「湯たんぽ」と聞くと、昔ながらの、金属製で楕円形の形をしたアイテムを想像する方もいるかもしれませんが、数年前からその良さが見直され、年々ファンが増えていることをご存知ですか?
金属製の湯たんぽだけでなく、最近は、レンジ対応のものや充電式など様々なタイプが販売され、用途などに応じて選べるようになっています。
この記事では、そうした湯たんぽの選び方や、メリット・デメリット、注意点などをご紹介すると同時に、シーンに応じたおすすめの湯たんぽを3つご紹介します。
目次
湯たんぽはエコなだけ?湯たんぽを使う4つのメリットとは?
湯たんぽとは、体を温めるために、お湯を入れて使う容器のことをいいます。
就寝前に布団に入れておけば、朝まで保温効果があるなど、暖房器具として長年愛用されています。
湯たんぽの歴史
湯たんぽは、元は中国から伝わったもので、「湯婆」と呼ばれていました1日本国語大辞典第二版編集委員会, 小学館国語辞典編集部 編. 日本国語大辞典 第8巻 第2版. 小学館, 2001.。
室町時代の書物『蔗軒日録』(室町時代中期の臨済宗の季弘大淑という学僧が記した日記)の文明18年(1486年)の10月9日の内容に「湯婆」の記載があることから、少なくとも室町時代中期にはすでに日本にあったことがわかります。
また、鎌倉時代に中国からこたつや行灯などと一緒に輸入された生活用具の一つであるとしている文献もあります。
当時の湯たんぽの、形状や素材などは不明ですが、現在の湯たんぽと同じ機能で使われていたとされます。
昔ながらのエコな暖房器具のメリット4つ
それぐらい昔からなじみの深い湯たんぽですが、電気やガスをほとんど使わず、お湯を入れるだけで手軽に暖が取れる、「エコな暖房器具」として注目されているだけでなく、他にもメリットがあります。
ここでは、そうした湯たんぽを使うメリットを、4つご紹介します。
あまり光熱費がかからず経済的
電気で温めたり、電子レンジで加熱したりするタイプの湯たんぽもありますが、エアコンやストーブなどを長時間使用するほど、電気やガスを使うわけではないので、光熱費をグッと抑えることができます。
また湯たんぽ自体も、比較的安価で長持ちするものが多く、とても家計にやさしい暖房器具といえます。
他の暖房器具と比べて乾燥しない
加湿しないでエアコンやストーブを使うと、室温は上がるにもかかわらず、湿度が高くならないので室内が乾燥します。その結果、喉などの粘膜が乾燥し、ウイルスへの防御力が低下、風邪などを発症します。
また、空気が乾燥すると、肌の水分が奪われ、肌荒れ、シミ、シワなどの原因にもなります。
湯たんぽは、そうしたエアコンやストーブを使わなくても暖をとれるので、乾燥を防ぐことができるのです。
優しいぬくもりを得られる
あらかじめ湯たんぽを入れておいた布団に入る時の感覚を思い浮かべ下さい。
温められた布団のぬくもりが、体全体を包み込む感覚は、湯たんぽでしか味わうことができません。
湯たんぽの温かさが朝までほんのり残るため、暖房効果だけでなく、リラックスして朝まで深い眠りにつくことができます。
ちなみに、筆者自身は、これが冬の就寝時の醍醐味だと思っています。
かわいいカバーでお洒落に楽しめる
低温やけどを防ぐため、湯たんぽを使う時は、必ずカバーを装着して使う必要があります。
最近柄、素材、色などの種類も豊富で、おしゃれでかわいいカバーも販売されているので、湯たんぽを使う時の気分や、場所に合わせて選ぶことができます。
体調が悪い時は少し落ち着いた色のカバーを使ったり、気分を上げたい時には、明るい色のカバーを使ったり。色々なバリエーションで楽しむことができます。
湯たんぽの種類や特徴、注意点は?
