雪平鍋は和食でよく使われる、凸凹模様がある片手鍋。
薄手で火の回りが良く、フタがないのも特徴です。
「普通のお鍋と何が違うの?」「雪平鍋と書いてあれば何でもいいのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、雪平鍋には普通の鍋にはない特徴がたくさんあります。
そこで今回は、雪平鍋の選び方や、長く使うためのお手入れ方法、おすすめアイテムなどをご紹介します。
お家で和食を良く作る方は、ひとつは持っておきたいアイテム。ぜひ参考にしてくださいね。
雪平鍋とは?
雪平鍋は一般家庭はもちろん、老舗の料亭でも使われることが多いお鍋。
煮物、茹で物、出汁を作る時など、鍋を使うほとんどの和食に対応できる万能な鍋です。
和食に限らず、野菜を茹でるなどの下ごしらえにも便利で、用途はたくさんあります。
では、普通の片手鍋とは何が違うのでしょうか?
雪平鍋と普通の片手鍋との違い
最大の特徴は表面の凹凸模様。
現在の主流な素材であるアルミや銅は柔らかく、あまり耐久性が高くないのが弱点。
鍋の表面を凹凸状に打ち出すことによって強度を上げる仕組みになっています。
また、凹凸状に表面積を増加させることによって、均一に熱が伝わるようになっています。
こういった鍋は「打ち出し鍋」とも呼ばれ、長く日本で重宝されてきました。
雪平鍋は、だしをとる料理屋や料亭などの厨房に欠かせない鍋。
調理がしやすく、たくさん重ねておいてもかさばらないように、フタがついていないものが多いのも特徴です。
雪平鍋の歴史と呼び名
雪平鍋は元は土鍋の一種で、フタと持ち手がある厚手の陶器の鍋のことを指していました。
しかし、昭和20年代頃からは割れやすい陶器に代わって安価で軽いアル製の雪平鍋が台頭するようになります。
現在ではアルミあるいはステンレス製のもので、フタがなく注ぎ口と取っ手をついた片手鍋を「雪平鍋」とすることが多いです。
「雪平鍋」と「行平鍋」は同じ?
雪平鍋を「行平鍋」と表記することがありますが、これは歌人である「在原行平」を語源とする説があります。
行平は『伊勢物語』の主人公あるいは六歌仙の一人として有名な、在原業平の兄にあたる人物です。
流罪のため蟄居1自宅の一室などに謹慎させられることしていたという須磨で会った海女に塩を焼かせた鍋を「行平鍋」とした説と、焼いた塩が白くてまるで「雪」のようであり、その時使用された鍋を「雪平鍋」と呼ぶようになったなどの説があります。
一方、一般的に表記される「雪平鍋」は、雪のような打ち出しの模様から名が付いたとも言われています。
行平鍋(雪平鍋)
雪平鍋を使うメリットと向いている料理
雪平鍋はひとつ持っているだけで大抵の料理ができる万能な鍋。
簡単な自炊をするくらいなら持っておいて損はないでしょう。
前述した雪平鍋の特徴を元に、雪平鍋を使うメリットをまとめてみました。
- 注ぎ口があるので片手で汁物が移しやすい
- 他の鍋よりも早く調理ができる
- 炒め物や揚げ物以外は雪平鍋でまかなえる
雪平鍋はどんな料理に向いている?
雪平鍋は、基本的にゆでたり煮たりする料理に向いています。
薄手で熱伝導率が良く、早く火が通るからです。
逆に、強火で炒める料理は不向きだと思ってください。特にアルミは焦げつきやすく、炒め物には不向きです。
また、雪平鍋は保温力があまりないので、揚げ物にも適していません。
適正な使い方で雪平鍋を活用するようにしてください。
- 野菜や麺を茹でる料理
- 煮物(筑前煮、魚の煮付け、ひじき煮など)
- 汁物
雪平鍋の選び方(素材・サイズ・加工)
雪平鍋は軽くて熱伝導率の良い銅やアルミニウム製が多いですが、最近ではIHコンロでも使えるよう、底面がステンレスでコーティングされたものやオールステンレス製のものも増えてきています。
こちらでは、使いやすい雪平鍋を選ぶためのポイントを「素材」・「サイズ」・「加工の有無」に分けてお伝えします。
雪平鍋の素材
