ここ数年の発酵・麹ブームによって、使ったことはなくても名前を耳にしたことがあるはずの塩麹。
もしかしたら、「塩糀」や「塩こうじ」という表記の方が見慣れているという人も多いかもしれませんが、これらは違いはなく一緒のものです。
最近では市販品でもさまざまな塩麹を目にするようになりました。
もちろん、市販品を使用するというのも選択肢としてはありです。
しかし、実は塩麴は手作りをした方がたくさんのメリットがあります。
そこで今回は、塩麴はどんな調味料かに加え、自家製塩麹の作り方や使い方についてもご紹介しましょう。
目次
塩麹ってどんな調味料?塩麴の特徴や栄養について知ろう
塩麹を作るための材料は、「塩・麹・水」のたった3つ。
この3つの材料を混ぜ合わせ、発酵させて作る調味料が塩麹です。
塩麴は、米のデンプンやタンパク質が分解されることによって塩のカドがとれて、旨みや甘さが加えられた甘じょっぱい味になります。
また、添加物などを使用することなく作ることができるので、自然な味わいを楽しむことができるのが特徴です。
塩麹は「寒麹」や「三五八漬け」とは何が違う?
塩麹はその歴史をたどると、江戸時代から使用されているほど、昔から愛用されている調味料のひとつなのです。
そんな塩麹と比較されることが多い調味料に、「寒麹」や「三五八漬け」があります。
寒麹は、秋田県の伝統食品のひとつです。
水を使用せずに、「麹・蒸し米・塩」の3つの材料を混ぜ合わせて発酵させます。
一方、三五八漬けは福島県の会津が発祥と言われており、福島県や山形県、秋田県の伝統食品のひとつとして昔から愛されています。
三五八漬けは、「塩:麹:蒸し米=3:5:8」の割合で仕込むことから名づけられたと言われています。
この2つは、塩麹では使用しない蒸し米を使用することと、使用する水分がない・もしくは少ないという特徴があります。
そのため、イメージ的には、
- 塩麹・・・塩の代わりに使うもの
- 寒麹・三五八漬け・・・漬け物の床に使うもの
として考えるとよいでしょう。
この3種類の中で、1番手軽に仕込むことができるのが塩麹です。
そのため、日々の食事にも簡単に取り入れやすいというメリットがあります。
塩麹は味も良く栄養価も高い!
調味料である塩麹ですが、私たちの体作りには欠かすことができない栄養素が豊富に含まれています。
代表的なものは、
- タンパク質(体のエネルギー源として使用されたり、体を作る材料になったりする)
- ビタミン・ミネラル(三大栄養素1人間のエネルギー源になる栄養素である「糖質・脂質・タンパク質」をまとめて三大栄養素と呼びます。の働きをサポートする)
- オリゴ糖(腸内環境をよくするための善玉菌のエサとなる)
また、発酵過程において、先ほどご紹介した米のデンプンやタンパク質が分解される「糖化」が起こります。
そのため、通常の塩よりも甘みや旨みが増し、美味しい調味料に変身するのです。
塩麹を手作りするメリット
味わい深く栄養も豊富な塩麹ですが、お店で購入するのではなく、お家で手作りするメリットがいくつかあります。
- コスパがよい
- 好きな塩・麹を選べる
- 美味しさがアップする
メリット【1】お店で買うよりコスパがよい
1つ目のメリットは、コスパがよいことです。
市販の塩麹は、少量でそこそこの価格がするものが多いです。
一方で、自家製塩麹は、麹と塩を揃えるだけでできるので、低価格でたくさんの量を仕込むことが可能です。
冷蔵庫で半年はもつ調味料なので、まとめて仕込むとお得ですよ。
メリット【2】自分の好きな塩・麹を選んで作れる
2つ目は、自分好みの塩や麹を使って作れることです。
市販の塩麹は、どのような麹と塩が使われたのか詳しく知ることができないのがほとんどです。
材料がシンプルな塩麹は、どんな塩や麹を使用するのかで、その味わいは大きく変わってしまいます。
そのため、自分好みの組み合わせを見つけてみるのもおもしろいですよ。
メリット【3】食材の美味しさがアップする
また、塩麹には食材の美味しさがアップするというメリットもあります。
自家製の塩麴にしかないメリットもあるので、詳しくは「塩麹で作る唐揚げが美味しくなる秘密と作り方」でご紹介します。
美味しい自家製塩麹の作り方手順
塩麹のレシピはさまざまあり、塩分濃度に決まりはありません。
しかし、保存性を考えた場合には、ある程度しっかりと塩分濃度を高くしておいた方が腐敗のリスクが下がります。
私がいろいろ試した結果、ベストであると感じた塩分濃度は「麹の量に対して35%」です。
今回はこの塩分濃度35%になるレシピをご紹介します。
まずはこのレシピで作ってみて、その後に好みの味になるように塩の量を調整して作ってみるとよいでしょう。
ただし、減塩を意識しすぎて塩を減らし過ぎると、塩麴が腐敗してしまうリスクが高くなるのでご注意くださいね。
自家製塩麹の材料と作り方
- 米麹 100g
- 塩(天日や平釜などの自然塩)35g
- 水 100~150cc
米麹の代わりに、お好みで玄米麹や麦麹を使ってもOK。生麹でも乾燥麹でも大丈夫なので、お好みで選んでください。