かつては、あまり湯たんぽの種類がありませんでしたが、徐々にファンが増え用途が多様化したためか、最近は色々な種類の湯たんぽがあります。
ここでは、湯たんぽの種類や機能、注意点などについてご紹介します。
金属製湯たんぽ
金属製で、お湯を入れると温かくなる、従来の湯たんぽです。金属の種類は、亜鉛メッキ鋼板(トタン)や銅などがありますが、金属製は熱伝導率(熱の伝わりやすさを表す)が高く、湯を入れるとすぐに温かく(熱く)なるという特徴があります。
加熱したお湯を湯たんぽの注ぎ口に注ぎ、栓をして使うのですが、筆者は子どもの時に、湯たんぽに入れようとした熱湯を足にこぼし、やけどした経験があります。
湯たんぽの注ぎ口にゆっくりとお湯を注ぎ入れるだけでなく、お湯の温度自体を70度~80度ぐらいにしておくと良いでしょう。
また、お湯は栓のところまでしっかり注ぎ、満タンにしましょう。満タンにしないと、湯たんぽ内部の気圧の変化の影響により、変形や破損の恐れがあります。
低温火傷に注意
やけどを防ぐために、湯たんぽには必ずカバーの装着が必要ですが、カバーをしていても、長時間直接肌に触れていたりすると、低温やけどのリスクがあります。時々湯たんぽを置く場所を変え、直接触れないよう心がけましょう。
最近は、直火やIHヒーター対応のアイテムもあるので、気になる方は、ぜひ取扱説明書を確認してみてくださいね。
金属製湯たんぽのデメリットは、使った後にそのまま放置しておくと、カビが発生してしまうことです。使った後は、必ず十分乾燥させて保管するようにしましょう。
陶器製湯たんぽ
金属製の湯たんぽが普及する以前は、陶器製の湯たんぽが一般的でした。
陶器製の湯たんぽの特徴は、体にじんわりと温かさを伝えることです。また、保温性も高く、朝まで温かさを保つことができます。
使う時は、重さと壊れやすさに注意
70度ぐらいに加熱したお湯を注ぎ口に注ぎ、栓をして使用しますが、陶器製湯たんぽは重く、壊れやすいというデメリットがあります。
ただでさえ重い陶器製湯たんぽに、満タンまでお湯を注いでしまうと、更に重くなり、持ち運びが困難になります。湯量は満タンの3/4ぐらいに抑えましょう。
壊れやすいので、ベッドから落として割ってしまわないよう大切に扱うこともお忘れなく。
金属製湯たんぽ同様、やけどしないためのカバーが必要です。低温やけどの恐れがあるため、長時間、湯たんぽに直接触れないようにしましょう。
プラスチック製湯たんぽ
サイズや形、色の豊富なバリエーションがあるのが特徴です。お求めやすい価格で、手入れも簡単にできるため、初めて購入する湯たんぽとしても適しています。
低温やけどのリスクを少なくするカバーの種類が多く、カバーで湯たんぽライフを楽しみたいという方にもおすすめです。
注ぎ口に70~80度ぐらいに加熱したお湯を注ぎ、栓をして使いますが、プラスチック製なので、熱湯を注ぐと、変形する恐れがあります。また、満タンまで湯を入れないと、内部に空気が入り変形してしまう可能性があるので注意しましょう。
他のタイプの湯たんぽより、保温性が低いことがデメリットといえます。
ゴム製湯たんぽ
ゴム製の湯たんぽは、柔らかいのが特徴です。主に欧州で使われています。
ゴム製で変形できるため、体のラインに合わせて、温めたい個所に重点的に当てることができるのが魅力の一つです。その特徴を活かすためにも、注ぎ入れるお湯の量は、満タンの70%ぐらいをおすすめします。
金属製や陶器製の湯たんぽより、保温性が低めです。
「氷まくら」の様な形で自立しないため、湯たんぽを手で持ったまま、側面にある注ぎ口から、お湯を入れる必要があります。やけどの心配があるので、注意が必要です。