雪平鍋の素材で主流なものに「アルミ製」「銅製」「ステンレス製」があります。
1つ1つ特徴と違いを見ていきましょう。
アルミ製の雪平鍋
アルミは軽くて熱伝導率がよいのが特徴です。
軽さを求める場合や、とにかく早くお湯を沸かしたい場合にピッタリ。
ステンレスや銅よりも安く、気軽に購入できるところもうれしいですね。
ただし、耐久性がやや低いのがデメリットです。
また、酸やアルカリ性に弱いという性質があるので、作った料理を長い間雪平鍋に入れておくと変色する可能性があります。
料理をした後はできるだけ早く料理をお皿などに移し、使った後のお手入れを怠らないことが長く使うポイントです。
価格 | ◎ |
熱伝導率 | 〇 |
耐久性 | △ |
お手入れのしやすさ | △ |
熱源 | ガス、IH(IHの種類によっては使用不可な場合があります) |
銅製の雪平鍋
銅は何といっても、熱伝導率2ある物質の熱の伝わりやすさの値が抜群なのが特徴です。
アルミよりも熱伝導率がよく、早くお湯が沸いたり、火の通りにムラが少なかったりします。
また、丈夫なので、大切に使えば長年の相棒になるでしょう。
デメリットは、お値段が高い、お手入れがしにくい、重いといった点が挙げられます。
また、アルミ製と同じく酸やアルカリ性にも反応するので、長く料理を入れっぱなしにしておくのもおすすめできません。
価格 | △ |
熱伝導率 | ◎ |
耐久性 | ◎ |
お手入れのしやすさ | △ |
熱源 | ガス、IH(IHの種類によっては使用不可な場合があります) |
ステンレス製の雪平鍋
ステンレスはアルミや銅に比べ、丈夫で酸やアルカリ性にも強く扱いやすい素材です。
焦げてしまった場合も、簡単に焦げが落とせるのでお手入れが楽という特徴もあります。
また、IHにも対応しているものが多く、熱源を気にせず使うことができるのもうれしいポイント。
雪平鍋によく使われる素材の中では、最もバランスのとれた素材と言えるでしょう。
デメリットをあげるとすれば、アルミや銅に比べ熱伝導率が劣るところ。温まるまでに少し時間が必要です。
価格 | 〇 |
熱伝導率 | △ |
耐久性 | 〇 |
お手入れのしやすさ | ◎ |
熱源 | ガス、IH |
使いやすいサイズ
雪平鍋を選ぶ上で、サイズ選びも重要になります。
一般的な片手鍋を選ぶときと同じく、作る料理の量や用途に応じて適正なサイズを見極めましょう。
4人家族だと、20cmのものがあれば十分でしょう。あまり大きすぎるものだと扱いにくくなるかもしれません。
加工の有無
最後に鍋の加工の有無です。
雪平鍋の中には、内側がフッ素加工され焦げつきにくくなったものがあります。
煮物だけでなく炒め煮をしたい場合や、少しでもお手入れを楽にしたい場合は、フッ素加工されているものを選ぶとよいでしょう。
ただし、加工なしのものに比べるとお値段が高くなるので、煮るだけしか使わないのであれば、加工なしでも十分です。
雪平鍋の正しいお手入れ方法
アルミ製や銅製の雪平鍋の弱点が、熱伝導率が良い分焦げ付きやすいところ。
長期間雪平鍋を使っていると、焦げつきや内側の黒ずみが気になるようになることが想定されます。
ここでは、雪平鍋の正しいお手入れ方法を素材別にお伝えします。
アルミ製の雪平鍋のお手入れ
先ほども触れたように、アルミは酸やアルカリ性に弱いので、調味料や食材によっては変色を招く可能性があります。
そのため、調理後はなるべく早めにお皿などの器に移し、中性洗剤で洗うようにしましょう。
使い始める前のポイント
アルミ製の雪平鍋は、使い始めに鍋に水と野菜のくずを入れて10分ほど煮てください。
このひと手間をかけることで、鍋肌に酸化被膜3金属の表面に発生する不動態の被膜。ふつう空気中の酸素に触れて自然発生する被膜を指し、金属と空気が直接触れることを防ぐ保護膜としての効果をもつが作られ、黒ずみが防止できます。
焦げついた時のお手入れポイント
