が弱いと、袋が破れてしまうことがあります。
そうなると後の処理が大変な上、悪臭を放つので、汚物袋は厚みがあり、破れにくい素材のものを選ぶようにしましょう。
ちなみに、多くの簡易トイレには、便器にセットする袋だけでなく臭わないように保管するための袋も付いています。選ぶときには、この保管用の袋が厚手のもので、中身の見えにくい濃い色(黒など)の袋であるかチェックすることをおすすめします。
【ポイント3】防菌効果があるか?
防臭効果同様、簡易トイレに付いている凝固剤には、防菌効果があるものが多くあります。
災害後の復旧具合によっては、長期間排せつ物を保管しておかなければなりません。
防菌効果がある凝固剤で固めた状態にして保管すれば、細菌の繁殖を抑え、感染症の広がりを抑えることにつながります。
簡易トイレのおすすめアイテム5選
簡易トイレの種類や選び方について紹介してきましたが、ここでは特におすすめの5つのアイテムをご紹介します。
防災用としては便器設置式や組み立て式を、キャンプなどのレジャーや車内で使うときなどは、持ち運びが楽な携帯式を使うとよいでしょう。
クリロン化成 BOS非常用トイレセット【便器設置式】
洋式の便器に取り付ける簡易トイレです。
最大の特徴は、汚物袋の保管袋の防臭性。かなりの臭いを抑えることができます。
袋が丈夫で破れにくいのも魅力です。
和弘プラスチック工業 抗菌簡易トイレ オイトイレ【便器設置式】
抗菌・消臭試験を実施済みの抗菌簡易トイレです。凝固剤に消臭剤・抗菌剤が練りこまれているため、悪臭や菌の繁殖を抑え込みます。
また、カバー袋・トイレ用袋の他、処理用袋もついており、袋にもしっかりと消臭抗菌機能が施されています。
10年間の長期保存が出来るため、レジャーなどで使う予定が無くても、非常用に日頃から備えておくと安心です。
携帯ミニトイレ【携帯式】
片手で簡単に使える携帯式の簡易トイレで、災害用としてだけでなく、キャンプや渋滞時に車内でも使えます。
とてもコンパクトなので、防災対策として保管しておいてもよいかもしれません。
あらかじめ凝固剤が袋に入っているので、排せつ後に凝固剤を加える必要がありません。処理する際は、中身をトイレに流す必要があります。
エクセルシア ほっ!トイレ【携帯式/組み立て式】
和式型の組み立てトイレ、タブレット型のトイレ処理剤、保存用袋から、ポンチョやポケットティッシュまで付いた携帯トイレです。組み立ても簡単で、これ一つあれば、災害時でもキャンプのときでも、どこでも用を足すことができます。
石炭が主成分の処理剤が、排せつ物の悪臭成分を分解し消臭します。
サンコー 非常用簡易トイレ R-39【組み立て式】
段ボールの箱とプラスチック製の便座を組み立てて設置します。
耐荷重が約120キロあり、体の大きな大人でも安心して使えます。
目隠し用のポンチョが付いているので、災害時に外で用を足さなければならないときでも、多少なりともプライバシーを守ることができます。
まとめ
災害でライフラインがストップした場合のトイレ問題について考えておく事は、とても重要な事です。
いつもと違う環境で用を足すことを強いられると、どうしても我慢しがちになり、身体的にも精神的にも良くない影響が出てしまいます。
そうした影響を最低限に抑えるためにも、防災用として簡易トイレを準備しておくことをおすすめします。
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