大根とおろし器があれば作れる「大根おろし」。
でも、時間がかかって、疲れているとちょっと面倒だなと思う時もありますよね。
「大根おろしに時間をかけたくない!」「せっかくなら美味しい大根おろしを食べたい!」
⇒「もっと楽~に美味しくおろせる大根おろし器ってないの?」
ということで。今回のテーマは「大根おろし器」の比較!
ムダに力を入れずにささっと美味しい大根おろしを作れるような”理想の大根のおろし器”を求めて、トコトン実験・調査していきます。
今回比較するのは、昔ながらの銅製のおろし金から、身近な人気キッチンメーカーの製品、大根おろし好きが絶賛する木製のおろし道具「鬼おろし」まで、全7種類!
他にも、知らないと損する【大根おろし器の選び方のコツ】もご紹介しますので、ぜひ最後までお付き合いください。
それでは、Let’sくらべルート!
大根おろしとおろし金の歴史
おろし金の歴史はとても古く、江戸時代には既に存在していたことが、正徳2年(1712年)刊行の『和漢三才図絵』(百科事典のような書物)に見られる説明が見られることからも分かっています。
当時、大根をおろすのに使われていたのは、材質は銅、形は末広がりのちりとり型のおろし金。
まさしく、今回比較にも使っている、コレ(↓)と同じ形状のもの!
そんな昔から大根おろしが食べられていたこともびっくりですが、材質と形が今も変わらずあることがすごいですよね。
おろし金とおろし器の違いは?
「おろし器」とは、大根をおろすための専用の道具というわけではなく、他にもワサビ、生姜、山芋や、りんごなどをすりおろすために用いられる調理器具全般の総称です。
なかにはチーズおろし器といった専用の食材のために作られているものもありますが、それも含めて「おろす」という調理方法に用いられる器具。
その中の一種であり昔から日本で使われているおろし金。
おろし金の【金】とは、文字通り金属製というところからきています。
最近では定義があいまいな「おろし金」
昔は銅製が主流だった「おろし金」も、最近ではアルミやステンレス製のおろし金も増えています。
なかにはプラスチック製のものを“おろし金”と呼ぶという方もいて、その境界はあいまい。
でも、やっぱり金属製のものを「おろし金」というほうがしっくりきますね。
・・・というわけで、今回の比較では材質や形の異なる大根おろしに向いてそうな「おろし金」を中心に、様々な「おろし器」を集めてみました!
価格、材質、形の違う「おろし器」7種類が大集合!
最近では100円ショップにも取り扱いのある「おろし器」。
大根おろし器やおろし金はとても値段の幅が広く、材質や形もさまざま。使い勝手もそれぞれ違うんです。
今回、比較のために集めたのは、こちらの7種類の商品。順番に紹介します。
- セラミック大根おろし器(パール金属株式会社)
- KITCHEN FILE おろし器(貝印株式会社)
- 銅おろし金 ダンチュウ(和平フレイズ株式会社)
- スピーディおろし金(株式会社ミネックスメタル)
- アーチ型おろし器(株式会社マーナ)
- おろしプレート セレクト100(貝印株式会社)
- 鬼オロシ(有限会社田宮忠)
本当にいろいろな種類がありますね。
それぞれのおろし金の材質と刃の構造の違い
おろし金というと、平らな金属製の板に並んだ細かな突起というかトゲトゲした刃のようなものを思い浮かべませんか?
この突起の部分に大根や生姜などの食材が引っ掛かることで、きめ細かな断片に「おろす」できるのです。
銅のおろし金
例えば、こちらは先ほどご紹介した銅製のおろし金③銅おろし金 ダンチュウの刃。
触ると痛いくらい、トゲトゲしています。
実は、この刃の部分にはひとつの法則があります。
よく見てみると、「互い違い」になっていますね?
