外出先で手指の消毒が当たり前になった今、家庭内の消毒・除菌も大切になってきています。
しかし、具体的にどんな場所を、何を使って消毒すればよいのか、いまいちピンとこない方も多いのではないでしょうか?
衛生管理の厳しい病院での勤務経験がある調理師が、実際の手順も踏まえて紹介します。
満畑ペチカ(調理師)
日々の感染対策に、ぜひ参考にしてみてください。
目次
感染予防のために消毒しておきたい場所
家庭内で感染を予防するために消毒しておきたいポイントは、「多くの人が触る場所」と「外に持ち出したあと家の中へ持ち込むモノ」の2つです。
主な例を以下にピックアップしてみました。
- ドアノブ・取っ手
- スイッチ
- 手すり
- 洗面所の蛇口
- テーブル
- 椅子
- 固定電話
- パソコンのキーボード
- スマートフォン
- カバン
- エコバッグ
上記の部分やモノは、公共の空間でもウイルスの感染が広まりやすい場所。
そのため、家庭内でも家族や同居人の間でウイルスの感染が拡大しやすい場所なんです。
続いては、家庭でおこないやすいウイルス消毒方法を5つご紹介します。
家庭でできるウイルスの消毒方法とおすすめの使用場面
家庭でおこないやすい消毒方法は、下記の5つです。
- 熱水(または煮沸)
- アルコール
- 塩素系漂白剤
- 家庭用洗剤
- 次亜塩素酸水
それぞれに適した使用箇所が異なるので、その点も踏まえて詳しく紹介していきます。
「熱水」を使った消毒
80度以上の熱水を使い、熱でウイルスや細菌を消毒する方法です。
お湯だけで消毒をおこなえるので、特別な薬剤がなくても消毒できるというメリットがあります。
おすすめの使い方は、調理器具や食器・カトラリー類の消毒。
ただし、熱に弱い漆や木製品、耐熱性のないプラスチックやガラス製品のものなど、熱によって変質してしまう素材には使えません。
感染症・食中毒を防ぐ!キッチン周りの正しい消毒方法【食器・まな板・包丁など】
「アルコール」を使った消毒
濃度70%以上のエタノールが配合されたアルコールで、ウイルスの膜を壊して消毒する方法です。
アルコールスプレーやアルコール配合のウェットシートを使えば、いつでも手軽に消毒できます。
また、金属やガラスなど、比較的どのような場所にも使用可能。
ただし、「アクリル樹脂」はアルコールによって破損する可能性があるため、使用できる素材かどうか使う前に確認しておきましょう。
アルコールが有効なウイルスは、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルス。
ノロウイルスやロタウイルスはアルコールに抵抗性があるため、あまり効果が期待できません。
【参考資料】
※東御市公式ホームページ「感染予防のためのふき取り消毒の方法(消毒用アルコール編)(PDF)」(検索日:2021/10/18)

「塩素系漂白剤」を使った消毒
塩素系漂白剤の主成分である「次亜塩素酸ナトリウム」の酸化作用を利用して、ウイルスを無毒化する方法です。
塩素系漂白剤はよくキッチン用の漂白剤として売られています。ご家庭でいつも使っているキッチン用漂白剤があれば、住居やモノの消毒に流用できます。
ドアノブやスイッチ、テーブル、食器など、手指の消毒以外にはおおむね使用可能。
次亜塩素酸ナトリウムはアルカリ性ですが強い酸化作用を持っているため、材質によっては対象物を腐食させることがあります。特に金属類はさびやすいので注意してください。
「家庭用洗剤」を使った消毒
一般的な家庭用洗剤に含まれている「界面活性剤」を活用し、ウイルスの膜を壊して消毒する方法です。
厚生労働省によると、2021年10月時点では、下記9種類の界面活性剤が新型コロナウイルスに有効だと発表されています。
- 直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(0.1%以上)
- アルキルグリコシド(0.1%以上)
- アルキルアミンオキシド(0.05%以上)
- 塩化ベンザルコニウム(0.05%以上)
- 塩化ベンゼトニウム(0.05%以上)
- 塩化ジアルキルジメチルアンモニウム(0.01%以上)
- ポリオキシエチレンアルキルエーテル(0.2%以上)
- 純石けん分(脂肪酸カリウム)(0.24%以上)