プラスチック製湯たんぽ同様、カバーの種類が豊富で購入しやすい金額で販売されていることも、魅力の一つといえます。
電子レンジ対応湯たんぽ
使いたい時に、電子レンジで1、2分温めるだけで、すぐに暖をとれるのが、電子レンジ対応湯たんぽの最大の魅力です。お湯を沸かしたり、中身を入れ替えたりといった手間がなく、手軽に使うことができます。
電子レンジで温めるタイプの湯たんぽは、ジェル状の中身が入ったものが一般的です。そのジェル状の中身を温めることで、湯たんぽの役割を果たします。
かわいいデザインやサイズなど商品のバリエーションも豊富で、保温時間が長い商品もある一方、経年劣化や、加熱のし過ぎが原因で中身が爆発する恐れがあることがデメリットの一つです。
安全性を考えると、数年に1回、定期的に買い替えることをおすすめします。
蓄熱式湯たんぽ(充電タイプ)
充電タイプの湯たんぽは、本体の中のヒーターで保温材を蓄熱します。コンセントで充電し、充電が終わると蓄熱します。
過電流保護、過充電保護などの機能を持つ商品も多数あり、コンセントの抜き忘れ、電源の消し忘れなどの心配もありません。
充電時間は約20分。表面の温度が約60度になる商品が一般的です。他の湯たんぽに比べ、温度が低く、保温時間も短いですが、数時間は保温されているので、部分的にやさしく温めたいときなどにおすすめです。
USBタイプの小型の充電式湯たんぽもあり、職場や外出先など、場所を選ばず使うことができます。
シーン別・用途別の湯たんぽの選び方は?
これまで、湯たんぽを6種ご紹介してきました。ここでは、用途別の、おすすめのタイプをご紹介します。
自宅で湯たんぽ
自宅で使う湯たんぽを選ぶ際のポイントは、「最もリラックスできる湯たんぽはどれか?」ということです。
破損リスクや、重いというデメリットはありますが、保温性が高く、長時間に渡り、体にじんわりと温かさを伝える陶器製の湯たんぽは、寝る時や、リビングでのんびり過ごす時など、自宅時間を楽しむのにおすすめの湯たんぽです。
アロマと組み合わせて使うと、ほんのりとした温かさと香りに包まれ、高いリラックス効果を得ることができます。
ただ保管する際には、子供から手が届かないところに保管することをお忘れなく!
オフィスで湯たんぽ
オフィスで暖が必要になるのは、冬とは限りません。
冷房がついている夏のオフィスで長時間働いていると、手足の指先が冷たくなったり、肩や腰を動かしにくく感じたりした経験があると思います。
そうした時に手軽に使えるのが充電式の湯たんぽです。
自席のコンセントで20分足らず充電したらコードレスで使えるので、おなかや腰、指先などに当てたりして、目的の応じて使うことができます。
小さなサイズの商品も多くあり、クッションの様な見た目なので、オフィスにあっても違和感がありません。
1~2分加熱すればすぐに使えるという、電子レンジ対応の湯たんぽもラクチンなのですが、自席から離れずに湯たんぽを使えるという手軽さの面で、充電式の湯たんぽをおすすめです。
キャンプで湯たんぽ
特に秋から春にかけてのキャンプは、外気が低く、防寒をしても、指先、足先などから体を冷えさせてしまうため、なるべく長時間温かさが持続する湯たんぽが良いとは思います。一方で、重量や、壊れやすさなども考慮する必要があります。
頑丈さや使いやすさ、適度の温度を考えると、プラスティック製湯たんぽを選ぶのがベストです。金属製や陶磁器製より保温時間は短めですが、ブランケットや寝袋の中で使えば、少しですが、朝までぬくもりを残すこともできます。
万が一壊れてしまっても、すぐに買い替えられることもおすすめのポイントの一つです。
エコな湯たんぽ