これは、大根をするときの前後の動きどちらにも大根が引っかかるようになっているんです。
こういう金属の板を掻き起した刃のことを、「目」といって、この目を作ることを「目立て」といいます。
プロも愛用する銅製のおろし金
この銅のおろし金は、持ち手とすりおろす面の色が違います。
持ち手のほうが10円玉でおなじみの銅の色。
銅には抗菌作用がありますが、錆びやすい材質なので、すりおろす面は錫(すず)でメッキ加工されています。
今は、プロの方や大根おろしにこだわる方が、一生ものの道具として求められることが多いとか。
それだけにお値段は高めで、このおろし金は8000円くらい。
ちょっとビックリしますね。
アルミ製のおろし金
金属製の部類の中でも、こちらはアルミ製の②KITCHEN FILE おろし器。
同じくトゲトゲの刃があって、互い違いになっていますね。
でも③銅おろし金 ダンチュウの刃より小さくて、鋭さはそんなに感じられません。
比べてみると、刃のとんがり具合が全然違います。
メーカーさんの話では、この刃の大きさや角度で大根おろしの仕上がりが違ってくるそう。
プラスチック製「おろし器」にも工夫がたくさん!
では、最近多いプラスチック製の刃はどうなっているの?
ということで、⑥おろしプレート セレクト100を見てみると、三角錐のような刃がまっすぐ立つようについています。
刃は穴をはさむように向かい合わせになっていて、刃の大きさも大きいものと小さいものがありますね。
規則正しく並んでいるようで、少し変化がつけられているのは、大根を簡単にスムーズにおろすための工夫。
刃が規則正しすぎると、大根に一定の道ができてしまい、おろしにくくなるからなんです。
一度使うとはまる!?セラミックおろしや鬼おろし
金属製やプラスチック製が多くを占める大根おろし器の中では珍しい、こんな材質のものがあります。
こちらは、①セラミック大根おろし器。
耐久性があり、色やニオイがつきにく材質です。
刃は、先端が丸めの三角錐で、放射状に並んでいます。
おろし金だと金属臭が気になるけどプラスチックは耐久性が心配という方にとてもおすすめ。
セラミック製のおろし器を一度使ってみてやみつきになり、長く愛用しているという方は多数おられます。
こちらは竹製の⑦鬼オロシ。
おそらく銅製のおろし金が使われるより以前に、原型としてあったのではないかと言われています。
「しもつかれ」などの郷土料理で欠かせない調理器具でもあるので、お住まいの地域によっては身近に感じる方もおられるかもしれませんね。
鬼おろしは鬼の刃を連想させるところからその名がついたそうですが、確かに!
「こんなギザギザの大きな刃で、大根がおろせるの?」と心配になりますが、ザクザクとした食感で大根本来の味が楽しめると静かなブームになっています。
7種類の大根おろしの材質をまとめました
さて、ここまでご紹介してきた総勢7種類の材質と刃の形、価格を表にまとめてみました。
こうして見ると、材質だけでなく持ち手の有無や形状、価格など、違いが色々と気になりますね。
では、ここからは見た目の違いだけでなく、使い勝手などもしっかりと比較実験で検証していきたいと思います!
作業効率を比較!30秒でどれだけ大根をおろせる?
おろし金の材質や刃の形状の違いがわかったところで、やっぱり一番気になるのは「大根をおろす時にどれがラクに手早くおろせるの?」ってことですよね。
・・・というわけで、これから「30秒間でどれだけおろせるか」を実験していきます!
- セラミック大根おろし器(パール金属株式会社)
- KITCHEN FILE おろし器(貝印株式会社)
- 銅おろし金 ダンチュウ(和平フレイズ株式会社)
- スピーディおろし金(株式会社ミネックスメタル)
- アーチ型おろし器(株式会社マーナ)
- おろしプレート セレクト100(貝印株式会社)
- 鬼オロシ(有限会社田宮忠)
作業効率のいい大根おろし器は?
まずは実験準備。
大根の太さが同じ真ん中部分を長さ10cmに切って、さらに縦4等分に切ります。
切りそろえた大根を7種類の大根おろし器でおろしていくわけですが、制限時間は30秒!
