家庭でできる食中毒予防!買い物~食事までの菌を増やさないポイントを解説

調理台にアルコールを吹きかけてふきんで拭いている

梅雨が始まり、気温と湿度が高くなると、気がかりになるのが「食中毒」。

「食中毒といっても、お腹が痛くなるくらいでしょ?」

そう考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、食中毒は場合によって命に関わります。
また、食中毒の発生件数のうち、実は家庭での発生件数が全体の2番目に多いんです。

家庭での衛生管理が甘いと、食中毒にかかる可能性が高くなってしまいます。

この記事では、ご家庭で実践可能な「食中毒予防の基本とポイント」を、病院での勤務経験がある調理師が解説します。

満畑ペチカ(調理師)

「食中毒予防の3原則」を理解してポイントを押さえれば、家庭内の食中毒は十分に防げますよ。

命に関わる「食中毒」とはどんな病気?

腹痛の様子

食中毒とは、原因となる細菌やウイルス、有毒な物質を、食べ物から体内に取り入れてしまうことで発症する病気です。

症状は主に腹痛や下痢、発熱で、場合によっては頭痛や血便といった症状が見られる場合もあります。

なかでも、腸管出血性大腸菌(O157など)に感染すると、赤血球の破壊による貧血や腎臓の機能の急速な低下が起こり、死に至る場合もあるんです。

食中毒は、「お腹が痛くなる」だけでは済まない病気です。
家族や自分を守るためにも、まずは家庭内の食中毒予防が大切になってきます。

食中毒は家庭でも起こりうる病気!原因と症状を解説

家庭での食中毒は、飲食店に次いで2番目に発生件数が多い*ことが明らかになっています。(*発生場所が明らかなものに限る)

では、原因になる菌や食品には、一体どのようなものがあるのでしょうか?

たくさんある食中毒の原因のなかでも、特に発生件数が多いものと感染元の食品、症状を簡単にまとめました。

アニサキス|生魚に潜む寄生虫

アニサキス
アニサキスは白い糸状の見た目をした寄生虫の一種で、サバやアジ、するめいかなど、海産の魚介類に寄生しています。
これらの魚種は、通常魚屋さんなどでは生食用ではなく加熱用として販売されていますが、主に海釣りで釣れる魚を生食する場合などに注意が必要です。
主な症状
潜伏期間は、2~8時間(胃アニサキス症の場合)。まれに10時間以上過ぎてから腸アニサキス症を発症する場合があります。
アニサキスは人の腸壁に頭を食い込ませて寄生することがあり、その際に腹痛や吐き気、嘔吐などの症状があらわれます。

冷凍処理された魚は大丈夫?

アニサキスは-20℃で24時間以上冷凍することで多くの場合死滅します
アニサキスについて不安な場合は一度冷凍すると、食中毒の予防となります(一番の予防方法は焼き魚などしっかりと加熱することです)。
ただし、家庭用冷凍庫は-18℃であることが多いので、48時間以上はしっかりと冷凍しましょう。
なお、スーパーなどで売られているお刺身など生食用の魚については、養殖の場合はほとんどの心配がなく、天然魚であっても一旦冷凍処理されたものであれば食中毒の心配はいりません。

カンピロバクター|鶏肉は要注意

カンピロバグター
カンピロバクターはさまざまな動物の腸管内に存在していますが、特に鶏の保有率が高い細菌です。
生の鶏肉のおよそ50%以上が、カンピロバクターに汚染されているといわれています。
そのため家庭内では、生焼けの鶏肉などが原因の、カンピロバクターによる食中毒に注意が必要です。
主な症状
感染後の潜伏期間は1日以上。
食後2〜7日で下痢や腹痛、発熱などの症状があらわれます。

サルモネラ|肉類・鶏卵に多い菌

サルモネラ
こちらも自然界に多く存在している細菌ですが、特に鶏肉や卵が汚染されているケースが多くあります。
そのため、家庭では卵(鶏卵)やその加工品が原因の感染に注意が必要です。
卵を生食する際は、新鮮で殻にヒビが入っていないものを選びましょう。
また保管は冷蔵庫内でおこない、できるだけ期限表示内に食べ切るのがおすすめです。
主な症状
サルモネラの感染後の潜伏期間は半日〜1日。
その後、腹痛、下痢、吐き気、発熱(38度~40度) などの症状が現れます。

ウェルシュ菌|2日目のカレーは危険!?

