こだわりにはワケがある!プロが鋼の包丁を選ぶ理由とは

ご家庭にはステンレス包丁、和食料理店の調理場などプロの現場では鋼の包丁。

昔は当たり前だったこの図式も、今はそうでもありません。家庭料理にこだわる人が増えるにつれてご家庭で包丁にこだわる人が増えたのと、切れ味鋭い優秀な合金包丁がプロの現場でも愛用されるようになったからです。

でも実は、鋼の包丁にも色々なグレードや種類があるってご存知でしたか? 今回は鋼の包丁の購入を考えている方のため、鋼包丁について詳しくお話しします!

鋼の種類について

和包丁の種類

和包丁は用途別にすべてで40以上もの種類がありますが、製法は実はそう多くありません。大別すると「本焼(ほんやき)」「霞(かすみ、一般的には合わせ包丁のこと)」「プレス・型抜き(利器材)」の三種類に分けられます。

本焼包丁

本焼というのは職人さんが手打ちで作るいわゆる“高級包丁”で、一枚の鋼から作られます。鉄を鍛えて丹念に作られるため硬く刃もちがよく、何よりも切れ味は最上。でも、鋼特有の錆びやすいという弱点があります。

霞包丁

霞は何枚かの鋼材を合わせて一枚にした包丁をいい、普通は鋼を芯に軟鉄を貼り合わせます。なぜ「霞」というのかというと、軟鉄はその性質上、仕上げ砥石などで磨き上げるとツヤ消しのように“かすむ”から。刃が柔らかいので研ぎやすいというのがメリットですが、それはつまり刃持ちが悪いということでもあります。

プレス・型抜きの包丁

工場などで量産される包丁はプレス・型抜きされるものが多く、大量生産ができる上に価格も抑えられるというメリットがあります。また、霞包丁の中にもプレス・型抜きで作られているものがあります。これらは鋼材メーカーが作るもので、刃物メーカーが作るものとはまた違うものと見るのがいいかもしれません。

価格面では本焼がもっとも高く、その次に霞。最後のプレス・型抜きは手頃な価格で販売されているものが多く見受けられます。鋼の包丁を選ぶ際には、品質の良し悪し管理の難易度価格。この三つが判断材料となりそうですね。

鋼の素材(鋼材)とグレード

鋼の素材(鋼材)とグレード

そもそも鋼(はがね)ってなに?

鋼の包丁にはさまざまな鋼材(素材)が採用されていますが、もともとはすべて鉄です。炭素(C)やケイ素(Si)、マンガン(Mn)などの含有量によって鉄の硬さや性質が変わってきますが、特に鉄と炭素は切っても切れない関係。鉄はもともと数パーセントの炭素を含んでいるんですよ。

今も研究され続けている鋼

炭素の含有量が多いと鉄は硬くなりますが、同時に衝撃に弱くなります。メーカーは、この炭素の量を調整して包丁にちょうどいい鋼材をそれぞれ研究し作っているのです。そうして開発された鉄(鋼)にはメーカーごとにそれぞれ商品名がつけられます。有名なところですと日立金属株式会社の安来鋼(ヤスキハガネと読みます。青紙鋼、白紙鋼、黄紙鋼のシリーズ等が有名)でしょうか。

鋼の定義

一般的には炭素含有量が2パーセントまでの鉄を鋼(はがね)といい、2~7パーセント程度のものを鋳鉄(ちゅうてつ)といいます。鋼包丁に含まれる炭素は1~1.5パーセントあたりが多いため、鋼(はがね)に分類されます。包丁にちょうどいい鉄の性質がこの辺りということでしょう。

ちなみに鋳鉄は鋼よりも硬く耐摩耗性があるので、自動車の部品や一般機械部品に使われることが多いようです。

鋼に耐腐食性の強いクロム(Cr)を混ぜると、錆びに強い特殊鋼のできあがり。この辺のメーカーごとの配合センスや傾向を楽しむのも、包丁選びの一つのおもしろさかもしれませんね。

鋼の硬度について

鋼の硬度

包丁は、硬ければ硬いほど鋭く切れる歯がつきます。しかし、硬ければいいというわけでもありません。硬くなると今度は柔軟性(しなりや粘り)が犠牲になり、衝撃に弱い鋼になってしまいます。つまり、刃こぼれがしやすくなるということです。

逆に柔らかすぎると、今度はすぐに切れ止み(切れなくなる)ます。剛と柔のバランスをいかにコントロールするかが、メーカーや職人さんの腕の見せ所なんです。

さて、鋼材の硬度には基準があり、刃物の場合は0~70段階で区別される「HRC(Rockwell Hardness C-scale)」で表記されるのが一般的です。これはロックウェル硬さの計測法というもので、簡単にいえば対象の鋼材に圧力をかけ、どのくらいでへこむかというもの。一般的な鋼包丁の硬度は60前後で、本焼ですと60以上がほとんどです。包丁選びの一つの判断材料として気に留めておいてくださいね。

鋼の包丁の弱点

鋼の包丁に総じていえるのが「錆びる」ということです。中には錆びにくいものもありますが、ステンレスほどの耐腐食性があるわけではありません。大なり小なりやはりメンテナンスが必要です。

また、前項でお話しした硬度の違いも、包丁を選ぶ上では無視できません。本焼になれば硬度が高く切れ味が鋭い分、研ぎにくくなります。要するにメンテナンスの難易度があがるということで、これを嫌って霞包丁を使うという板前さんも少なくない様子。

霞包丁などはメンテナンス製が高く扱いやすいですが、本焼に比べるとどうしても切れ味は見劣りします。とはいえ、刺身の切り口の細胞の状態やそこから流れ出る旨み、見た目の仕上がりなどにプロ目線でこだわるのでなければ、本焼に執着することはありません。霞包丁にも、プロの仕事に耐え得るものはたくさんあるからです。本焼は高いですしね^^;

プロが鋼の包丁を選ぶ理由

鋼の包丁を使って切った寿司

日本料理店の調理現場で活躍されている板前さんは、鋼の包丁を使うケースが多いようです。その理由はやはり、和包丁がそれぞれの日本料理に最適化されているということ(たとえば刺身には柳刃、おろしには出刃といった具合に)。そして何よりも、和包丁には日本刀をルーツとした鋼の加工技術(しなやかで切れる鋼の鍛造技術)がふんだんに取り入れられているからでしょう。世界広しとはいえ、日本の刃物加工の技術はやはり随一なのです。

そんな日本の伝統文化を尊重したいという心意気も、和の料理人には少なからずあるはず。料理やそれにかかわる技術や文化を大切にしたいと思えば、日本独自に発展した鍛造技術の素晴らしさにも自ずと目が向くものなのかもしれません。利便性はもちろんのこと、その背景にある歴史や伝統まで重んじるところに、和の料理人としての真髄がありそうです。

最後に

鋼の包丁には、メンテナンスの難しさがありますが、それを差し引いてもこだわりたい魅力や品質、歴史があるものです。ここまでお読みになった方はやはり、鋼の包丁とのご縁があるのだと思います。

繰り返しになりますが、鋼の包丁を選ぶ上で判断基準となるのが、品質の良し悪し管理の難易度価格の三つ。マメに手入れをしてでも切れ味や料理の仕上がりを追及するのなら本焼を。切れ味とメンテナンス製ともにほどよいところがよければ霞。コストパフォーマンスにこだわるのならプレス・型抜きという選択になるでしょう。この三つをはかりにかけて、自分に合った一本を探してみてくださいね。

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