湯たんぽとしての保温性や持続性、耐久性などを総合的に考えた場合、金属製の湯たんぽが、最もエコなアイテムでしょう。
熱伝導率が非常に高く、お湯を入れたらすぐに温かくなるため、冷え切った体をすぐに温めることができます。そしてその温かさを長時間持続させることができます。陶器製に比べて壊れにくく、長持ちするのもメリットの一つです。
また、不測の事態が発生し、電気やガスなどのパイプラインが止まってしまった場合でも、ポケットコンロなどで湯を沸かし、それを湯たんぽに注げば、唯一の暖房器具として暖をとることができますし、湯たんぽの残り湯も使うことができます。
シーン別おすすめの湯たんぽ3選
自宅で湯たんぽ
自宅で使う際におすすめの陶器製の湯たんぽです。サイズもお手頃で、じんわり体を温めるなど、陶器製ならではの良さを、余すところなく発揮します。5色展開で、好みの色のアイテムを選ぶことができます。
オフィスで湯たんぽ
20分の充電で最大8時間温かさを維持できます。小さめサイズで、オフィスでも違和感なく使用できます。カバーの種類が多いのも特徴です。安全機能や温度調節機能がついているので、安心して使うことができます。
エコな湯たんぽ
昔から馴染みのある、定番の国産金属製湯たんぽです。
直火やIHヒーターも使用できます。
医師がすすめる体にやさしい湯たんぽの使い方とは?
就寝時に湯たんぽを使う場合、寝る30分ぐらい前から、布団の中に、温かい湯たんぽを入れておき、布団に入る時に、湯たんぽのぬくもりを、体全体で感じられるようにしておくことが、安眠への第1歩です。
湯たんぽの効果的な使い方については、「青山・まだらめクリニック 自律神経免疫治療研究所」の班目健夫所長がホームページで詳しく紹介されています。
湯たんぽで加熱すべき部位は大腿部前面・腹部・臀部・上腕伸筋側です。それぞれに理由があります。 同じ湯たんぽを使うといっても、加熱する身体部位を変えるだけで効果が変わります。ただし、発汗しないように加熱する必要があります。
湯たんぽで体を温める場合、太ももの前面、腹部、お尻、二の腕を温めると、温まった血液が心臓まで戻り、冷えを抑えられるそうです。
参考
湯たんぽについて青山・まだらめクリニック
指先、足先など冷え切った部分に、直接湯たんぽを置きたいところですが、体全体を温め血行を良くした方が、体全体の「冷え」を抑られるとのことなので、湯たんぽに触れたい気持ちをグッと堪え、布団の中では、湯たんぽを腹部やお尻の近くに置き、直接触れない様注意しましょう。
そのためにも、寝る直前ではなく、あらかじめ布団に湯たんぽを入れておくことが重要かもしれませんね。
まとめ
先日、働くママの友人5人に湯たんぽについて質問したところ、その内の4人が「湯たんぽを持っていない」。残りの1名も「持ってはいるが、使っていない」という回答でした。
その理由は、いずれも「住居自体の断熱効果が高く、湯たんぽが必要ではない」というものでしたが、マンションか一軒家かなど、住宅環境により湯たんぽの使用状況が違うのかもしれません。
「リラックス効果を得たい」という声を中心に、5人とも湯たんぽの使用にとても前向きだったので、実際に湯たんぽを使ってみれば、その実力の高さに驚くかもしれませんね。
エコの側面のみならず、肌のうるおい維持や、冷え対策など、湯たんぽを使うメリットはたくさんあります。様々な種類の湯たんぽがありますが、自分の目的や用途に最適な湯たんぽに出会い、素敵な湯たんぽライフをエンジョイして頂ければと思います。
【参考資料】
青山・まだらめクリニック 自律神経免疫治療研究所・湯たんぽについて)
「湯たんぽの形態成立とその変化に関する考察 Ⅳ」(『共立女子大学家政学部紀要』 第56号 2010年 p.13-21)