米麹に固まりがある場合、手ですり合わせて、1粒1粒バラバラになるようにほぐします。
こうすることで、発酵がしっかりと進みます。


塩が満遍なくまわっていないと、塩麴が腐敗してしまうリスクが高まるので気を付けましょう。

塩切り麹を発酵させる容器に移し、水を入れます。

麹がひたひたになるくらいまで水を入れたら、スプーンなどでよくかき混ぜます。
これで、仕込みは完了です。

毎日1回、スプーンなどでかき混ぜましょう。満遍なくかき混ぜることで、発酵が均一に進みます。
この時、麹が水分を吸って水気がなくなってしまっていたら、ひたひたになるくらいまで水を追加してください。

常温で10~14日、1日1回かき混ぜ続け、麹が指ではさんで潰せるくらい柔らかくなり、甘い香りがたってきたらできあがりのサインです。
自家製塩麹を仕込む保存容器の選び方と保存方法
自家製塩麹を仕込む保存容器は、プラスチックではなく、瓶や琺瑯などがおすすめです。
発酵するためには酸素が必要なので、フタは密閉せずに少しずらしてあげるとよいでしょう。
また、温度が低すぎると発酵が進まないため、発酵が完了するまでは直射日光の当たらない常温で保存します。
発酵が完了してからは、冷蔵庫で保存します。そのまま常温で保存してしまうと、発酵が進み過ぎてしまうので注意が必要です。
自家製塩麹の保存期間は?
自家製塩麹は冷蔵保存で約半年はもつので、多めに仕込んでも消費に困ることはないでしょう。
冷凍保存したい場合は、冷凍可能な密閉保存袋に入れ、板状に伸ばして冷凍をしておき、使用する分だけパキッと折ってから使うのもおすすめです。
自家製塩麹を保存するときの注意点
塩麴は、塩分濃度が低すぎたり、保存状態が悪かったりすると、過発酵したり、雑菌が繁殖したりして食べれなくなってしまうことがあります。
そのため、塩麴を取り出す際は清潔なスプーンを使うようにしましょう。
また、容器の内側が汚れている場合には、キッチンペーパーなどで汚れを拭き取るなど、清潔に保存することも大切です。

