かつお節と並び、日本が誇る出汁といえば「昆布」。
実は昆布にもさまざまな種類があり、それぞれに味や香りが違うなどの個性があることをご存知ですか? 出汁を知ることがお料理上手と健康への近道であるなら、昆布についても知っておきたいですよね。
今回は昆布のアレコレについて、料理や健康に役立つ豆知識をみなさんにお届けします!
まずはカンタンに、昆布の基本をおさらい
現在、市場に流通している昆布のおよそ9割は北海道産。北海道はまさに昆布のメッカといえます。
昆布文化発祥の地である北海道から、それが日本全国に昆布が広がったのはなんと室町時代! 特に精進料理が発展していた京都で歓迎されました。日本沿岸の港町を筆頭に昆布文化が全国各地に広がっていき、日本人の国民食として今日まで愛されてきたのです。
昆布がおいしい理由
昆布がおいしいのは、昆布に含まれる「グルタミン酸」といううま味成分のお陰。
1907年に発見されたこの成分はアミノ酸の一種で、トマトや根菜類、チーズなどにも含まれています。このグルタミン酸をうまく引き出すのが、昆布出汁を上手にとる秘訣です。
個性豊かな昆布たち
出汁に向いているのは、主に日高昆布・利尻昆布・羅臼昆布・真昆布の4種類。
それぞれの特徴を簡単にご紹介します。
日高昆布
北海道の日高地方で生産される、家庭にもっとも身近な昆布。日高昆布は繊維質が柔らかいため火が通りやすく、歯ざわりがいいのが特徴です。
出汁用にはもちろん、つくだ煮や昆布巻きなどに使われるのもこの種類。
利尻昆布
北海道北部、稚内のとなりに位置する利尻島近辺で生産される昆布が、この利尻昆布。特に出汁文化が根強い京都で愛好されている昆布で、うま味が強く香りがいいのが特徴。
出汁昆布の代表ともいえる昆布ですが、日高昆布よりもややお値段が高め。
羅臼(らうす)昆布
羅臼(らうす)という聞きなれない言葉、実はこれ北海道東部の地名です。北海道はアイヌ文化が今も地名や言語などに残されており、不思議な響きの地名が実はたくさんあるんです。
羅臼昆布はキングオブ昆布と言っても過言ではなく、とにかくグルタミン酸が豊富。はっきりとした昆布のうま味と香りを感じられる昆布で、とても濃厚なコクがあるのが特徴。
ただ、羅臼昆布で出汁をひくと汁が緑色~琥珀色に色づくため、料理に外見にも配慮する京都ではあまり好まれない様子。
肉厚で柔らかく幅広なのが特徴で、煮昆布などに使われます。
真昆布
「山だし昆布」とも呼ばれる真昆布は、癖のない上品な出汁がとれるため、やはり関西で好まれる傾向があります。函館が主な生産地で、見た目も黒々として立派なもの。もちろんお鍋とも相性が抜群です。
そのほかの昆布
これまでに紹介したのが、私たちにもっとも身近で手に入りやすい昆布。このほかにも釧路で生産される「長昆布」や、小樽で生産される「細目昆布」などがあります。
長昆布は昆布巻きなどに、細目昆布はとろろ昆布などに使われます。これらの特徴を踏まえて料理にのぞむと、料理がいっそういい仕上がりになりますよ。
昆布出汁の上手な取り方
■昆布を吹いて汚れをとる
固く絞った布巾やタオルなどで昆布の表面を優しく拭きます。これは昆布の表面についているゴミやホコリを除去するのが目的ですが、昆布の表面についている白い粉は実はうま味成分が結晶化したもの。この白い粉はできるだけ除去しないよう気をつけたいですね。
■水につける
昆布は水につけ置くことでスッキリした出汁をとることができます。最初から加熱して出汁をとるよりも上品な出汁がとれるので、加熱する三十分から一時間前から水につけておくのがオススメですよ。水につけたまま一晩置くだけでも上品な出汁がとれます。
■加熱する
昆布を加熱して出汁をとりますが、あまり温度を高くし過ぎたり長く煮込んだりすると、昆布のぬめりや臭みが出てしまいます。理想的なのは湯がおよそ60℃まで高まったところで昆布を取り出す方法。鍋物など味の濃い料理であればそのまま入れっぱなしで一緒に食べるのもいいですね。
昆布の「だしがら」には栄養がいっぱい?
昆布は、出汁をとってその役目を終えるわけではありません。実は、だしがらにはカリウムやマグネシウム、ヨードなどの栄養素がたくさん残っているんです。食物繊維の一種、アルギン酸に至っては95%以上も残っているというデータも。
私はだしがらの昆布を干してから二番出汁、三番出汁に使うことがよくあります。さすがに一番出汁よりも味は落ちますが、新しい昆布を適宜足してあげれば昆布の節約にもなります。
また、だしがら昆布を細かく刻んで松前漬けをつくったり、そのままご飯のふりかけやおにぎりの具材に。しょうゆと酒、みりんで煮詰めてお酒のお供に楽しむのもよさそうですね^^
【気になる疑問】昆布は、どうして海の中で出汁にならないの?
お吸い物や鍋物、パエリヤやパスタなど和洋問わず料理に奥行きを与えてくれる昆布。でも、こんなにおいしい出汁がとれるので、どうして昆布は海の中で出汁にならないの?──と疑問に感じたことがある方もいるはず。
実は昆布が海で出汁にならないのは、昆布が生きているからなんです。
昆布の旨み成分であるグルタミン酸は細胞膜の中にあるため、海の中で生きているうちは、それが細胞膜の外に出ることはありません。また、海中で生命活動を終えた場合もバクテリアによって分解されてしまうため、海の中で出汁になることはありません。昆布が刈り取られて初めて細胞膜が壊れ、グルタミン酸が外に出る状態になります。さらにそれを干して乾燥させることで旨みが凝縮され、昆布が熟成するのです。
中には、昆布を採ってから浜に並べて天日で干し、その後夜露にあてて湿らせてから昆布を棒に巻き付けつけて伸ばして一晩置き、さらに重しをして熟成させてから再び天日干しにする──という、とても手間をかけてつくられる昆布も。
ただ干すだけでなく、昆布はさまざまな工程を経て作られているんですよ。
最後に
昆布の上手な活用法、いかがでしたか?
毎日出汁をとっていると、昆布のだしがらがたくさん出てしまいます。私はそれを刻んでご飯やサラダに散らしたり、豆腐と一緒にお味噌汁の具材にしたりなどで工夫して接種するようにしています。
職人さんたちが丹精込めてつくってくれている昆布。おいしくて健康にもいい伝統食品を、私たちも大切に扱いたいですね。