焦げついた時は、焦げの部分が隠れるくらい水を入れて沸騰させます。その後、一晩放置して固めのスポンジでこすりましょう。
また、水を入れて1日天日干しをし、その後水なしでもう1日天日干しをし、スポンジでこするという方法もあります。
どうしても焦げが落ちないなら、クレンザーやスチールウールで擦りましょう。
内側に加工がしてあるものはNGなので注意してください。
黒ずんできた時のお手入れポイント
レモンの輪切りと水を入れて10分程度煮てみましょう。その後、スポンジでこすればキレイになります。
レモンの代わりにリンゴの皮やクエン酸でもOKです。
どうしても落ちない場合は、クレンザーやスチールウールでやさしく擦りましょう(内側に加工がしてあるものはNG)。
銅製の雪平鍋のお手入れ
銅製の雪平鍋はお手入れが少し大変ですが、大切に使えば長年の相棒になります。
使い始める前にひと手間かけるだけでお手入れを楽にすることもできるので、ぜひ参考にしてください。
使い始める前のポイント
購入したばかりの銅製の雪平鍋は、酸化を防ぐために「ラッカー」という塗料が塗られています。
この塗料が付いたまま使い始めると焦げつきの原因になるので、たっぷり水を張って15分ほど沸騰させましょう。重曹を加えるとより効果的です。
それでもラッカーが残っている場合は、シンナーや除光液で拭き取りましょう。
焦げついた時のお手入れポイント
焦げついてしまったら、鍋に水を張り10分程度煮て焦げをやわらかくします。
その後、スポンジでこすって焦げを落としましょう。
緑青(ろくしょう)が出た時のお手入れポイント
緑青とは金属に発生する青みがかった緑色のサビのこと。
水分や塩分などが残っていると、緑青が発生しやすくなります。
放っておくとどんどん広がるので、早めに対策をしましょう。
落とし方は粒子の細かいクリームクレンザーを使い、やわらかいスポンジでこすればOKです。
ステンレス製の雪平鍋のお手入れ
ステンレス製の雪平鍋は酸やアルカリ性に強く、他の素材に比べるとお手入れが楽です。
とはいえ、鍋である以上使っているうちに焦げ付いたり黒ずんだりするので、正しい方法でお手入れしましょう。
使い始める前のポイント
スポンジに中性洗剤を含ませて、洗ってから使いましょう。その他のお手入れは不要です。
焦げついた時のお手入れポイント
焦げついた場合は、クレンザーをナイロンたわしに含ませて、やさしく磨きましょう。
頑固な焦げつきは、水を張って一度煮立て、焦げをゆるませてからナイロンたわしとクレンザーを使って磨きます。
変色した時のお手入れポイント
ステンレスは黒くなることはありませんが、使い続けると虹色のモヤモヤが出てくることがあります。
これをキレイにするには、水500mlあたり大さじ1杯くらいのクエン酸を加えて10分ほど煮まましょう。
その後30分程度放置してからスポンジでこすると、本来の色に戻ります。
黒ずんだ時のお手入れポイント
銅鍋をしばらく使っていると、火があたる部分の変色が見られます。
これは酸化被膜なので緑青の発生を抑えてくれるのですが、やはり見た目が悪く、気になるかもしれません。
そんなときは、専用のクレンザーやクリームクレンザーなどを使い、一定方向に磨きましょう。
おすすめの雪平鍋5選
こちらではおすすめの雪平鍋をいくつかご紹介します。
今回は2~4人程度の汁物を作る時に便利な18cmの雪平鍋を集めました。
リーズナブルなアルミ製の雪平鍋

フッ素加工付きでお手入れが楽なアルミ製の雪平鍋

傷みにくい樹脂製の取っ手が自慢の雪平鍋

専用のフタが別売りで手に入る雪平鍋

使うほどに味わい深くなる銅製の雪平鍋

雪平鍋で煮物を作る時に便利な落とし蓋

ひとつは持っておきたい雪平鍋
雪平鍋は、煮物などの料理以外にも、お湯を沸かしたいとき、野菜や卵をゆでるときなどに役立ちます。
サイズや素材によっても使い勝手が異なるので、ぜひこちらの記事を活用して自分に合ったものを選んでくださいね。