その日中に使える!塩麹の即席レシピ
自家製塩麹にチャレンジしたいけど、発酵させるのに10~14日もかかるのはハードルが高くてできそうにない…という人も多いですよね。
そんな人におすすめなのが、半日あれば完成する「即席の塩麹」を作ってみることです。
即席の塩麹を作る方法
材料の配合は普通の塩麴作りと同じです。
- 米麹 100g
- 塩(天日や平釜などの自然塩)35g
- 水 100~150cc
まずはこちらの材料を用意してください。
あとは、米麹と塩、水を全て混ぜ合わせ、60度の状態で6~8時間加温します。
ヨーグルトメーカーなど、同じ温度を長時間維持できる家電をお持ちの方なら、とても手軽にできます。
時間があるならじっくり作るのがおすすめ
ただし、発酵を促す酵素には、熱に弱いという特徴があります。
そのため、即席で作った場合、常温で発酵させた塩麹と比較すると、酵素の活性が低下してしまっている可能性も考えられます。
可能であれば、ゆっくりと時間をかけて糖化させて作る塩麹の方がおすすめです。
酵素の活性が失われないため、料理で使用する際の酵素の分解力をしっかりと活用することができますよ。
塩麹のおすすめの使い方
塩麹は、塩を使う料理には幅広く活用できます。
塩の代わりとして使用することで、いつもの料理にコクをプラスして美味しさをアップしてくれます。
麹の粒々が気になるという場合には、できあがり後にブレンダー等で滑らかになるまで攪拌してあげるとよいでしょう。
おすすめの使い方をいくつかご紹介します。
- お魚やお肉にまぶして、焼いたり、グリルしたり、蒸したりする
- 茹でたまごを塩麹で一晩漬け込む
- 重ね煮で食材を塩麹で挟む
- きゅうりやトマト、大根、人参などに揉み込んで浅漬け風にする
- コンソメ代わりにスープの味付けに使う
重ね煮など水分が少ない料理では焦げやすくなるので、少し水を加えてあげるとよいでしょう。
テレビで話題!塩麹で作る唐揚げが美味しくなる秘密と作り方
テレビで取り上げられるなど、最近話題の「塩麹唐揚げ」。
その名の通り、塩麹で鶏肉を漬け込んで作る唐揚げです。
唐揚げを作るときに塩麴を使うことには、大きく2つの理由があります。
唐揚げの美味しさがアップする
塩麹にはいろいろな酵素が含まれています。
その中に、でんぷんを分解するアミラーゼやタンパク質を分解するプロテアーゼというものがあります。
塩麹はでんぷんが分解されることにより甘みがアップして、タンパク質が分解されることでうま味がアップした調味料です。
そのため、塩気の中に甘みやうま味が含まれているので、食材の美味しさを引き出すお手伝いをしてくれるのです。
下味はシンプルでも美味しい
唐揚げを作る際には、生姜やにんにくのすりおろしを加えても美味しいですよね。
ただし、甘みとうま味を兼ね備えた塩麹を使用するのであれば、下味をシンプルな塩麹のみにしても、美味しい唐揚げを作ることはできますよ。
鶏肉が食べやすい柔らかさになる
塩麹に含まれている酵素プロテアーゼは、下味を付ける時に鶏肉を塩麹に漬け込むことで、肉のタンパク質を分解して肉質を柔らかくしてくれます。
そのため、特に肉質が固めの胸肉を使用する場合には、塩麹に漬け込んでから調理するのがおすすめです。
もちろん、元々柔らかい肉質のもも肉の場合も、塩麹に漬け込んであげるとさらに美味しくなりますよ。
自家製塩麴じゃないと柔らかくならない?
肉質を柔らかくするためには、発酵が止まっていない塩麹を使用することが重要です。
発酵が止まっている塩麹では、タンパク質を分解してくれるプロテアーゼという酵素の働きも止まっています。
市販で販売されている塩麹の大半は、出荷前に消毒も兼ねて加熱されているので、発酵が止まり酵素のはたらきが失われてしまっています。
そのため、タンパク質が分解され、肉質が柔らかくなるということが起こりません。
自家製塩麹であれば、冷蔵保存をしてスピードがゆっくりになったとしても、発酵が完全に止まってしまうことはありません。
そのため、プロテアーゼの働きが期待できます(完成した後に火入れをしなかった場合に限ります)。
肉質を柔らかくしたいという目的で、唐揚げに塩麹を使用する場合には、自家製塩麴を使うのがおすすめです。
塩麹唐揚げのおすすめレシピ
塩麹唐揚げを作ってみたいという人のために、材料とおすすめの作り方をご紹介します。
- 鶏胸肉(鶏もも肉でもOK) 300g(約1枚分)
- 塩麹 大さじ2
- 片栗粉(もしくは、米粉)適量(大さじ3~4)
- 【お好みで】生姜とにんにくのすりおろし 各大さじ1
- お好みの油(米油、菜種油、オリーブオイル、ココナッツオイルなど)
- 鶏肉を一口大の大きさにカットします。
- ボウル(もしくは密閉袋)に、1と塩麹、お好みで生姜とにんにくのすりおろしを入れて、鶏肉に均一に絡まるように揉みながら混ぜ合わせます。
- 2を冷蔵庫で一晩漬け込みます。
- 片栗粉(もしくは、米粉)を3にまんべんなくまぶします。
- 160~170度に加熱した油の中に、4を投入します。肉を投入すると温度が低下するので、もう一度160~170度に温度を上げてから3~4分揚げます。
- 一旦取り上げて、4~5分余熱で中まで火を通します。
- 180~190度まで加熱した油の中に6を投入して、1~2分揚げてから取り上げます。油をきったらできあがり。
鶏肉を一晩も塩麴に漬け込時間がないという場合には、漬け込み時間を15~20分にしても大丈夫です。
ただし、この場合は「肉質を柔らかくする」という効果は弱くなります。
肉質が柔らかいものを食べたいという場合には、鶏もも肉を使用する方がおすすめです。
ちょっと一手間かかりますが、2度揚げする方が外はカリっと中はジューシーな唐揚げを楽しむことができますよ。
自家製塩麹ライフを楽しみませんか?
お料理が苦手な人でも美味しい料理を作ることができる魔法の調味料、塩麹。
日々のお料理にちょっと加えるだけで、コクと旨さがプラスされ、お料理上手に大変身です。
市販品を使用するのもダメではありませんが、麹や塩を選んで作ることで、マイオリジナルの塩麹を作ることができます。
とても簡単にできるので、1度はチャレンジしてみてはどうでしょうか?
きっと、塩麹が手放せなくなること間違いなしですよ。