ウォルシュ菌
ウェルシュ菌は自然界に広く分布している細菌です。牛や鶏の肉についていることもありますが、空気がある状態では増殖しません。
注意したいのはカレーなどの煮込み料理
酸素濃度が低くなっている煮込み料理のなかは、空気がない状態を好むウェルシュ菌にとって増殖に最適な場所です。

加熱調理後に煮込み料理を常温で放置すると、なかでウェルシュ菌がどんどん増えてしまいます。

主な症状
感染後の潜伏期間は約半日。
主な症状は下痢と腹痛で、発熱や嘔吐はほとんどありません。ほとんどの場合、発症後1~2 日で回復します。ただし、基礎疾患のある方やお子さんや、高齢者の方は重症化することがあるので注意してください。

黄色ブドウ球菌|手指の傷から増える菌

おにぎり
黄色ブドウ球菌は、自然界のどこにでも存在する普通の細菌です。特に人や動物の傷口や化膿部分には黄色ブドウ球菌が多く見られます。

家庭では主におにぎりなど、素手で触れる料理などが感染の原因になっています。

黄色ブドウ球菌自体は熱に弱いものの、菌が生み出す毒素は120度で20分加熱しても壊れないほどの耐熱性があり、とても危険です。

主な症状
感染後の潜伏期間は1〜6時間。
吐き気と激しい嘔吐が起こることが特徴です。

食中毒を防ぐには?覚えておきたい「食中毒予防の3原則」

キッチンの風景
食中毒の原因にはいろいろあり、どのように食中毒を予防すればよいか、いまいちわかりませんよね。

家庭内での食中毒を防ぐためには、食中毒予防の3原則「つけない・増やさない・やっつける」を徹底することが大切です。

ここからは、食品を扱う現場でも重要視されている「食中毒予防の3原則」について、詳しく解説していきます。

(1)つけない|手洗い・消毒で汚染を防ぐ

手洗い
食中毒の原因菌はあらゆるところに潜んでおり、生の肉や魚、人の手指などに必ずついています。
そのため根本的な原因をなくすことは、ほぼ不可能です。

原因をなくすのではなく、原因となる菌を別の食品や場所などに「つけない」ことが、食中毒予防の基本になります。

(2)増やさない|料理の保存方法に要注意

鶏肉パック
ほとんどの食中毒菌は十分な加熱で殺菌されることがほどんどですが、菌の数を0にはできません。
また、加熱に耐える菌もあるため、「一度加熱すれば大丈夫」というわけでもないんです。

細菌が発育しやすい温度は20度〜50度前後

加熱したあとの料理を常温で放置しておくと、菌が育ちやすい温度が長く保たれてしまうため、残った菌が増殖しやすくなります。

菌が増えればそれだけ食中毒のリスクも高まるので、菌を「増やさない」ように工夫しましょう。

(3)やっつける|加熱不足には十分注意して

肉の加熱不足
細菌をやっつけるために効果的な方法は、食品を中心まで十分に加熱することです。

食中毒の原因菌は熱に弱い性質のものが多いため、食材の中心部分までしっかりと火が通るように加熱すれば、ほとんどの菌を殺菌できます。

厚生労働省で定められている加熱の目安は、中心温度75度を1分以上キープした状態。

肉や魚などは特に生焼けや温度不足になりやすいので、温度計を用いて測定するのが確実です。

温度計を用いた検温は難しい場合は、

  • 調理途中に肉や魚の断面をチェックする
  • 味見で十分に加熱されているか確認する

など、目と感覚で加熱状態を確認しましょう。

今すぐチェック!家庭でできる食中毒を防ぐポイント

買い物から食事までの一連の流れのなかで、食中毒を予防するために押さえておきたいポイントを解説します。

何気なくやっていたことが、食中毒予防につながっている場合もありますよ。
あらためてポイントを確認して、食中毒予防への意識を強めていきましょう。

【買い物】菌を「つけない・増やさない」工夫を

スーパーでの買い物

買い物の時点で、食品から菌がついてしまう可能性は十分にあります。
そのため買い物の際には「つけない」、帰ってきたら「増やさない」という工夫が大切です。

これらの工夫のポイントを、以下にまとめました。

菌を「つけない工夫」

まずは、原因となる菌を別の場所や食品に「つけない」工夫について。
食中毒を予防するうえで、どれも大事なことです。

「つけない」工夫
  • 肉や魚のパックはビニール袋に入れる
  • 卵の殻が外に触れてしまう場合は、ビニールで包む
  • 土つきの野菜は、土が他のものに触れないように注意(土のなかにも細菌がいます)
  • 肉や魚、卵とその他の食品は入れる買い物袋も分けるとよい
パックなどに入れて売られている肉や魚は、ビニール袋に入れるのが基本。肉や魚介類から出る汁(ドリップ)にも食中毒菌が含まれることがあるので、汁漏れしたり、他の食品につかないように気をつける必要があります。