大根おろしの量が多いほど、作業効率のいい大根おろし器ということになりますね。
それでは、順番に大根をおろしていきますよ。
よーいドン!
さてさて、どうなるのか?
大根おろしの量は2倍以上の差!
実験終了。
それぞれの大根おろしをガラスの器に移してみました。
量の多いもの少ないもの、パッと見ただけでも違いが分かりますね。
大根おろしの重さを量った結果を表にまとめました。それがこちら。
一番量が多かったのは⑥おろしプレート セレクト100で69g。
残りの大根はこんなに小さくなりました!
僅差で2位だったのは⑤アーチ型おろし器。
大根おろしの量は64gでした。
一番少なかったのは、②KITCHEN FILE おろし器で27g。
上位の2種類とくらべると、大根おろしの量はなんと半分以下という結果に。
結果の差は「おろす面の穴」にあり
大根おろしの量が半分以下となると、必要な時間は2倍以上かかることになります。
うーん…この差は大きい!
残念ながら、最下位だった②KITCHEN FILE おろし器は、いわゆる昔ながらの刃がかきおこされたおろし金タイプ。
大根をおろしていくと、おろす面に大根おろしが溜まって刃が埋まっていくので、どんどんおろしにくくなっていきます。
こちらは、2位の⑤アーチ型おろし器ですが、おろす面に穴が空いているので、おろした大根が下に落ちます。
おろす面に大根おろしが溜まりにくいので、最後までおろしやすくペースが保てます。
ということは、差はおろす面の穴にあり?
確かに1位の⑥おろしプレート セレクト100にも穴が空いていますね。
おろす面が広いとさらにおろしやすい!
また、こちらの2種類は、どちらもおろす面が長くて広いのが特徴。
長さがあると大根が大きく動かせるので、おろしやすいんです。
おろしやすさが効率の良さにつながっているといえますね。
おろせた量をランキングにして、穴の有無とおろす面の長さをまとめました。
穴が空いているおろし器が上位を独占。
おろす面の長さについても、例外はあるものの長いおろし器のほうが上位にランキングされていますね!
プラスチック製のおろし器の寿命は?
ただ、1位と2位の大根おろし器はプラスチック製。他の材質とくらべて刃の劣化が速いといわれています。
刃が劣化すると、もちろん作業効率は悪くなります。
最近おろしにくくなったかな?と感じたら、それは取り替え時期です。新しいおろし器の購入を検討した方が良いでしょう。
大根おろしの「美味しさ」の基準とは?
大根おろし器を選ぶときは、「効率の良さ」はもちろん、「美味しさ」にもこだわりたいですよね。大根おろしの美味しさといえば、「食感」や「辛さ」そして「水分量」。
美味しいと感じる基準は、それぞれ好みもあるかもしれませんが、これらの違いは気になるところ…。
この実験でもここまでと同じ、下記の7種類の大根おろし器を比較しています。
- セラミック大根おろし器(パール金属株式会社)
- KITCHEN FILE おろし器(貝印株式会社)
- 銅おろし金 ダンチュウ(和平フレイズ株式会社)
- スピーディおろし金(株式会社ミネックスメタル)
- アーチ型おろし器(株式会社マーナ)
- おろしプレート セレクト100(貝印株式会社)
- 鬼オロシ(有限会社田宮忠)
えっ!大根おろしってこんなに違いがあるの?
おろした大根を見てみると、粒の細かいもの、粗いものなどさまざま。
あれれ?これはどういうこと?
おろし器によって大根おろしの仕上がりは違ってきます。
細かい大根おろしは、どのおろし器でおろしたの?
粗い大根おろしはどれで…?
というわけで、大根おろしの粒の細かさについて調べてみました。
大根おろしが細かくなったおろし器、粗くなったおろし器、そしてその中間ぐらいになったものと、グループに分けてみました。
実験の様子はこちら!