- 純石けん分(脂肪酸ナトリウム)(0.22%以上)
【参考資料】
※厚生労働省 公式サイト「ポスター「ご家庭にある洗剤を使って身近な物の消毒をしましょう」(PDF)」(検索日:2021/10/18)
おすすめの使用場所はテーブルやスイッチ、ドアノブ、椅子などの住居の共用部分。
ただし台所用洗剤を使った場合、プラスチック部分を拭いて放置すると傷む可能性があるので、使う際には注意が必要です。
次亜塩素酸水
「次亜塩素酸」が溶け込んだ酸性の溶液を使い、ウイルスを破壊して消毒する方法です。
使用できる場所は主にテーブルやドアノブなど。
次亜塩素酸水は紫外線や熱に弱いため、日光の当たる場所を避け、高温にならない場所で保管する必要があります。
また保存状態によっては分解が進み、塩素が抜けて塩素濃度が下がってしまいます。そうなると除菌効果もなくなってしまうため、なるべく早めに使い切るようにしましょう。
「次亜塩素酸水」は酸性、「次亜塩素酸ナトリウム」はアルカリ性です。
「次亜塩素酸ナトリウム」の代表例はハイターなどの塩素系漂白剤。原液で長期保存できます。
除菌や消毒の具体的な手順
続いては、前述した5つの消毒方法の具体的な使用手順を解説していきます。
誤った使い方をしてしまうと十分な消毒効果を得られないので、正しく使い方を理解しておきましょう。
熱水(熱湯)を使った消毒手順
厚生労働省では、ノロウイルスなどを消毒したい場合は、85度以上で1分以上加熱することを推奨しています。
アルコールを使った消毒方法
アルコールを使った消毒方法には、主に二つの方法があります。
方法(1) 直接吹きかける
消毒したい場所にアルコールスプレーをまんべんなく吹きかけて、清潔で乾燥した台ふきんやキッチンペーパーで拭き取り、そのまま乾燥させます。
方法(2)ふきんで拭き取る
乾いた清潔な台ふきんやキッチンペーパーにアルコールを吹きかけて湿らせ、消毒したい場所を拭き取り、そのまま乾燥させます。
(1)、(2)どちらの方法でも水拭きはおこなわず、自然乾燥させましょう。
塩素系漂白剤を使った消毒手順
※代表的な塩素系漂白剤の例と、水1リットルに対しての使用量の目安は、厚生労働省が発表した啓発資料(PDF)などでご確認ください。
家庭用洗剤を使った消毒手順
家にある家庭用洗剤として身近な、台所用洗剤と家具用洗剤の2つを使った消毒手順について説明します。
台所用洗剤の場合
家具用洗剤の場合
家具用洗剤の場合は、それぞれ商品によっても使い方が異なる場合があります。
商品のパッケージなどに記載してある使用方法や注意事項どおりに使用してください。
次亜塩素酸水を使った消毒手順
厚生労働省「次亜塩素酸水を使ってモノの消毒をする場合の注意事項(PDF)」で推奨されている手順をご紹介します。
どのくらいの頻度・タイミングで消毒すべき?
国などで推奨されている消毒の頻度は、1日1回以上です。
厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部の感染管理対策マニュアル(PDF)でも、1日1回以上はドアノブやトイレを消毒するよう記されています。
おすすめのタイミングは、日常的な掃除の最中。
スプレーや除菌シートなど用意しておいて、掃除のついでにサッと消毒する習慣をつけるのがおすすめです。
いつやるかよりも、定期的に欠かさずおこなえるよう、できるだけ習慣化しましょう。
いつもの掃除にプラス!手軽に感染を予防しよう
今や外出先での消毒のみならず、家庭でおこなう消毒・除菌が感染予防のために重要な役割を担っています。
特に消毒しておきたいのはドアノブや手すり、スイッチなどの「複数人が触れる部分」と、スマートフォンやカバン、エコバッグなどの「外に持ち出したあと家の中に持ち込むもの」です。
アルコールや塩素系漂白剤など紹介した5つの方法のなかから取り入れやすいモノを選び、無理せず習慣化して、1日1回以上消毒できるようにしましょう。
家庭でもできる感染対策を、今日からおこなってみませんか?
【参考資料】
厚生労働省 公式サイト「新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について」(検索日:2021/10/18)