また、ついやってしまいがちなのは、肉・魚・卵と他の食品を同じ買い物袋に入れてしまうこと。

袋のなかで細菌がついてしまう可能性がありますし、エコバックを介して細菌がついてしまう可能性もあります。

買い物の量が少なくてもエコバックを2つ用意し、肉・魚・卵とその他の食品で分けて入れられるようにしましょう。

菌を「増やさない工夫」

夏など気温の高くなる時期は特に、「細菌を増やさない」ことが大切です。
食中毒を防ぐため、普段のお買い物や調理の前に、ぜひ意識してみてください。

「増やさない」工夫
  • 温かいものと冷たいものは別々に
  • すぐに使う予定のない食品以外は、できるだけ新鮮なものを買う
  • 帰ってきたら、食品はすぐ冷蔵庫へ入れる
  • エコバックは定期的に消毒する(洗う、アルコールで拭くなど)
エコバッグの洗濯や消毒については、案外忘れられがちかもしれません。
「洗い方が分からない」「洗える素材かどうかわからない」場合でも、簡単にアルコールなどでお手入れ出来るものがほとんどですので、下記の記事を参考に消毒してみて下さいね。
色々なタイプのエコバッグの洗い方実は簡単!エコバッグの洗い方-洗えないタイプのお手入れ方法も-

【下ごしらえ】とにかく「つけない」

まな板と包丁

下ごしらえは、手指や調理器具、食材から食材へ菌が移りやすいタイミングです。

以下のポイントに気をつけて、菌があらゆるところについてしまわないようにしましょう。

  • 調理前には手を洗う
  • 生で食べるものと加熱用の肉や魚を近くに置かない
  • 肉や魚を切ったあとは、まな板と手指を十分に洗って、できれば消毒
  • 卵を素手で触ったあとは手を洗う

包丁などの調理器具は、きちんと洗っていても、保管している間に菌が付着している場合があります。

菌を別の場所につけないためにも、調理器具を使う前にアルコール消毒するのがおすすめです。

実際の調理現場でも、あらゆる調理器具を使用する前にアルコールスプレーで消毒しています。

【調理】しっかり加熱して菌をやっつける

フライパンで調理

調理時は食材を中心部分まで十分に加熱して、菌をやっつけましょう。
目安は「中心部分75度を1分間以上キープ」です。

温度計で中心温度を測定できない場合は、中心まで熱が伝わるように工夫して調理をおこないましょう。

フライパンや鍋は、蓋をすると全体に熱が伝わりやすくなりますよ

また、調理途中で菌を「増やさない」ための工夫も必要です。
途中まで調理して仕上げまでに時間が空く場合、食材を冷蔵庫で保管しておきましょう。

完成したサラダや和え物なども、すぐに食べない場合はラップをして冷蔵庫での保管がおすすめです。

【食事】事前に手洗い・残り物はすぐ冷蔵庫へ

食卓の風景

「しっかり加熱調理をすれば大丈夫」と感じるかもしれませんが、食事や食事中も気は抜けません。

以下に食事前と食事中に注意したいポイントをまとめました。

  • 食事前に手を洗う(特にお手洗いへ行った後など)
  • 食卓をアルコールスプレーなどで清潔にする
  • 配膳時の料理の温度に注意!(温かい料理は65度以上、冷たい料理は10度以下)
  • 料理は食べきれる分だけ盛り付けて、余りそうな場合は清潔なスプーンや箸で取り分ける
  • 余った料理はすぐに冷蔵庫に入れ、早めに食べきる

重大な食中毒を起こす「腸管出血性大腸菌O157」は、10~60度で増殖し25~35度前後が最も活発になります。
わずか15分ほどでも室温で放置すると、菌が約2倍に増えるとされているのです。

食事をしている最中にも菌が増えていく可能性は十分にあるので、十分に注意したいですね。

家庭での食中毒を「つけない・増やさない・やっつける」で予防しよう

食中毒のなかでも、2番目に発生件数が多い「家庭での食中毒」。

食中毒の多くは、症状が下痢や腹痛などで収まります。しかし、なかには命に関わる食中毒もあるので、しっかり予防することが大切です。

食中毒予防の3原則「つけない・増やさない・やっつける」は、食中毒予防の基本となります。

基本を意識しつつ、買い物から食事までに注意すべきポイントも押さえて、食中毒から命を守りましょう!

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