ダントツの粗さ!鬼おろし
粗いグループに入ったのは、⑦鬼オロシ。
はじめはおろしにくかったのですが、大根に刃の筋のようなものができてくると、それをきっかけにペースアップ。
刃が鬼の歯みたいということから、鬼おろしという名前がついたそうですが、確かにこの刃を見れば、大根おろしが一番粗いというのも納得。
器に入れたらこんなにこんもり。
大根の粒が粗いと、ボリュームたっぷりの大根おろしに。
今回はおろした大根を、パソコンにつないで撮影ができるこちらの顕微鏡で見てみます。
顕微鏡の倍率は50倍。撮影した画像はこうなりました。
⑦鬼オロシでおろした大根は、大根の粒の形がはっきりと分かるほど存在感がありますね。
中間ぐらいの大根おろしは?
次は粗くもなくて細かくもない、その中間の大根おろし。
中間グループに入ったのは、④スピーディおろし金と⑤アーチ型おろし器、⑥おろしプレート セレクト100でした。
こちらは、⑤アーチ型おろし器でおろした大根おろし。
粒はザラザラした感じで、まわりに少し水分が出ていますね。
大根おろしといえば、この中間ぐらいの大根おろしをイメージする方が多いのでは?
さっそく、この大根おろしも顕微鏡で見てみました。
やっぱり、さっきの⑦鬼オロシでおろしたものより粒が小さいですね。
それに大根の色が、少し透き通っています。
細かい大根おろしは?
細かいグループに入ったのは、①セラミック大根おろし器と②KITCHEN FILE おろし器、③銅おろし金 ダンチュウ。
ちなみに、この3種類は、前回の実験で大根をおろす効率ワースト3のおろし器。
もしかすると、「細かい大根おろし=おろす時間がかかる」という法則が成り立つのかも。
③銅おろし金 ダンチュウは、なでるようなやさしい感覚で、おろせる量も少しずつでした。
仕上がった大根おろしの粒は確認できない細かさ。
さきほどよりもさらに水分が目立ちます。
顕微鏡の画像を見てみると、全体的に水分に包まれたようです。
食感の違いをチェック
これだけ細かさが違うと、もちろん食感も違います。
粗い大根おろしはザクザク。
大根サラダを食べているみたいという声もありました。
中間の大根おろしは、粒の食感も感じられ少し水分もあってシャキシャキ。
細かいのはしっとりしていてなめらか食感。
ただ、細かい大根おろしは辛みを感じました。
「大根おろしは辛いのが好き!」という方もいれば、「辛いのが苦手」という方もおられますね。
大根おろしが辛い!その理由は?
よく、夏大根は辛いとか、大根は先端のほうが辛いと言われますね。
これは、辛みのもとになる成分が多く含まれているからなのです。
大根そのものに理由があるのはもちろんですが、実は、大根おろし器によっても辛さは変わってきます。
大根をおろすと、イソチオシアネートという辛みの成分ができます。
これは、大根の繊維がたくさん壊れるほどできるので、細かくて水分の多い大根おろしのほうが辛くなるんです。
イソチオシアネートは揮発性(きはつせい)なので、30分ぐらいすると辛さは落ち着いてきます。
加熱しても辛さは和らぐそうですが、どちらの場合も栄養分は減ってしまうことをお忘れなく。
辛さ?食感?大根おろし器は何で選ぶ?
大根おろしの粒の細かさと水分、辛みの関係をまとめました。
粗い大根おろしは水分がほとんど出ないので、みぞれ煮やみぞれ鍋などは、お出汁が水っぽくならず、粗い粒に出汁が染み込むのでよりおいしくなるんだとか。
お好みの食感や、辛さだけでなく、メニューによって大根おろし器を変えてみるというのもいいかもしれません。
まとめ
おろし器の形状や材質によって、大根おろしの仕上がりに差が出ることが今回の実験で明らかになりました。
大根おろし器やおろし金に、スピーディーさや「おろしやすさ」を求めるか、それとも、大根おろしの仕上がりや食感にこだわるか。
あなたに合った大根おろし器を見つけるヒントになると嬉しいです♪
